カテゴリ:心臓突然死( 14 )

運動に関連した突然死の原因はなにか?:JACC誌

Etiology of Sudden Death in Sports Insights From a United Kingdom Regional Registry
J Am Coll Cardiol. 2016;67(18):2108-2115

疑問:激しい運動に関連した突然死の原因は何か?

方法:
・1994〜2014年に突然死した運動選手連続357例。ロンドンの1施設
・平均29歳,男性92%,白人76%,競技中69%
・死亡後に組織学的検索をできるかぎり施行

結果:
1)突然不整脈死症候群(SADS)が42%で最多

2)心筋症40%:特発性左室肥大/線維症16%,不整脈原性右室心筋症13%,肥大型心筋症6%

3)冠動脈奇形5%

4)冠動脈奇形とSADSは35歳以下に多い。一方心筋症はより高年者に多い

5)激しい運動中の突然死は61%。不整脈原性右室心筋症,心内膜心筋線維症は最も強く突然死を予測させる疾患
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結論:運動における突然死は,年齢に依存する。不整脈原性右室心筋症,心内膜心筋線維症は持っよも強く関係するので早めの診断と運動禁止を強調すべき。しかし約40%は安静時の死亡であり,包括的な予防戦略が求められる

###
 この論文での強度の高い運動の定義は,週3時間以上の系統的なトレーニングとされています。
突然死の原因で一番多いのはSADS,つまり心筋症などのもともとの器質的な心臓病がない不整脈です。ブルガダ,QT延長症候群,特発性心室細動(トルサード・ド・ポアンなど)などが含まれると思われます。

心筋症は事前の心電図である程度わかります。スクリーニングの是非は別として,強度の高い運動をするひとは,心電図のチェックはしておいたほうが良さそうに思える結果です。

トライアスロン中の突然死についてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/21467182/

$$$ ご近所の藤の花。今年も美しい
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by dobashinaika | 2016-05-09 22:35 | 心臓突然死 | Comments(0)

突然心停止前の徴候は何か?それはどの程度生存に影響するのか?:AIM誌

Warning Symptoms Are Associated With Survival From Sudden Cardiac Arrest.
Ann Intern Med 2016;164:23-29.



疑問:突然心停止の徴候はあるのか,それは生存とどう関連があるのか?

方法:
・The Oregon Sudden Unexpected Death Study
・院外突然心停止例の前向きコホート研究
・35〜65歳
・突然死4週間前の本人,家族,友人,カルテ,救急応対等を調査

結果:
1)893例。平均53歳,男75%

2)430例51%に警告徴候あり。主に胸痛と息切れ

3)多くの症例(93%)で,突然心停止24時間以内に症状が再発していた

4)81例19%の人のみが心停止前に救急要請時に症状を訴えた:これらの患者の多くは心臓病の既往または持続する胸痛を訴えた

5)症状のために救急通報した例の生存率は32.1%で,通報無しでは6.0%

結論:警告徴候は突然心停止の前に頻繁に出現する。緊急のケアは症状のある患者の生存率に関連していた

$$$ 米国は虚血性心疾患による心停止が多い国ですので(全体の2/3〜3/4程度),胸痛,息切れは重要な徴候と思われます。

心停止の4週間前までに半数居のひとが症状を訴え,そのうち9割が24時間以内に症状を感じていた,ということあり,特に心臓病の既往や持続する胸痛には要注意ということですね。

すくなくとも虚血性心疾患高リスクの方や既往のある方には,どういう症状の時は狭心症や心筋梗塞を考えるのか,どんな時に救急隊に連絡すべきなのかに関する日頃からの情報伝達が大変重要であるように思います。

### 近場の日帰り温泉に行ってきました。そこの旅館前で主のように構えるネコ。こうは猫の日ですね。
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by dobashinaika | 2016-02-22 22:18 | 心臓突然死 | Comments(0)

