カテゴリ:抗凝固療法:ワーファリン( 67 )

ワルファリンは絶滅危惧種?いや永遠に不滅です:ワルファリンの私の使い方


最近はどこに行ってもNOAC,DOACですね。
でもときどきワルファリン一筋の医師に出会うことがあります。
以前循環器専門医で,現在主に循環器疾患を見ている開業医の先生が多いような印象を受けます。

そうした人に共通の特徴は,ワルファリン管理に絶対の自信を持っていることです。
そうした医師は,長年培った経験から,このくらいワルファリンを増減すれば,次はこのひとならPT-INRがこのくらいに行くというのを,からだの中で言語化せずに,暗黙知として熟成して実践できるのだと思います。

私もご多分にもれず,そうした職人芸を弄する者の一人と思っています。以前拙著「プライマリ・ケア医のための心房細動入門」にも書きましたが,
方針はだいたい以下のとおりです。

1)70歳未満でも1.6〜2.6を目指す
2)だいたい70歳未満は2.2〜2.4くらい。70歳以上は2.0を目指す
3)高齢者,腎機能低下者,何回か使ってみてINRの上下の大きい人は0.25mg単位で増減する
4)INRが2.5以上になったら0.25〜0.5mg減らす
5)INRが1.6以下になったら0.25〜0.5mg増やす
6)INRが3以上になったら半分に減らして3日後に来てもらう
7)INRが4以上になったら全量中止して2日後来てもらう


もちろん高齢者,腎機能低下者はより細かく次回訪問日や変更用量を設定することもあります。
こうしてみると,INR調節は決して職人芸ではなく,かなりアルゴリズムに近いんですね。近い将来AIが医療を席巻し,そのときAIはNOACを使うでしょう。でもワルファリンの職人芸にもAIがすぐ立ち入りそうな予感もするのです。

で,これで5ヶ月やってみて,(導入期を除き)2回以上ワルファリン錠数の変更を余儀なくされる場合はNOACを考える。こんな感じです。
このやり方でTTRは75%(70歳未満も1.6〜2.6でよしとして)くらいまで可能です。
TTR75%ならどんなNOACにも太刀打ちできるかと思います。
実際,この5年間,INRが変動する例のみNOACに変え,管理良好例はワルファリンのままにしてやっていますが,頭蓋内出血,心原性脳塞栓症とも極小です。
全くの自前データなのでエビデンスレベルは最低ではありますが。

まあこんなことを書くと専門医の先生からはおしかりを受けそうです。たんなるExperiece based medicineではないかと。
でもですね,だいたいNOACのRCTはみんなINR2.0-3.0を目指す欧米の集団ですから,その意味でも日本人には鵜呑みにできないと思われます。
また,NOACのRCTの脱落率は20〜35%もあるわけです。
さらにのPIONEER-AFなどでは,NOACの超低用量に対しワルファリンは健気にもINR2〜3で戦っています。不公平と言うかほんと不憫なワルファリンです。涙が出ます(笑)。

たしかにNOACの導入,維持の簡便さはかなりメリットであり魅力ではあります。特に忙しいときなど。
またたしかに頭蓋内出血はどのRCTやどのリアルワールドデータを見てもワルファリンは勝てそうにないように思います。

でもね。繰り返すようですが,腎機能超低下例や人工弁,僧帽弁狭窄症症例はもちろん,そしてそれ以外の一般のケースでもまだまだ使いようによってはワルファリンもいけますということを声を大にして言いたいと思います。コスパは超絶大ですしね。

ワルファリンは絶滅危惧種?,いや永遠に不滅です,と言いたい。

$$$ シン・ゴジラはトロンビン製剤による全身血液凝固で凍結されましたが,あのラストを見るとまた復活する可能性は十分あります。そのときはさすがに立ち上がりの遅いワルファリンではなく,NOACの経口投与が良いのかもしれませんね。もっとも一度凝固して全身血栓だらけの血液を復元するのは可能なのかという問題が残りますが(ネタバレすみません)。

このスライドお気に入り。
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by dobashinaika | 2016-11-25 00:26 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ワルファリン服用中の消化管出血はプロトンポンプ阻害薬で予防できるか?:GI誌


Association of Proton Pump Inhibitors with Reduced Risk of Warfarin-related Serious Upper Gastrointestinal Bleeding
Gastroenterology 2016 Sep 14.


