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抗凝固薬は心房細動患者の認知症リスクを低下させる可能性:EHJより


疑問:抗凝固薬は認知症リスクを減らすか?

方法:
・スウェーデンの観察研究
・退院時診断が心房細動,以前からの認知症診断なしの患者対象
・プロペンシティースコアマッチ,TT解析

結果:
1)444,106例

2)ワルファリン42.9%,DOAC2.9%,抗凝固薬なし54.3%

3)認知症リスク:抗凝固薬群1.14vs. 非抗凝固薬群1.79。ハザード比0.71 ,相対危険減少29%

4)ワルファリンとDOACで有意差なし。
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結論:認知症リスクは,抗凝固療法非施行例では,施行例より高い。

### なんと,抗凝固薬が認知症リスクを低下させる可能性があるそうです!
JAHAの総説を読むと,抗凝固薬と認知症との関係は一定しないようでしたが,この論文はnも多く,スコアマッチの手続きも踏んでいます。

メカ二ズムが不明であり,ま他絶対リスクは0.65%しか減っていないので,臨床上のインパクトにはまだ欠けるように思います。
前向き試験が志納中ですので,期待したいです。

$$$ 運慶展。中学の頃,仏像が好きで好きで仕方がない変わった青年だったのですが,亡父が京都奈良に突然連れて行ってくれて,運慶の無著世親像を見ていたく感動したのを思い出しました。非常なる計算と技術を背景に持ちながら,それが全面に出ることなく,またそれがために深い精神性をたたえることになる,それこそがほんまもんの美というものなのかと思わされました。
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by dobashinaika | 2017-11-06 23:28 | 抗凝固療法:全般 | Comments(1)

新しいビタミンK阻害薬テカルファリンはワルファリン,NOACを超えるか:T/H誌

https://doi.org/10.1160/TH16-10-0815
テカルファリンに関する総説です。

・ワルファリンは60年来使用され効果は高いが治療域の狭い薬である。

・ワルファリンはR-L-光学異性体の混合したラセミ体で、7つのチトクロームP-450アイソザイムにより代謝される。
・このため、多くの食品、薬剤に影響を受ける。
・遺伝子多型(特にCYP2C9)、年齢、併存疾患、腎機能が効果を減弱したり、量の調節を促したりする。特に導入初期は要注意。
・INRの細かな管理の煩雑さが、新規抗凝固薬の開発につながった。

・VKAと違い、DOACは一つの標的のみ(IIaまたはXa)なので、モニタリングなしに一定量処方で良いという点がより使いやすい。
・にも関わらず、緊急手術、急性腎不全時などでは薬物濃度や抗凝固効果の測定は必要となる。

・NOACはNVAFの脳卒中予防においてワルファリンと同等である一方、アビキサバン、ダビガトランは大出血をあきらかにワルファリンよりも減らした。
・アピキサバンに比べ、リバーロキサバンは高出血リスクであった。
・幾つかのNOACでは、消化管出血が多くなったが、半減期が短いため服用中止によりコントロールできる。
・ダビガトランは、人工弁患者ではワルファリンよる効果は劣り出血は増える。

・一般的に、腎機能低下例では減量し、CrCl<15(ダビガトランは<30)では、NOACは禁忌である。

・CKDはそれ自体が抗凝固的な環境と言える。一方ではVTEや心房細動を高頻度に合併する。
・eGFR<60では脳卒中、VTEのリスクが増大する。
・抗凝固薬はCKDでも効果的であり、重症CKDにはVKA使用が勧められるが、安全性に関しては熟慮が必要である。
・他にも塞栓出血リスクを増やす合併症はあり、併用薬、尿毒症はワルファリンの代謝に影響するので、腎機能に応じた用量調節が必要となる。
・これらを考えると、上記にセッティングにおいて、ワルファリンの代替薬が強く求められる。

・テカルファリン(ATI-5923 )はワルファリンと同様の機序と効果時間を持った構造的なアナログである。
・VKOR阻害薬と同様、テカルファリンはビタミンK依存性凝固因子(II,VII,IX,X)をワルファリン同様に阻害し、モニタリングはINRである。
・ワルファリンがCYP450系で代謝されるのとは違い、テカルファリンはヒトカルボキシルエステラーゼ2(hCE-2)により加水分解される。
・単一の不活性化カルボキシル酸代謝物(ATI-5900)を産生し、腎で排泄される。
・hCE-2は腎不全では阻害されず、慢性腎不全はテカルファリンのクリアランスに影響しないと思われるので、特殊な環境下でも安定した抗凝固作用が得られると思われる。
CYP450系で代謝される薬剤との交互作用も排除される