救急外来での失神管理10か条:ACCまとめサイト

Syncope clinical management in the emergency department: a consensus from the first international workshop on syncope risk stratification in the emergency departmentGiorgio Costantino, et al
Eur Heart J 2015;Aug 4 DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehv378 F


ACCのサイトから上記論文のまとめです(要登録)。
Syncope Clinical Management in the Emergency Department
Aug 17, 2015 | Thomas C. Crawford, MD, F.A.C.C.S

【救急外来における失神管理10のポイント】

1.昨今の失神のアプローチは,広範囲で,高コストであり,効果は疑わしい。北米と欧州の多領域の専門家が救急分野での最良のコンセンサスを得ることを目指している。

2.失神の定義:急発症で短時間で自発的な完全回復のある一過性脳低灌流に由来する一過性の意識消失。

3.患者のアセスメント:病歴,身体所見,心電図,臥位及び立位血圧,特殊検査(血液,頚動脈洞マッサージ,エコー,胸部写真,血液ガス)

4.原因不明の失神患者を入院:有害事象を減らすかどうかは不明。入院の意思決定は,コスト,入院にともなって考える有害イベントと入院による効果とを考え合わせるべきである。

5.バイオマーカー:トロポニンやBNPがリスク評価として注目されているが,現時点ではルーチン検査としては勧められない

6.高リスク患者とは以下のうち1つを有する
・労作時失神,臥位での失神,新規発症の胸部不快感を伴う,失神前の動悸を伴う
・突然死の家族歴
・心不全,大動脈狭窄,左室流出路疾患,拡張型心筋症,肥大型心筋症,催不整脈性右室異形成,左室駆出分画<35%,心室性不整脈の既往,冠動脈疾患,先天性心疾患,以前の心筋梗塞,肺高血圧,ICD植え込み
・ヘモグロビン<9,収縮期血圧<90,洞徐脈<40
・新規の左脚ブロック,二束ブロック+第1度房室ブロック,ブルガダ型心電図,急性虚血性変化。新規非洞調律,二束ブロック,QT延長>450ms

7.低リスク患者とは以下の1つ以上を有し高リスク因子を有しない
・40歳未満
・立位での失神,臥位/座位から立った時の失神,失神前の嘔気嘔吐,失神前の熱感,痛みや感情的刺激,咳,排便,排尿に伴うもの
・長年に渡る同じようなエピソード

8.高リスクでも低リスクでもない患者
・低リスクながら他の合併症を持つ
・合併症はないが,神経質なキャラクターがある
・低リスク,高リスク因子共になし

9.中〜高リスク患者は外来でモニターすべき。低リスク例は追加検査は必要なく外来でフォロー

10.以下の所見はモニター上陽性
・心停止3秒以上
・持続性/非持続性心室頻拍(症状有る無しを問わず)
・高度房室ブロック
・徐脈<30(症状有る無しを問わず)
・徐脈<50+症状あり
・頻脈>120+症状あり

### 非常にクリアカットです。

一応血液検査,心電図,胸部写真まで施行する。そのうえで,器質的心疾患やモニター上の不整脈,貧血がなく,40歳未満,立位での失神,臥位/座位から立った時の失神,失神前の嘔気嘔吐,失神前の熱感,痛みや感情的刺激,咳,排便,排尿に伴うもの,長年に渡る同じようなエピソードであれば,原則入院させなくて良い。という極めて実際的な教えですね。

改めて”勉強になります”

$$$  患者さん手作りのアクセサリーです。きょうはワンコ。
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by dobashinaika | 2015-08-28 22:19 | 心臓突然死 | Comments(0)

トライアスロン中の突然死に関する論文。死亡の大半は水泳中(米国):JAMA誌

トライアスロンの参加者(医師)が競技中に亡くなるとのニュースが続けてありました。
トライアスロンと突然死の関係について調べてみました。

Sudden Death During the Triathlon
Kevin M. Harris et al
JAMA. 2010;303(13):1255-1257