興味深い論文です。
NEJM Journal Watchでまとめてくれているので,そちらからの引用です。

疑問:ワルファリン服用中の消化管出血はPPIで予防できるか?

背景:PPIはNSAIDsや抗血小板薬服用者の上部消化管出血リスクを抑える。ワルファリン服用者ではどうか?

方法:
・テネシーメディケイドデータベース及び米国メディケアの5%のデータからの後ろ向きコホート
・ワルファリン新規服用者97,430人

結果:
1)75,720人フォロー:ワルファリン副賞者の上部消化管出血は119/10000人年

2)上部消化管出血による入院率(主要評価項目):PPI服用者は非服用者に比べ24%リスク減;ハザード比0.76(0.63〜0.91)

3)NSAIDsあるいは抗血小板薬服用者ではPPIの相対危険減少は45%;ハザード比0,55 (0.39〜0.77)

4)PPIの効果はNSAIDsや抗血小板薬の種類に依存しない

5)PPI非服用者では,NSAID及び抗血小板薬内服が出血増加因子であったが,服用者では出血に影響せず

6)PPIは他の出血原因には影響を与えず

結論:PPIはワルファリン服用者の上部消化管出血による入院を24%減少させた。しかしNSAIDsあるいは抗血小板薬服用併用例においてのみ顕著に減少させた。

NEJMグループのコメント:2つのデータベースの統合デーラによるこの大規模研究では,ワルファリン内服中でなおかつNSAIDsああるいは抗血小板薬内服患者において,PPIのインパクトが大きいことを強調している。PPIはこうした状況で上部消化管出血による入院を減らした。NSAIDsや抗血小板薬を内服していない患者では越した影響は明らかでないので,この研究の効果は小さなものであり,さらなる研究を要する。

### 最後のNEJMグループの一言がきついですが。。。

以前ワルファリンとPPIを一律に処方している施設を見たことがありますが,最近はNOAC投与例に必ずPPIを出すところもあるようです。少なくともワルファリンでは,NSAIDs,抗血小板薬併用例においては積極的に考えるということでよいかと思われます。

ワルファリンとNSAIDsの長期併用例は薬物相互作用の点からあまりないのですが,冠動脈ステント後のワルファリン-抗血小板薬併用例はよくあります。そうした例ではPPIを入れておいたほうが良いかもれません。

一番知りたいのはNOACですね。ワルファリンより消化管出血は多いことが確立されつつありますが,下部消化管出血(特にダビガトラン)が多いようですしどうでしょうか。たとえばNOACにクロピドグレル,それに一律にPPIを併用するとなると医療費も相当です。やっぱりそいう点でもワルファリンはいいんだけど。。

### 十四番目の月ならぬ十三夜。栗名月
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by dobashinaika | 2016-10-13 21:56 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

遺伝子(ゲノム薬理)に基づいたワルファリンの上手な調節法:TH誌

今更かもですが,ワルファリンの話題。連休で時間を持て余している方,マニアックな内容にお付き合いください。

ワルファリンの効き目を左右するものとして1)食品 2)薬剤 3)遺伝的素因があります。食品はビタミンKを含むもので代表選手は納豆(厳密にはビタミンKを腸内で産生)。薬品はいろいろあります。

遺伝子としてはビタミンKエポキシド還元酵素(VKORC1:ビタミンkの代謝を促進して凝固因子を作る手助け)とCYP2C9(ワルファリンの代謝を促す)は有名ですが,その他にCYP4F2を加えた詳細な遺伝子情報マップ(表)が,ワルファリンの用量を決めるのに有効との報告を見つけました。

An expanded pharmacogenomics warfarin dosing table with utility in generalised dosing guidance
Thrombosis and Haemostasis; Epub ahead of print: April 28, 2016


これまでFDAからひとつの遺伝子型からワルファリンの用量を設定する表が提供されていましたそうです(知りませんでた),
今回9つのタイプから作成されたCPMC-WD表というものが,それまでのFDAからのものより,よりワルファリンのコントロールがよく出来たという報告です。以下のサイトから見られるようです(検索した時はアクセスできませんでしたが。。)
http://www.thrombosis-online/

ネット上で紹介されているもう以下のサイトが元になってるように書いてありますが,こちらは見られました。
http://www.warfarindosing.org/Source/InitialDose.aspx

サマリーの表はこんなかんじです。
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ここまでやって,至適量が得られるのは50%程度のようです。
ときに10mgとか,大量のワルファリンを使用しなければならない場合や1mgだけでかなりINRが上昇する場合があります。こうした症例では遺伝子多型を調べて管理すればより良いかもしれません。