・さらに、テカルファリンはCYP2C9の遺伝子多型に左右されない
・初期用量を減らすことで、出血リスクを減らし合併症を予防できるかもしれない
・CYP2C9ジェノタイプ間での用量調節には差がないけれども、VKORC1ジェノタイプによっては変化する。
・テカルファリンの血中濃度は、VKORC1ジェノタイプと相関する。(AAジェノタイプよりGGの方が2倍の血中濃度)
・INRとテカルファリンの血中濃度とは相関関係がないことは重要。
・ゆえに、テカルファリンはVKORC1が多様性を持つ状況ではワルファリンを凌駕することはなく、ジェノタイプガイドによる初期投与量が有効となる。

・ワルファリンを上回るテカルファリンの効果(を検討した試験)としては以下がある。
・EmbraceAC試験では,テカルファリンはワルファリンを上回るTTRRが得られなかった。
・緊急治療が必要な有害事象は,ワルファリンで88%,テカルファリンで90%
・どちらも同様のTTRを示し,アウトカムはTTRに相関した。
・本試験では,CYP2C9-バリアントの対立遺伝子を持つひとや,CYP2C9が関与する薬剤服用者はテカルファリンのベネフィットがあるかもしれない,と結論している。

・健常人を対象としたテカルファリンの薬物動態に関する試験がある。
・40mgまでの単一用量までは,血中濃度と半減期は用量に相関する。
・INR1.7-2.0を保つ用量が10〜20mg。
INRはテカルファリン中止1〜3日で低下する。
・CKDや人工弁患者での複数用量の試験が必要である。
・不活性化体(ATI-5900)は,腎で排泄され健常者ではもとの薬剤の10%の濃度を示し,CKD患者では2倍の血中濃度を示す。
・より詳しいプロフィールや代謝物の毒性についての解析が必要

・さらに,テカルファリンは少なくともtransfected cellではCYP2C9代謝を阻害することが知られており,CYP450への抑制効果を持つかどうかが問題となる。
潜在的な薬剤相互作用について,テカルファリンも例外ではないことは忘れるべきでない。

・こうした問題への追加試験が検討されれば,テカルファリンは旧き良きワルファリンで満足に治療できなかった患者に,安定した抗凝固作用を達成させる興味深い代替薬となるかもしれない。
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### クドカンドラマを見ながら論文読んでいたら,知らないうちに全訳してしまっていました(笑)。まとめると

テカルファリンの特徴は,構造,機序,作用時間などはワルファリンと同様で,モニタリングはINR。hCE-2加水分解され腎機能に影響されない。薬物相互作用もなさそう。中止1〜3日でINRが低下する。

というところだそうです。腎不全に使えそうなところが最大のポイントでしょうか。が,もう一つの関心事はもちろんコストですね。
まだとにかくフェーズ I?のようで臨床試験はまだ無し。結論を出すのは早計過ぎます。

もし上梓されたら第2のNOAC,N2OACとでもよばれるのでしょうか?

$$$ これはうっすらじゃじゃ麺味でした。
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by dobashinaika | 2017-10-24 23:11 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

高齢者の抗血栓薬による血尿関連合併症は多い。


疑問:抗血栓薬投与による血尿関連合併症の頻度はどのくらいか?

方法:
・一般住民ベースの後ろむきコホート、カナダ、オンタリオ州
・66歳以上、抗凝固薬、抗血小板薬服薬中の患者
・アウトカム:救急外来受診、入院、泌尿器科的処置を必要とした血尿患者

結果;
1)808897人、平均年齢72.1歳、女性53%

2)平均追跡期間7.3年

3)血尿関連合併症
抗血栓薬あり123.95/1000人年 vs.抗血栓薬無し80.17(p<0.001)
抗凝固薬+抗血小板薬:191.61
抗凝固薬のみ:140.92
抗血小板薬のみ;110.72

論:高齢者においては、抗血栓薬による血尿関連合併症が多い。

### すごい規模の検討ですね。カナダ、オンタリオ州の一般住民250万人のデータベースのうち、抗血栓薬を飲んでいる人80万人を平均7年追跡という恐ろし恐ろしいほどの規模のスタディです。こんなことされたら何も反論できないという気もするし、もう日本のコホート研究どうなってんの?と言いたくもなってきます。

確認情報としては、基礎疾患は狭心症15%、心筋梗塞3.9%、TIA3.9%、末梢血管疾患3,4%、心房細動3.3%。
抗血栓薬は、80万人中アスピリン31500例、他の抗血小板薬27500例、アピキサバン15000例、ダビガトラン43500例、リバーロキサバン88000例、ワルファリン32万例でした。
血尿関連合併症は、1000人年あたり、アスピリン94.3、他の抗血小板薬130.03、アピキサバン164.09、ダビガトラン144.24、リバーロキサバン188.65、ワルファリン138.67でした。
また、抗血栓薬服用者は非服用者に比べ、膀胱癌と診断される確率が1.85倍、前立腺肥大のある人はない人よりも血尿合併症が多いという結果も出ています。