背景:トライアスロンの突然死リスクに関する系統的な調査はこれまでない

方法:
・米国の公認トライアスロン2971レース対象。2006年1月〜2008年9月。オンラインで結果検索。
・非公認レースは除く
・データベース:US Registry of Sudden Deaths in AthletesおよびUSAT recordsを使用

結果:
1)959,214人対象(1レース平均324人)、59%が男性、45%が短距離水泳(750m未満)、40%が中間距離水泳(750〜1500m)、15%が長距離水泳(1500m以上)

2)死亡率:10万人あたり1.5人(95%信頼区間0.9〜2.5)

3)死亡者数:14人。水泳中13人(男11、女2)、自転車中1人

4)死亡者の年齢:28〜65歳(平均44歳)

5)死亡者の出るレースは出ていないレースよりも参加者が多い:平均1319人vs. 318人

6)死亡者の水泳距離:短距離6人、中距離4人、長距離3(2人は鉄人トライアスロン)

7)8人は苦しんで援助を呼んだ。5人は水上で動かなくなった

8)場所:海6,湖4,貯水池2,川1

9)自転車による死者:転倒による頚椎損傷

10)死因:公には溺死とされているが、剖検した9人中7人は心血管系異常が認められた
左室肥大6,WPW症候群1、先天性冠動脈異常1、正常心2

コメント:
・原因として心血管異常は否定できないものの、ロジステックな要素や過酷な環境の関与が示唆される
・多数の参加者が一斉に水に入るため、体同志の接触や冷たい水への曝露なども原因として考えられる
・マラソン中の死亡は10万人あたり0.8人との報告あり


### 以前読んだNEJMの論文では、マラソンは10万人あたり0.39人ですので、それよりかなり多いことになります。
http://dobashin.exblog.jp/14413409/

ただし、以前にもブログで読みましたが、心電図スクリーニングは突然死減少効果は少ないとの報告もあります。
http://dobashin.exblog.jp/12246976/

やはり競技環境、気候、水温などの環境因子の関与も大きいのでしょう。

アスリートの心臓突然死に関するレビューはこちら
http://dobashin.exblog.jp/13214857/

お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げます。

$$$ 今朝の散歩は休日なので40分コース。梅雨明け待ち遠しい広瀬河畔です。
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by dobashinaika | 2015-07-20 21:26 | 心臓突然死 | Comments(0)

健康アスリートの心電図とタイプ2ブルガダ型心電図を鑑別する新しいクライテリア:Europace誌

New electrocardiographic criteria to differentiate the Type-2 Brugada pattern from electrocardiogram of healthy athletes with r′-wave in leads V1/V2
Guillem Serra et al
Europace 1月7日


疑問:健康なアスリートの心電図からType-2 Brugada波形を同定するクライテリアは何か?

方法:
・Brugada症候群でタイプ2Burugada波形を呈する患者50人とV1-2誘導でr'波を認める健康なアスリーと58人の解析
・V1、2誘導のr'波の上行脚と下行脚が作る三角形の特徴に基づくクライテリアを比較

結果
1)「r'波の頂点から0.5mV (5mm)での三角形の底辺の間隔が160ms (4mm)以上」の特異度95.6%、感度85%、陽性的中率94.4%、陰性的中率87.9%

2)「等電位線での三角形の底辺の間隔が60ms (1.5mm)以上」の特異度94.8%、感度94.8%、陽性的中率79.3%、陰性的中率93.5%

3)「等電位線でのr’波の底辺の間隔と等電位線から頂点までの高さの比」の特異度92.1%、感度82%、陽性的中率90.1%、陰性的中率83.3%

結論:3つの新しいクライテリアは健康なアスリートに見られる心電図のr'波とタイプ2Brugada波形を正確に見分ける。r'波の頂点から0.5mVでの三角形の底辺の間隔が、臨床上最も簡便で有用