この表を使えばNOACを上回る効果安全性が得られればいいですが,,
これだけ多くの遺伝子を調べるのでマーケッティングには乗らないでしょうかね。

$$$ またも遠景ネコ
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by dobashinaika | 2016-05-05 09:37 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

PharmaTribune誌2015年12月号に「名薬温故知新 心房細動 ワルファリン」掲載させていただきました

PharmaTribune誌2015年12月号にワルファリンに関する記事を描かせていただきました。
題名は「名薬温故知新 心房細動 ワルファリン」です。

ワルファリンまだ捨てたもんじゃない,いやむしろもっと評価されるべき。的な話です。
ご興味ありの方はぜひご一読を

http://site5.mtpro.jp/pt/web/preview/clinical/superior_drugs/160120000094/
(全部閲覧には無料登録が必要です)
by dobashinaika | 2016-01-28 21:05 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

日本人の心房細動例では脳梗塞/TIAの既往例でもINRは1.6~2.6が良い :JSCD誌

Secondary Prevention of Stroke with Warfarin in Patients with Nonvalvular Atrial Fibrillation: Subanalysis of the J-RHYTHM Registry
Eitaro Kodani et al
Journal of Stroke and Cerebrovascular
Published Online:December 22, 2015

P:Jリズムレジストリー登録患者7406人(平均69.8歳),2年またはイベント発生時まで追跡

I:脳卒中/TIA既往あり

C:既往なし

O:血栓塞栓症

T:後ろ向きコホート(観察研究)

結果:
1)男性,糖尿病は二次予防群で多い。年齢,CHADS2スコア(3.5 ± 1.0 versus 1.4 ± 1.0, P < .001)は二次予防群で高い

2)二次予防群はワルファリン処方率93.4%,TTR62.8%

3)血栓塞栓症:二次予防群2.8% vs. 一次予防群1.5%,P=0.004。特にワルファリンなしの例でその
差が大きい

4)大出血:二次予防群3.0% vs. 一次予防群1.7%,P=0.006。

5)血栓塞栓症+大出血の複合イベント発症率は,二次予防群でINR1.6~2.59に管理された例と一次予防群とは同等で,ワルファリン被覆用例よりは良好

結論:血栓塞栓症,大出血とも,脳卒中/TIA既往例でより効率に生じた。日本の非弁膜症性心房細動例では,INR1.6−2.59を目標とした二次予防症例は,一次予防例と同等の血栓塞栓症発症率であった。

### 二次予防であってもINRは1.6〜2.6で良いということが観察研究の上から実証された形です。しかも一次予防群とアウトカムは同じです。JリズムにはCHADS2スコア0〜1点の人も多数含まれていますので(平均1.4点),そうした人たちとCHADS2スコア2点以上(平均3.5点)の高リスク群とを比べてもINR低めでも同等ということですね。

ただやはりINRが1.6に近いよりは2.2前後のほうが良いように推察されますが,その辺の細かいデータがあれば見てみたいと思います。実際には二次予防群といってもTIAから大梗塞まで,CHADS2スコア2点から6−7点まで幅広いスペクトラムを含んでいますので,その辺を考えながらINRの強度を調節するのが実臨床かと思います。

$$$ きょうのニャンコ。庭に迷い込みました。
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by dobashinaika | 2016-01-04 18:23 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

高齢者でワルファリンとSU薬の併用は低血糖リスク増加に関連:BMJ誌

Association between use of warfarin with common sulfonylureas and serious hypoglycemic events: retrospective cohort analysis
John A Romley et al
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6223 (Published 07 December 2015)


疑問:ワルファリンはSU薬服用中の高齢者の低血糖リスクを増やすのか?