抗血栓薬服用者は正直、血尿かなり多いです。いわゆる顕微的血尿だけなら相当数に上ります。その割に血尿に関するしっかりしたエビデンスはなかったように思いますので、非常に貴重な研究です。
今回平均72歳という高齢者で、処置が必要な血尿だけでも年間10人に1人強、抗凝固薬抗血小板薬併用に至っては5人に1人が何らかの処置まで必要な血尿があったというのは、一見やや多い気がしましたが、よく考えるとそのくらいはあるようにも思います。
肉眼的血尿が出ても大抵、経過観察で大丈夫ですが、中には悪性腫瘍が見つかることがあり、何より真っ赤な液体が尿から出るとそれ以後のアドヒアランスや患者さんの薬に対する信頼度が大きく揺らぎます。

さらに血尿関連合併症が、ワルファリンよりNOACに多いのも気になります。例えば66−69歳だけで見ても、補正後のイベント率はワルファリン1.19に対し、ダビガトラン1.04、リバーロキサバン1.46、アピキサバン1.15で、NOAC間でも差があるように見えます。やはりNOACは脳には優しいが、その他はそうでもない、かもしれません。

$$$今日のニャンコ
2匹います。
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by dobashinaika | 2017-10-16 18:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

NOACとの併用で特に注意すべき薬剤は?JAMA誌


疑問;併用薬によるNOACの出血リスクは?

方法
・コホート研究
・91330例,心房細動でダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン使用中の患者
・台湾の保険データベース
・NOACの代謝に栄養ある薬の併用につき調査
・大出血の定義:出血の初期診断による入院
・2012−2016年

結果:
1)大出血;4770例

2)以下の薬剤は併用による出血増加が明らか(薬剤ありvsなし)
アミオダロン(52vs38),フルコナゾール(242vs103),リファンピシン(103vs66),フェニトイン(108vs56)

3)以下の薬剤は併用による出血が減少:
アトルバスタチン,ジゴキシン,エリスロマイシン,クラリスロマイシン

4)以下の薬剤は大出血リスクとは無関係
ベラパミル,ジルチアゼム,ドロネダロン,サイクロスポリン,ケトコナゾール,イトラコナゾール,バリコナゾール

結論:NOAC使用中の患者では,アミオダロン,フルコナゾール,リファンピシン,フェニトイン併用は大出血リスクを明らかに増加させる。

### 有益な情報です。NOACはP糖蛋白とCYP3A4の代謝を受けるため,それらを阻害する薬品の併用は,NOACの作用を増強させ出血が増えることが知られており,事実添付文書等では,減量または禁忌となっているものが多いです。

ただしそれらが本当に臨床上問題となる出血に関与するのか,そのRWDはこれまで大きなものはなかったと思われます。各薬剤の添付文書を比較すると,減量や禁忌薬剤も薬によりまちまちで,困るわけですが,少なくとも上記4薬剤華かなり慎重に考えたいと思います。
特にアミオダロンは,特に専門医では併用する患者さんも多いと思われます。

$$$ 仙台でルオー展(9日まで)。宗教を超えた温かみ,深みに包まれました。
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by dobashinaika | 2017-10-13 21:20 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

「もう怖くない! 心房細動の抗凝固療法」Amazonで予約開始いたしました。

すでに宣伝したところで恐縮ですが、拙著

もう怖くない! 心房細動の抗凝固療法プライマリ・ケア医のためのシンプルアプローチ」

本日からAmazonで予約開始となりました。

この数年間でブログに書き溜めたものに加筆修正を加え、プライマリ・ケア外来、専門医、研修医、薬剤師、看護師、その他の医療職、介護職全ての方の参考になるように書いたつもりです。

序文を転載いたしますので、お読みいただければ幸いです。
折しも、NOACのリアルワールドデータも大量に出揃い、抗凝固療法については世界的に見ても安定期に入ってきているという印象があります。全体的にはNOAC中心の潮流なのかと思われますが、そんな中で今更ですが。ワルファリンにも熱い目を向け、少し大きな視点からこの分野を眺めたつもりです。
個人的には心房細動抗凝固療法に関するタスクは一応、これを持ってひと段落と考えております。
(ブログはまだ継続します^^)

一人でも多くの方の、日常診療上のお役に立てれば幸いに存じます。

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### はじめに
─ エビデンス,患者世界と現実世界とのギャップを埋めるには?─