### まずおさらい。Brugada症候群は突然死を来す疾患として有名ですが、心電図からタイプが1〜3まであります。タイプ1は従来からCobedタイプ(弓状型)と言われるもので、タイプ2と3はSaddle back型(馬鞍型)です。
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(wikipediaより)

薬物負荷無しでタイプ1を呈する例は予後が良くないとされ、タイプ2,3は比較的良好と言われています。ただしタイプ2,3でも時間帯や日によってはタイプ1を呈することや、他の疾患(ARVCなど)や健康なアスリートでも認められることから、本当に予後が良いのか、それとも良くないものなのかを見極めることが難しいとされてきました。

今回の心電図のクライテリアは3つありますが、大雑把に言えばV1-2誘導の右脚ブロック波形のうち、r'波(3つの成分の3番目)の幅が広いほうが心電図としては問題があることが示されています。

特に下の図のCのAですが,r'波の頂点から下に5mm下がったところで水平線を引き、r'波の上行脚と下行脚とで三角形を作ってその底辺の長さが4mm以上なら要注意とのことです。これは簡便ですね。
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実際の有用性は今後の前向きな研究などで検証されると思われますが、今後一応は計測してみたいと思います。

$$$ 今日は近所の隠れ家で秘密の作戦会議(いえ、次回の健康カフェの打ち合わせ)でした^^。キウイのソルベです。
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by dobashinaika | 2015-01-08 23:27 | 心臓突然死 | Comments(0)

心電図のQRS幅は成人男性の心臓突然死の予測因子:フィンランドの一般住民コホート研究より

Circulation 5月21日早期公開版より

The Duration of QRS Complex in Resting Electrocardiogram is a Predictor of Sudden Cardiac Death in Men
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.111.025577


一般住民コホート対象にした心電図のQRS幅が心臓突然死を予測しうるか否かの研究

P:フィンランドのKuopioの住民42〜60歳からランダム抽出し心電図を19年間フォローし得た男性2049人

E/c:心電図のQRS幅

O:心臓突然死

結果:
1)心臓突然死は156例

2)QRS幅の10msecの延長による突然死の相対リスクは1.27 (1.14-1.40)

3)QRS幅110msec以上の人(四分位最高位)は、96msec未満(最低位)の人より2.5倍の突然死率

4)上記データは、年齢、アルコール、心筋梗塞の既往、喫煙、収縮期血圧、コレステロール、CRP、糖尿病、BMI、運動で補正後

5)QRS幅に加え、喫煙、心筋梗塞の既往、糖尿病、運動、BMI、収縮期血圧、CRPは心臓突然死の独立危険因子


結論;QRS幅は心臓突然死の独立危険因子であり、一般住民の心臓突然死リスク評価に有用

### 心不全や心筋梗塞患者でQRSが生存率の予測因子であるとの報告は知られていますが、本論文は一般住民対象で、難しい検査ではなく、心電図のQRS幅のみで物を言っているところが特徴です。

QRS幅の延長は心室内の伝導障害を表してると考えられるので、心室性不整脈や心機能低下のサロゲートとになりうると考えられます。

ただし実際10mecの延長を体表面心電図で同定するのは、厳密な測定が要求されると思われます。 かなり根気のいる研究ですね。

QRS幅がやや広め、かつ上記の危険因子を持っている場合は、注意深く見る必要があります。たくさんいらっしゃるような気はしますが。
by dobashinaika | 2012-05-29 23:20 | 心臓突然死 | Comments(0)

乳幼児突然死症候群に関連した遺伝子突然変異:Circulationより

Circulation1月24日号より

Connexin43 Mutation Causes Heterogeneous Gap Junction Loss and Sudden Infant Death
Circulation. 2012;125:474-481


・乳幼児突然死症候群(SIDS)の10-15%がイオンチャネル病(細胞膜を通過するNa、K、Caなどのイオンの通り道となるタンパク質の異常)と推定されている。

・細胞と細胞の間をつなぐタンパク質=ギャップジャンクションの構成蛋白としてコネキシン43が知られているが、これをエンコードする遺伝子GJA1の欠乏と致死性不整脈との関連が知られている。