P : SU薬(グリメピリド又はグリピジド)が処方されている65歳以上の2型糖尿病患者(米国465918人)
I : ワルファリン併用あり;15,4%
C : ワルファリン併用なし
O : 3ヶ月間間の低血糖による入院または救急治療

結果:
1)ワルファリン群(0.071%) vs 対照群(0.048%);調整オッズ比1.22(1.05~1.42),P<0.01
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2)低血糖例は初めてワルファリンが処方されて例に多い

3)骨折による入院または救急治療 : ワルファリン群(0.94%) vs 対照群(0.53%);調整オッズ比1.47(1.41~1.54),P<0.001

4)意識/精神状態の異常 : ワルファリン群(0.60%) vs 対照群(0.37%);調整オッズ比1.22(1.16~1.29),P<0.001

臨床的意義:ワルファリン+SU薬併用と低血糖による入院/救急治療との間には明らかな正の相関あり。特にワルファリン初期投与でい多い。この所見は上記薬剤の相互作用の可能性を示唆する。

### ワルファリンはCYP2Cで代謝されますが,SU薬のほとんどがCYP2関連酵素で代謝されますので,競合によりSU薬の作用が増強することは教科書的に知られています。ただ,実際には報告も少なく,私自身はほとんど経験がありません。最近はほとんどSU薬を使わなくなったこともあるとは思います。上記のオッズ比もやや低値ですね。ただ,追跡期間が短いですし,多数例なので意義はあると思われます。

糖尿病関連ではジソピラミド,シベンゾリンなどのIa群抗不整脈薬がSU薬とよく似た分子構造を持っていて膵β細胞のK-ATPチャネルを抑制し血糖降下作用があることは有名です。こっちのほうが頻度は高く私も痛い目にあっています。

こういう大規模観察研究は,「どういう人に気をつけたらいいか」にヒントを与えてくれるものと理解した方がいいです。以前高齢者では出やすいという報告を見たことがあります。ワーファリンナイーブ患者で高齢者の場合,SU薬内服中の人には要注意と心得ます。

$$$ すっかりかぜを引いてしまい,声が出なくなりました。皆様に御迷惑をお掛けしておりますが,幸い今日は声が出てきて復活傾向です。
というわけで散歩休みで写真がないので,先日の盛岡での講演というか,おしゃべりの模様です。沢山の人に聴きにいらしていただきました。
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by dobashinaika | 2015-12-17 21:41 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

抗凝固薬内服下で消化管出血を起こしたあとに抗凝固薬を再開すべきか:BMJ

Stroke and recurrent haemorrhage associated with antithrombotic treatment after gastrointestinal bleeding in patients with atrial fibrillation: nationwide cohort study
Laila Staerk, Gregory Y H Lip et al
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h5876 (Published 16 November 2015)

疑問:心房細動の抗凝固療法継続中に消化管出血を起こした人の抗凝固薬再開時における血栓塞栓症,大出血,再出血リスクはどのくらいか?

方法:
・デンマークコホート研究(1996〜2012年)
・心房細動の抗凝固療法施行時に消化管出血をきたし,抗凝固薬あるいは抗血小板薬を再開した症例
・退院90日後から追跡
・アウトカム:全死亡,血栓塞栓症,大出血,再出血

結果:
1)4602人(平均78歳),2年追跡

2)死亡:39.9%,血栓塞栓症12.0%。大出血;17.7%,再出血12.1%

3)抗凝固薬再開せず:27.1%

4)抗血栓薬再開例全死亡ハザード比(非再開例に比べ):抗凝固薬0.39,抗血小板薬0.76,両者0.41

5)抗血栓薬再開例血栓塞栓症ハザード比(非再開例に比べ):抗凝固薬0.41,抗血小板薬0.76,両者0.54

6)抗凝固薬再開のみが,大出血リスクを増加;ハザード比1.37

7)消化管出血再発は再開例,非再開例で同等
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意義:消化管出血後の抗凝固薬再開は再開しない例に比べて,死亡,血栓塞栓症を明らかに減らす。出血は増加するが。

資金;ベーリンガー・インゲルハイム社

### 抗凝固薬にNOACは含まれていない模様です。

またもデンマークでLip先生からの情報発信。
以前にもこの問題に関するメタ解析を取り上げました。この時は再開例の血栓塞栓症に関するハザード比は0.68でしたので,それよりも良い結果でした。
平均78歳と高齢集団にもかかわらず,やはり出血した場合でも再開したほうが良いということかと思います。
http://dobashin.exblog.jp/21285265/

もちろん,INRの厳格管理,血圧,PPI追加,出血源の同定などの施行は大切かと思われます。

あと,当然観察研究なので、非再開例の中には再開できないような重症例も含まれる可能性は押さえていくべき。

ただ,NOACだとどうするか。ほかのNOACに変えるべきか,低用量に変えるべきか。選択肢が増えただけに悩ましさも増えたように思います。
私はなるべくなら,RCTで消化管出血がワーファリンよりも増えないNOACに変えていますが,そうしたNOACでも消化管出血を経験していますので,あくまで暫定的です。
高齢者なら低用量にするという選択もあると思われます。

$$$きょうのにゃんこ。どこでしょうか
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by dobashinaika | 2015-12-01 22:15 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ワルファリン管理の新しい指標WCM:Circ QCO誌