2010年の後半からブログ「心房細動な日々」を本格的に書き始めました.心房細動に関する論文をとにかく片っ端から読んで,アブストラクトを日本語に訳し,コメントを入れ,毎日のように更新しました.
 初めは「若いころから慣れ親しんできた心房細動について,読んだ論文をまとめよう」くらいの軽い気持ちでした.最初は,おとなしく日本語訳のみを書き残していましたが,始めて数ヶ月くらいから心房細動について語りたくて仕方がなくなり,いつのまにか語ることが楽しくなっていることに気がつきました.気鋭の哲学者,千葉雅也氏が「勉強の哲学」(文藝春秋)で指摘した「享楽的こだわり」の状態です.
 ところが,さらに論文を読み進め,批判的吟味を加える作業を毎日行っていると,ひとつひとつのエビデンスに対してどんどん懐疑的になり,ひいてはエビデンスと現実世界とのギャップを痛切に感じ続ける日々がやってきました.「この論文のこういう問題点が目の前の患者さんには適応できない」,たくさん論文を読んで心房細動オタクになるほど,そうした論文の限界だけが目について患者さんに適応できず,現実世界から遠ざかっていく,そのギャップを埋めるべくまた論文を読んでいく,という,たちの悪い堂々巡りでした.この悪循環を断ち切るには,千葉雅也氏も言うように,あるところで自分なりに主観的に,エビデンスと現実世界の比較を「中断」する作業が必要となります.中断して自分なりに「まぁこんなところだろう」と決めるのです.
 さて,この中断作業には患者さんの病態や心房細動治療への思いや,その人の文脈を理解することが不可欠と思われますが,患者さんの世界を理解することにも上記の「中断」が必要であることに気がつきます.患者さんを含め他者の内面を完全に理解することは不可能です.「この人はこう思っているのだろう」とある時点で理解の追求を中断しないことには,処方箋の一枚も書けなくなります.
 ブログを開始して約7年,ここに来てようやく,日々の診療とはこのように論文世界や患者世界をとことん追求することではなくて,自分なりの思いに基づいてその追求を中断し,現実的な決断をつける営みであるということに気がついたのです.「世の中も患者さんも,決して100%わかることはできない」ということがわかったわけです.そしてそうした中断の中で,現実的な着地点を見つけ出すことにこそ,医療の楽しみがあるということも…….
 ただ,やはりこうした着地点の発見にはある程度の指標が必要かもしれません.「抗凝固薬のここが知りたい.でも論文にもガイドラインにも書いていない」,診察室でそういう思いを抱く医師は多いのではないでしょうか.抗凝固薬には,まだまだどう対処してよいかわからない問題がたくさんあります.
本書は,あくまで診察室で日々悩む医師の視点から,多くのプライマリ・ケア医が抱く抗凝固療法に関する日常的な細やかな疑問に対して,できるだけ現実的に対応することに主眼を置きました.また専門医の先生が読んでも,読み応えがあるように,最新のエビデンスやガイドラインも網羅したつもりです.そして,今まで述べたようなエビデンスと現実世界,ひいては患者さんと医師のギャップを埋めるために何が必要かという視点を貫くように心がけました.
 そのため,これまで出版されている抗凝固薬に関する書籍に比べると,生物社会心理的なアプローチや,専門医の先生からはお叱りを受けるような見解が記載されているかもしれません.しかし一方で,ワルファリンの細かな調整法から在宅認知症患者さんの抗凝固療法に至るまで,「かゆいところに手が届く」ように項目を設定しています.
 上記のようなアプローチには,家庭医療学のコンセプトが欠かせませんでした.医療福祉生協連家庭医療学開発センターの藤沼康樹先生には,各種セミナーやFacebook等を通じて多くのインスピレーションをいただきました.また文光堂の小柳健さんには,本書の企画から出版に至るまで,多くのアドバイスを頂きました.この場をお借りして厚く御礼申し上げます.
 ブログ「心房細動の日々」はこのような変遷を続けながら,これからも続けていくつもりです.本書が7年にわたるブログの現時点での集大成として,先生方の「中断」と「着地点の発見」の一助になれば幸いです.

2017年7月
小田倉弘典








by dobashinaika | 2017-08-23 18:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

「愛の不等式」から考える「抗凝固薬はなぜ出されないのか?」

Secondary Versus Primary Stroke Prevention in Atrial Fibrillation:Insights From the Darlington Atrial Fibrillation Registry

目的:プライマリ・ケア外来で,ガイドライン通りの治療を行った心房細動患者において,一次予防と二次予防でアウトカムに差はあるか

方法:Darlingtonコホート(英国,11GP施設,105,000人)

結果:
1)心房細動患者:2259人,2.15%,うち18.9%は二次予防

2)二次予防患者;ガイドライン準拠=56.3%,過剰治療=18.9%,未治療=24.8%

3)一次予防患者:ガイドライン準拠=49.5.%,過剰治療=11.7%,未治療=38.8%

4)年間脳卒中発症率:二次予防8.6%,一次予防1.6%(P<0.001)

5)全死亡:二次予防9.8%,一次予防9.4%(P=0.79)

6)抗凝固薬無治療(ガイドライン非準拠)の脳卒中オッズ比(一次予防):2.95,95%CI1.26-6.90

7)ガイドライン非準拠の脳卒中再発オッズ比(二次予防): 2.80; 95%CI1.25–6.27; P=0.012(過剰治療対照)

8)ガイドライン非準拠の死亡オッズ比(二次予防): 2.75; 95%CI1.33–5.69; P=0.006(過小治療対照)

結論:約半数の人にしかガイドライン通りの抗凝固療法が施行されていない。ガイドライン準拠の抗凝固療法は,一次予防での脳卒中リスクおよび二次予防での脳卒中および死亡リスクを減少される