・292名の乳幼児突然死症候群症例の心筋組織のDNAを解析した。

・2症例(2ヶ月白人男子と3ヶ月白人女子)でE42KとS272Pという,珍しくて新しい遺伝子突然変異が認められた。

・E42K突然変異では細胞接合部の伝導に機能低下を認め、同遺伝子異常のある心筋ではモザイク染色パターンを示した。

結論:本研究はSIDSの新しい病因学的基質としてのGJA1遺伝子突然変異に関連した分子的、機能的根拠を示した最初の研究。E42Kコネキシン43はtrafficking に依存しない細胞間接合の減少をきたし、病的心筋において突然変異DNA配列のモザイクパターンを示した。このことはコネキシン43関連突然死の新しいメカニズムとして提示された。

###きのうのブログで紹介した「ギャップジャンクション遺伝子異常が心房細動の一原因となりうる」との知見に関連した論文が最新号のCirculationで目に止まったので紹介しました。きのうの論文とあわせて考えれば、遺伝子治療により乳幼児突然死症候群の一部が治療できる可能性も推測できるかと思われたので、upした次第です。
by dobashinaika | 2012-01-24 23:30 | 心臓突然死 | Comments(0)

マラソン、ハーフマラソン参加者の心停止発症率は他の活動的身体運動と同等またはそれ以下:NEJMより

New England Journal of Medicine 1月12日号より

Cardiac Arrest during Long-Distance Running Races
N Engl J Med 2012; 366:130-140


参加者年間200万人と言われる全米の長距離走大会(マラソンまたはハーフマラソン)参加者のうち、心停止をきたした人の特徴に関する研究

方法:
・2000年1月から2010年3月までにアメリカ合衆国で開催されたマラソンおよびハーフマラソンにおいて、レース中または終了1時間以内に生じた心停止例を対象

・蘇生成功例では本人へのインタビュー、非成功例では親類へのインタービューあるいはカルテ、死後のデータにより心停止例の臨床的特徴を解析

結果;
1)1090万人の走者のうち心停止例は59人(平均年齢42±13歳、平均51歳、10万人あたり0.54人;95%CI,0.41-0.70)

2)心血管疾患が心停止の主原因;肥大型心筋症、虚血性心疾患

3)心停止発症率はマラソン中(10万人中1.01)がハーフマラソン中(10万人中0.27)より明らかに多い

4)男性が女性より有意に多い

5)男性マラソン走者の高リスク例では最近の5年間の方がその前の5年間より発症率が高い(0.71vs.2.03人/10万人; P=0.01)

6)心停止59例中42例71%は致死的

7)完全な臨床記録が残っている31例においては、バイスタンダー心肺蘇生および、肥大型心筋症以外が事前に診断されていたことが生存に関する強い予測因子

結論:マラソンおよびハーフマラソンの心停止と突然死の全リスクは低い。心停止には、肥大型心筋症、虚血性心疾患が最も寄与しており、男性マラソン走者に最も起こりやすい。最近過去5年間の発症率は高い

###マラソンまたはハーフマラソン中の心停止発症率は10万人あたり0.54人とのことです。筆者らはこの数字はその他の活動的な身体活動同等かまたははそれ以下であるとしています。事実、以前のブログで扱った一般市民のスポーツ関連突然死のデータでも、100万人あたり4.6人とほぼ同等の発症率を示しています。

原因は肥大型心筋症、虚血性心疾患が多く、男性マラソン走者に多いとのことです。特にこの層の方々がマラソン前にスクリーニング検査を受けておくべきかが最も問題かともいます。そうした事前検査の有効性に関するエビデンズはまだないと思われますが、この論文を見るとちょうど自分が50台男性ですので、自分がもしマラソンをするなら(そういうことは間違ってもないですが)最低限心電図と心エコー、できれば運動負荷心電図は受けようかと思わせます。(アスリートでさえも事前心電図スクリーニングは無効とのデータ(こちら)もありますが。。。)
by dobashinaika | 2012-01-13 22:42 | 心臓突然死 | Comments(0)