Improving Anticoagulation MeasurementNovel Warfarin Composite Measure
Zayd Razouki et al
Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes.2015; 8: 600-607


背景:TTRとINR変動性 (variability)はそれぞれワルファリン管理の指標であり,独立してアウトカムに影響を与える。この2つの複合指標 (warfarin composite measure :
WCM)の有効性を検討

方法:
・対象:ワルファリン服用患者103897人,100の抗凝固クリニック
・TTRと長期のINR変動性を同等に重み付けしたWCMを開発
・アウトカム(心房細動患者40404人):虚血性脳卒中,大出血,致死的出血

結果:
1)WCMは,脳卒中,致死的出血において,最高4分位と最低4分位のはハザード比の差がTTR,INR変動性単独よりも大きかった

2)大出血にはその傾向なし

3)Kappa スコア(2つの診断ツールの一致率)じゃWCMとTTR (k=0,56),INR変動性 (k=0.62)とは中等度の相関があったが,TTRとINR変動制との相関は低かった (k=0,13)。

結論:WCMはワルファリンの合併症リスクを最大限に評価し,TTRやINRの限界をカバーする効果が有る。抗凝固クリニックの優先順位がこの指標を選ぶことにより変化した

### INR変動性 (variability)がはじめて提唱された論文はこちらです。
Comparison of control and stability of oral anticoagulant therapy using acenocoumarol versus phenprocoumon.

何の事はない,対象範囲内での標準偏差です。これを元にINR変動性の有用性を同じ筆者ら既に報告しています(ブログに載せずすみません(^_^;))。
Improving Quality Measurement for Anticoagulation Adding International Normalized Ratio Variability to Percent Time in Therapeutic Range

たしかにTTRが良くても例えば1.6〜2.6の範囲内で先月は1.6,今月は2.6などとばらつく患者もいます。一方,つねにTTRが低めで1.5〜1.6をウロウロしていても,variabilityは良いということもあります。これら2つの組み合わせ指標は,理論的には大変有効だと思われます。

良いのはわかりますが,算出が大変ですね。ソフトをカルテに組み込む必要があります。むしろこうした論文で知りたいのは,variabilityが大きい症例はどういう症例なのか,高齢者がやはり多いのか,食生活に変動がないのか。など逸脱例のプロフィールを知ることかと思います。

ワルファリンにかぎらず,各種NOACのPMSを始めとするリアルワールドデータも続々と出てきていますが,こういうのを見て,「RCTと同じだ」だけで納得しては前進しないと思います。リアルワールドデータは,むしろどんな症例が出血したのか,塞栓症を起こしたのか,どんな症例で低用量への変更が行われていたのかなどの情報活用に使うべきだと思います。

$$$ 散歩中発見の手袋おとしもの,そろそろこんな季節。
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by dobashinaika | 2015-11-24 22:39 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

名薬"温故知新”「ワルファリンまだまだいけますよ」

メディカル・トリビューン誌で「まだまだワルファリンいけますよ」と言わせていただいております。ご批判覚悟です(笑)。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1508/1508041.html
(要無料登録)

まあいろんな講演会(Web講演会も含めて)や雑誌で、いまさらワルファリンを大々的に取り上げる場などあまりないかもしれません。
そういう意味でも、自分で言うのもなんですが、メディカル・トリビューンさんの大英断だと思います。

たしかにNOACは良い薬です。各種RCTは非常に良い結果ですし、最近のリアル・ワールドデータもそれほどRCTとかけ離れたものは出ていないようです。なにより食事、他剤を気にすることなく、用量調節も必要なくお手軽です。

でもなあ、ワルファリンのあの職人気質というか、「そう簡単には使いこなせんよ」的な気難しさになんとも惹かれるんですね。
だいたい、毎回受診するごとに数値をモニターして、それを見ながら錠数を変えていく薬なんて内服薬で他にあるでしょうか?