### 英国のプライマリケアセッティングでは,一次予防で50%,二次予防でさえ56%しかガイドライン通りの抗凝固薬処方が行われていないとのことです。日本の現状も同じようなものと思われます。前回のブログで考えた心房細動の階層構造でのべた「壁」について,より現実的に考えてみます。

あらゆる薬剤の処方,医療行為をするしないの意思決定は,
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という認識が患者医療者間で共有されたときに達成されるものと考えます(私はこれを「愛の不等式」と読んでいます。なんとなく(笑))。

抗凝固薬では,おおむね,A=抗凝固薬の必要性の認識,B=出血への不安,C=ワルファリンの煩雑さ/NOACのコストになろうかと思われます。ここでもっと細かく言うと,(リスク)=(インパクト)x(確率)ですので,A=(脳梗塞に対するインパクト)x(脳梗塞の予防確率),B=(出血のインパクト)x(出血の確率)で表されます。

さて,現段階で抗凝固薬を医療者側が「出さない」状況には,以下の3パターンくらいがあるように思われます。
1)発作性心房細動なので出さない
2)高齢者で出血リスクが懸念されるので出さない
3)ワルファリンは煩雑だが,NOACも高価で意外と面倒くさいので出さない 

1)は最近の英国プライマリケア医の研究でも示されています。

2)は以前のGARFIELD研究や最近のJAMAの研究からも伺えます。

また伏見AFでもここ5年で処方が増えたのはCHADS2スコアの0,1点例が多かったとのことですので,高リスク高齢者には依然として出されていない実態が見て取れます,

3)も多くの臨床医が持つ実感と思われます。ワルファリンはいろいろと面倒くさい。その欠点が克服されていると思ったNOACだったのに,すごく高いし,モニタリングできないし,中和も難しいし,腎機能や併用薬剤も結構考える必要があるし。。。。というところかと思います。

これまでワルファリンに馴染んでこなかった医師ほど,1),2)の思いが強いと思われます。3)はどの層にも共通でしょうか。
(ときにNOACをすごく出す開業医に遭遇してびっくりしたりします。ただ私も含めてまだ主戦力はワルファリンにしている医師も根強くいると思われます)

1)は上記不等式Aの低下,2)はBの増大,3)はCの増大に当りますが,現実にはこのバランスの乱れはそれこそ患者ー医師ごとに様々なバリエーションをとりうるでしょう。

「抗凝固薬が「必要」なのはわかった。でも依然として出血への不安(特に高齢者)は払拭されないし,NOACは何よりコストが高くて思ったより面倒」,そこで,「超高齢者まではいかない中高年層で,ややリスクの低めな人にまずNOACを提案してみて,コストが問題の場合は,慣れていればワルファリン,そうでなければ出さないか紹介」,このあたりが今の,特に非循環器専門医の感触かもしれません。全くの独断ですが。

$$$ ことしの初茄子。早速焼いて朝食に。
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by dobashinaika | 2017-07-12 23:56 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

ここへ来ていろいろと手詰まり感のある抗凝固療法ー患者階層構造モデルからその解消法を考える。

<心房細動抗凝固療法の現状>
最近あまり心房細動関連のブログが更新できていません。
いくつか理由がありますが,「心房細動の抗凝固療法についての現在のパラダイムがそろそろ行き詰まりつつある」というのが最大の理由だということに最近気が付きました。

NOACが市場に出てから6年。この6年で抗凝固療法の世界は変わったでしょうか?最近のいくつかのコホート研究によると,米国のPINNACLEレジストリやプライマリ・ケアネットワークのデータベース,そして日本の伏見AFレジストリ,いずれも申し合わせたように,抗凝固薬の処方率はNOAC前50%程度が5-6年で60%程度に上昇したに過ぎません。

では肝腎の脳卒中/全身性塞栓症や大出血と言ったアウトカムはどうでしょう。おびただしい数のいわゆるリアルワールドデータが報告されていますが,以前まとめましたようにhttp://dobashin.exblog.jp/23662074/
「NOACはワルファリンに比べて。脳卒中/全身性塞栓症,死亡に関しては同等かやや少なめ,大出血は同等か少ない,頭蓋内出血は明らかに少ないが消化管出血は同等が多い」
というところが,ざっくりとした現状かと思います。ただし,伏見AFレジストリでは脳卒中/全身性塞栓症,大出血ともNOACとワルファリンとで明らかな違いはなかったという衝撃的なデータも発表されていますhttp://dobashin.exblog.jp/23826455/

リアルワールドデータ自体の選択バイアスなどを考慮する必要はありますが,誤解を恐れずにいれば,現時点では,
「NOAC発売後6年たった今でも,ガイドライン通りに処方されていない症例が40%もおり,一方でアウトカムも劇的に改善されたわけではない
と言えます。
NOAC発売前のあの高揚感(誰が?はおいておいて)を考えると,森課長ではありませんがここへ来ていろいろと手詰まりになってきた感があります(森課長についてはググってください。私の大好きなキャラです)。