心臓突然死の原因としての肥満やアルコール:フィンランドの疫学研究から

Herat Rhythm10月号より

Causes of nonischemic sudden cardiac death in the current era

フィンランドの一般住民コホートを対象とした非虚血性心臓突然死の原因に関する検討

・フィンランドのOulu地区住民約47万人のうち、1998年~2007年の間に心臓突然死をきたした2661例を対象とした
・剖検、カルテ、アンケート等により死因を特定した

・579例(21.8%)が非虚血性心臓突然死だった。残り78%は虚血性
・非虚血性の内訳は年齢平均55歳。男性78%
・肥満(関連心筋症)が23.7%、アルコール性心筋症19.0%、高血圧性心筋症15.5%、線維化心筋症(13.6%)
・40歳未満では線維化心筋症が最も多い(28.3%)
・40-59歳ではアルコール性心筋症が最も多い

結論:今の時代、肥満に関連した心筋症、線維化心筋症、アルコール性心筋症が非虚血性心臓突然死に主に関連していた。40歳未満では線維化心筋症が最も多かった。

###心筋症の分類が通常とは異なるため、注意が必要と思われます。「肥満に関連した心筋症」というのはまだ日本では一般化した疾患概念ではないかもしれません。肥満や虚血性心疾患の多い北欧のデータですが、今後の日本にとっても参考になるかもしれません。
by dobashinaika | 2011-10-15 19:13 | 心臓突然死 | Comments(0)

35歳未満の人(アメリカ軍人)の突然死死因の41%はおそらく不整脈死

Journal of American College of Cardiology 9月12日号から

Sudden Death in Young AdultsAn Autopsy-Based Series of a Population Undergoing Active Surveillance
J Am Coll Cardiol, 2011; 58:1254-1261


1998年~2008年までに死亡しアメリカ国防総省の軍人の死因を検討し、剖検等で心臓疾患が推定し得た例の検討

・18歳以上の現役軍人が対象。10年間で1520万人の軍人のうち14,771人が死亡し、そのうちカルテや剖検で心臓疾患が死因の可能性として断定できたのは902人
・902人のプロフィールが年齢38±11歳。
・10万人年あたりの心臓突然死は男6.7人,女1.4人(p<00001)
・目撃者ありの突然死は68.4%。行軍中の突然死は40%で、35歳未満の方が35歳以上の場合より多い

・死因が器質的心疾患の例は715例79.3%、非器質的心疾患(説明できない死因)が20.7%
・35歳未満は非器質的心疾患が41.3%だったが、35歳以上では73.2%%が冠動脈硬化
・説明できない死因による突然死は35歳未満が10万人年当たり1.2人であるのに対し、35歳以上は2.0人
・冠動脈疾患師は35歳未満が0.7人に対し、35歳以上は3.7人

結論:若年者の突然死予防においては、35歳未満では不整脈死などの(剖検等で)説明できない死因を生前から評価すべきであり、35歳上では冠動脈硬化の評価を強調すべきである。

###心臓以外の多の臓器に剖検等で異常が無い突然死が対象です。スポーツ選手では、以前の論文でも肥大型心筋症や冠動脈起始異常が対象でしたが、一般人(軍人)では原因不明がも最も多いとのことです。この中にはARVCやHCMの初期、Brugada症候群、QT延長症候群、カテコールアミン感受性多形性心室頻拍、WPW症候群などが含まれると思われます。
実際には学校や職場検診などにおけるこれらの疾患の感度と、心電図で同定された場合の対処法が問題です。
by dobashinaika | 2011-09-06 22:32 | 心臓突然死 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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