そうした面倒臭さに、何年もいや何十年も付き合わされていると、もうその面倒臭さが体に染み付いて、離れられなくなっているのです。
そして、NOACのあのいかにもスマートで、「何の工夫もいらないです」的な都会臭さみたいなものが鼻持ちならないんです(笑)。

おもわず、NOACでも錠数を増やしたり、.5単位で減らしたりしたくなります。

さらに実際に使ってみての当院のデータですが、NOAC発売時TTRが安定していたためNOACに変えずにいた症例の血栓塞栓率および大出血率はともに年間0.2%と極めて低値でした(全103例、TTR75%)。
この値はNOAC(全169例)とほとんど変わりませんでした。そして皮下出血などの小出血はかえって少なめでした。

ワルファリンで痛い目にあう症例とは、1)INRが安定しない症例 2)血圧が落ち着かない例 です。1)はlow doseになりがちで塞栓症が増えますし、2)は頭蓋内出血のリスクを高めます。
こうした症例ではNOACがふさわしいと言えます。

そうではない、INRが大変安定していて、血圧が落ち着いている例ではワルファリンで十分だと思われます。
また本文でも述べましたように、小出血、消化器症状などが頻発し、結局ワルファリンに戻ってくる症例も経験します。

そして何よりコストです。ワルファリンは1錠9.6円です。非常に廉価なので製薬企業も全然宣伝しません。
いっぽうNOACは非弁膜症性心房細動適応の最も高い薬剤だと758円!です。これだけの差に見合うだけのエビデンス的優位があるのか?
まあ、薬剤の効果安全性とコストとは元来全然違うカテゴリーなので。このような比較は不可能かもしれませんが、そう言いたくもなるほど価格差がありすぎます。

もちろんNOACの頭蓋内出血減少効果は絶大ですし、出血しても重症例が少ないことはよく報告されています。また、ワルファリンは使いこなしが難しいし、それが故にアンダーユーズになっている世の中の現状があるのは事実かもしれません。でもね、うまく使いこなせれば効果安全性もまだまだ高い、しかも超安い薬がこの世の中に他に存在しているのであれば、やはり医師としてはそうした薬も使いこなせるようになっておきたいとものだと思うのです。

前にも言いましたように、「温故知新」ならぬ「温新知古」=新しいNOACを温ねることで改めて古きワルファリンの良さを知る、であり、oldies but goodiesというにふさわしい薬剤だと思います。

ちょっとワルファリン持ち上げ過ぎかなあ。でもたまにはそういうことを言う場があってもいいし、言う医者がいてもいいですよね。

なお、平成24年4月以降、開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません。

$$$ 早朝5:30、飛び立ったばかりか。
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by dobashinaika | 2015-08-12 00:22 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ワルファリンはダビガトランよりも腎機能低下をもたらす:JACC誌

Changes in Renal Function in Patients With Atrial Fibrillation
An Analysis From the RE-LY Trial
Michael Böhm et al
J Am Coll Cardiol. 2015;65(23):2481-2493


目的:RE-LY試験で、ワルファリンあるいはダビガトランを投与した患者の長期の腎機能への影響を検討

方法:RE=LY試験参加者18113例中、ベースラインと少なくとも1回の追跡期間(30ヶ月まで)でGERを測定し得た16490例対象

結果:
1)GERは全群で低下

2)GFR低下度(平均追跡30ヶ月):ワーファリン群(–3.68 ± 0.24 ml/min)>ダビガトラン110群(–2.57 ± 0.24 ml/min; p = 0.0009 vs. warfarin) 、150群 (–2.46 ± 0.23 ml/min; p = 0.0002 vs. warfarin)

3)25%を超えるGFRの低下:ダビガトラン110群: ハザード比 0.81 95%CI0.69 to 0.96; p = 0.017、ダビガトラン150群: ハザード比 0.79 95%CI0.68 to 0.93; p = 0.0056

4)TTR低値(65%未満)、以前のワルファリン使用、糖尿病はGFR低下に寄与

結論;抗凝固薬服用者はGFR低下を認めるが、ワルファリンのほうがダビガトランより低下度は大きい。この度合いはワルファリンの既服用、糖尿病者でより顕著

### なるほど、これはあまりよく知りませんでした。機序としてはワルファリンによってVitamin K-Dependent Protein Matrix Gammacarboxyglutamic Acid (Gla/MGP)というタンパクが抑制され、これが動脈硬化、引いては腎機能低下の引き金になるようです。

30ヶ月で平均1ml/min程度の違いが臨床的にどれほど意味があるかはわかりません

$$$今日のかたつむり(笑)。これからこういう写真が増えそうです。
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by dobashinaika | 2015-06-09 23:20 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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