<心房細動患者の階層構造>
ではこの手詰まり感をどう克服していけばよいのか。ここでは,以前雑誌「心臓」に拙文を書いた際紹介しました心房細動患者の階層構造モデルで考えてみます。http://dobashin.exblog.jp/20932952/
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理想的な患者像をRCTでの登録症例(レベル0)と規定しますと,リアルワールドではRCTの組み入れ基準から逸脱した高齢者,高リスク者,服薬アドヒアランス不良者など多彩な症例に抗凝固療法が施行されています。これら実際に臨床の現場で服用している患者のうち,特にアウトカムに大きな影響を及ぼすと考えられる服薬アドヒアランス良好患者をでレベル1,不良患者をレベル2とします。レベル0と1の間には「選択バイアス」という壁があります。同様にレベル1と2の間の壁は「服薬アドヒアランス」です。

さらに,先に述べましたように,適応があるにも関わらずガイドライン通りに処方されていない,かつ医療機関には受診している患者層をレベル3とします。レベル2と3の間の壁は,非常に議論の余地がありますが,私は患者,医療者双方の「出血に対する不安」と「必要性に対する認識不足」が主な因子であると考えています(これについては以前の服薬アドヒアランスに関するブログにも書きましたので詳細はそちらをご覧くださいhttp://dobashin.exblog.jp/21908119/)。

そして最後のレベル4は,未だに診断されていない心房細動=Subclinical AFです。レベル3と4の間の壁は無症候性であることや動悸を感じたり健診でチェックされても受診しないなどの受診の遅れがその背景にあると思われます。

<階層間の壁解消対策>
上記5つの患者階層は,心房細動に限らず多くの疾患で当てはまる構造と思われます。私たちは常々,主にレベル1(あるいは2)の中だけで抗凝固薬は何が良いのか,手術やPCIのときはどうするのか,出血したらどうするのかといった抗凝固薬にまつわる諸問題を議論しています。しかしながらこのレベル1内だけの論議では,手詰まり感から逃れられません。

レベル1〜2間の服薬アドヒアランス,さらにレベル2−3間の抗凝固薬の「出血に対する不安」と「必要性に対する認識不足」という各レベル間の壁に介入した研究や再検討こそが手詰まり感解消,およびさらなるアウトカム改善への高みへと登る鍵のように思われます。

さらにレベル1,2を規定しているガイドラインについても再評価,再検討が迫られます。高齢者および低リスク者の,特に日本人での適応が今のCHADS2スコアベースで良いのか。大きな問題です。

まとめますと,抗凝固薬の「何」を選ぶべきかから「誰に」,「どのように」処方するかへのパラダイムシフトが求められる時期に来ていると言えます。

<「である」「すべき」から「する」への跳躍を考える>
このことを別の言い方で考えると,レベル0のRCTやエビデンスは,抗凝固療法の世界を説明するもの,いわゆる「である」を理解する装置といえます。一方ガイドライン(遵守しているとすれば上記レベル1)は「〜すべき」という枠組みで語られる規範です。「である」から「すべき」は自動的に導かれるわけではなく,ガイドライン作成者の「価値判断」が必ず入り込みます。

さらに「である」「すべき」を前提に,患者ー医師間の価値観のすり合わせによる「する」という意思決定に至ることになります。こうした「である」「すべき」「する」の視点から上記の患者階層間の壁解消策を考えてみると以下のようになります。

である→すべきの間の壁:ガイドライン作成者の「価値観」,すなわち現状のガイドラインが妥当かを再検証する。

すべき→するの間の壁:抗凝固薬の服薬アドヒアランス,必要性,出血への不安につき対策を再検討する。

丸山真男ではありませんが「である」ことから「すべき」を経て「する」に至る壁を埋める作業が,抗凝固療法の今後に求められる課題だと思います。

なお,アドヒアランス改善や患者ー医師の認知バイアス解消に関する具体的な対策についてはこれまでいろいろとブログにも書いてきましたので,あちこち参照していただければ幸いです。

$$$ いよいよ取り立ての野菜をその場で食すという人生最大の幸せを味わえる時期になりました^^。


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by dobashinaika | 2017-07-03 00:40 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

European Heart Journalの「不整脈この1年」:NOACリアルワールドデータを評価


あけましておめでとうございます。
本年も「心房細動な日々」をよろしくお願い申し上げます。

新年最初はEuropean Heart Journal恒例の「循環器学この1年」です。
このうち「不整脈&植込み型デバイス」の章の中の「脳卒中予防」を紹介します。
要点箇条書きで行きます。

<肥満パラドックス>
・ARISTOTOLEサブ解析

・17913例対象,1.8年追跡

・BMI高値ほど全死亡は少ない;HR = 0.63; 95% CI = 0.54–0.74

・女性では脳卒中リスクにもこのことが当てはまるが男性では適合しない

・脂肪量と出血は無関係

・説明としては,薬物治療や生活スタイルの変容,より良い予備代謝等が挙げられている

The ‘obesity paradox’ in atrial fibrillation: observations from the ARISTOTLE (Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation) trial. Eur Heart J 2016;37:2869–2878.

<エドキサバンの追加情報>
・ワルファリンに対する全死亡低下は,エドキサバン30mg(HR = 0.87; 95% CI = 0.79–0.96, P = 0.006) のほうが60mg (HR = 0.92; 95% CI = 0.83–1.01, P = 0.08)よりも大きい

・30mgでは虚血性脳梗塞が増加し(HR = 1.41; 95% CI = 1.19–1.67, P < 0.001),高用量60mgでは不変にも関わらず全死亡は減っている

・大出血が少ないことがその原因

・抗凝固薬への関心が,血栓塞栓症の予防から心血管合併症全般に向かっていることを示唆する

・他のサブ解析ではエドキサバンが高齢,高転倒リスクでとくに効果と安全性が高いことが示されている

Mortality in Patients with Atrial Fibrillation Randomized to Edoxaban or Warfarin: Insights from the ENGAGE AF-TIMI 48 Trial. Am J Med 2016;129:850–857 e2.
Rivaroxaban vs. vitamin K antagonists for cardioversion in atrial fibrillation. Eur Heart J 2014;35:3346–3355.

<除細動周術期でのNOACの効果と安全性>
・エドキサバン60mgは心房細動除細動周術期でも,ワルファリンと同様の効果と安全性を示した(Ensure AF)。

・除細動後30日において,新たな脳卒中,心筋梗塞,末梢塞栓,心血管死はエドキサバン群(1095例)0.5%に対し,ワルファリン群は1.0%(OR 0.46; 95% CI = 0.12–1.43)

・リバーロキサバンで同様報告あり

ENSURE-AF investigators. Edoxaban versus enoxaparin-warfarin in patients undergoing cardioversion of atrial fibrillation (ENSURE-AF): a randomised, open-label, phase 3b trial. Lancet 2016;388:1995–2003.

<多くのNOACに関するリアルワールドデータ>
・リバーロキサバンではワルファリンに比べ大出血,脳卒中ともに低率。
・REVISIT-US研究ではリバーロキサバン(39%),アピキサバン(37%)とも虚血性脳卒中,頭蓋内出血を減らした。
Real-world evidence of stroke prevention in patients with nonvalvular atrial fibrillation in the United States: the REVISIT-US study. Curr Med Res Opin 2016;32:2047–2053.
・(ダビガトランでも同様報告あり)

・OptumLabs Data Warehouseの解析では,アピキサバン,ダビガトラン,リバーロキサバンはワルファリンに比べ虚血性脳梗塞は低率
・大出血リスクは,リバーロキサバンで同等ダビガトラン,アピキサバンではワルファリンに比べ低率
Effectiveness and Safety of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban Versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. J Am Heart Assoc 2016;5:e003725

・最近のFDAのダビガトランVS.リバーロキサバンのデータでは,血栓塞栓症はダビガトランがリバーロキサバンより低率。頭蓋内出血,頭蓋外出血ともリバーロキサバンがダビガトランより多い。死亡率も多い傾向。
Beneficiaries Treated With Dabigatran or Rivaroxaban for Nonvalvular Atrial Fibrillation. JAMA Intern Med 2016;176:1662–1671.

<まとめ>
・第3相試験とリアルワールドデータとの比較が推奨されているが,統計的なhead-to-headのNOAC間の比較にはがっかりさせられた。

・リアルワールドデータには以下のようなかなりの制約がある:残存交絡因子,短い追跡期間,選択バイアス,アウトカム測定法のばらつき(例:大出血の定義),外部評価の欠如,不完全な追跡

・言えることは,これまでのリアルワールドデータはRCTのアウトカムと同様であるということ。

・それゆえNOACはガイドラインで推奨度クラスI,エビデンスレベルAとなっている。

・一方アスピリンはクラスIIIである。

### 肥満パラドックスを除くと,概ねNOACが各場面,各現実世界でRCTと同等もしくはそれ以上の有効性安全性を示したことが強調されています。「抗凝固薬への関心が,血栓塞栓症の予防から心血管合併症全般に向かっている」これ一番大事と思いました。

$$$ 暮れにこれが届きました。自分への大きなお年玉です(紅白歌合戦のときと同様,知らない人にとってはどうでもいいことなのですけど。。)。
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by dobashinaika | 2017-01-04 22:30 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

抗凝固薬の服薬アドヒアランスに関する総説-なぜ抗凝固薬は飲めないのか:TH誌


Thromb HaemostにNOACのアドヒアランスに関する総説がでています。

Adherence to oral anticoagulant therapy in patients with atrial fibrillation Focus on non-vitamin K antagonist oral anticoagulants
Thromb Haemost 2017 http://dx.doi.org/10.1160/TH16-10-0757

大雑把にまとめます。

<服薬アドヒアランスに影響する因子>
●患者側要因
・特性:年齢,民族,教育レベル,社会経済的ステータス,要介護度
・医療的状況:合併症,障害度,脆弱性,認知症,薬剤忍容性+副作用,ポリファーマシー
・行動要因:社会的孤立,精神疾患
・医学的知識への理解:薬剤服薬及び中止に関連したリスクとべネフィットへの理解

●医師/ヘルスシステム側要因
・知識:ガイドライン遵守度,推奨やリスク対処への気づき
・職場環境:専門施設,ヘルスシステムの構築,医師患者間の良好な関係,多職種アプローチ
・コスト:アクセシィビリテイ(公的,私的サービス),経済的要因

<NOACのアドヒアランス,パーシステンス>
・半減期が短いだけNOACはワルファリンよりアドヒアランス不良は許されない
・英国のGPデータベースでは,ワルファリンのアドヒアランスは1年目で70%,2年目で50%
・NOACの第3相試験では,18〜35%の非継続率。このうち副作用による中止はわずか。リアルワールドより厳格の管理での数値
・NOACのリアルワールドデータでは,38.0〜99.7%と極めて幅広い。80%を良好とする研究が多い
a0119856_23481542.png

<NOACのアドヒアランス/パーシステンスに関する考え方>
・一般的には1日2回のほうが,1日1回より血中濃度が良好に継続しやすい
・どのNAOCが最もネットクリニカルベネフットが良いかについては不明
・モデルデータからは,1日2回薬で1〜2錠/日飲まないよりも,1日1回で全然飲まなかったほうが血中濃度減少が大きいい
・臨床上有効な抗凝固モニターがない以上,しっかり飲んだかどうかの確認が重要
・現在,ピーク濃度が出血を規定するとされている。特に1日1回に比べ1日2回ではピークが低い
・このことは安全性を示唆するが,エドキサバンの第2相試験では同用量で1日2回よりも1回のほうが出血が少ないことが示されている

<NOACでのアドヒアランス向上策>
・ワルファリンではINRに基づく管理ができる。70%を概ね良好とする
・SAMe-TT2R2スコア(女性,60歳未満,既往歴,影響薬剤,喫煙,非白人)はアドヒアランス良好の可否を予測する因子
・同スコア2点以上では積極的に患者教育
・定期的なコンタクト,多職種からのアプローチ
・ヘルスプロバイダー間のエビデンス共有のアップデート:各種ソフト,e-サポート
・中心的な抗凝固クリニックにより運営される長期の管理
・患者教育により,抗凝固薬による脳卒中予防の重要性と実際の薬剤服用法の認識の定着 etc.

### 超厳格アドヒアランス管理のRCTでさえ最高で34.4%ものひとが服薬中途で脱落します。なぜこれほど抗凝固薬が飲めないのか。私は背景に抗凝固薬のもつ2つの宿命があると考えます。

1つは「退屈な薬である」ということ。ワルファリンはINRがありました。それとて血圧などに比べてなんとなく実感がわかない,むしろ出血の不安を掻き立てることさえある指標でした。ましてやNOAC。効いているのかどうか,危ないのかどうか全く実感することができません。飲んでいて喜びもヤバさ加減も湧かない薬,それがNOACです。

もう1つは「不条理な薬」であるということです。上記のように効いている実感がわかない上に,更に出血という重い有害事象がつきまとうし,実際皮下出血などはよく経験する。なんと割に合わない,不条理な薬なのでしょうか。

退屈で不条理と来ては70%程度の服薬率も頷けるかもしれません。ワタシ的には定期的に腎機能や貧血,aPTT,PTなどを採血し,飲まないことの脳梗塞リスクの重大性を薬剤師,看護師なども交えて確認,教育。認知症早期評価に傾注と言った当たり前の作戦しか思い浮かびません。

同様の総説は以下です。
http://dobashin.exblog.jp/20382624/

### ワルファリンは永遠に不滅です,なんて書いてワルファリン礼賛者のように感じられたかもしれないので,ワタシの基本的スタンスを確認。

以下のブログで示しているように「時と場合により使い分ける」です。大切なことはワルファリンかNOACかの2項対立ではなく,各薬剤の長所欠点を熟知して使うということです。殺鼠剤だったワルファリンだって時と場合によってはこれしかない場合もある。自分がAFのときだって時にはワルファリンのほうがいいこともあればNOACのほうがいい状況になることもある。こっちのほう絶対推し,だけはしないようにしたいということです。それこそがscientificな態度だと思うわけです。
http://dobashin.exblog.jp/21745479/

$$$ 昨日観ました。「真田丸」「シン・ゴジラ」とお気に入り豊作だったことしの白眉とも言うべき。非日常とは日常にこそ潜む,そして日常は非日常の下で連綿と息づく,そう感じます。
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by dobashinaika | 2016-12-05 23:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

シン・ボウサイドウな日々


調子に乗って作ってみました。
(期間限定かも)
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by dobashinaika | 2016-11-25 22:12 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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