カテゴリ:心房細動診療:根本原理( 53 )

ABCパスウェイ(心房細動管理の統合的アプローチ法)が提唱されています。

Nature ReviewsにLip先生の,心房細動の統合的マネジメントとして”ABCパスウェイ”が提唱されています。


ABCパスウェイとは,A:脳卒中予防,B:症状の治療,C:リスク因子の管理の3つです。
Aはバーミンガム3ステップと名付けられ,ステップ1:低リスクの同定,ステップ2:CHA2DS2-VAScスコアの評価,ステップ3:SAMe-TTsRsスコアの評価となっています。
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ABCパスウェイの概念は,既に日本では山下先生がだいぶ以前に提唱されたものとほぼ同一ですね。
バーミンガム3ステップは以下のブログを参照してください。

ジェネラリストとスペシャリストの不一致を解消するためのシンプルかつ系統的なストラテジーを目指したものとのことです。
シンプルかつ系統的というのがまさにLip先生らしいと思います。

by dobashinaika | 2017-10-04 23:48 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

医師,患者に対する質の高い多面的な教育介入により,抗凝固薬の処方は増加する:Lancet誌


疑問:心房細動の抗凝固療法において多面的な教育介入は良いのか?

方法:・2アーム,前向き,国際比較試験
・心房細動で抗凝固療法適応患者
・介入群:質の高い教育的介入
・対照群:通常のケア
・主要アウトカム:1年後の抗凝固薬処方の変化.
・副次アウトカム:脳卒中

結果:
1)2281人:5カ国(アルゼンチン,ブラジル,中国,インド,ルーマニア),48施設

2)平均追跡期間:12ヶ月

3)抗凝固薬処方増加率:
介入群68→80%
通常群64→67%

4)絶対減少:9.1%,オッズ比:3.28,p=0.0002

5)脳卒中:介入群オッズ比0.48 (95%CI 0.23-0.99, p=0.043)
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解釈:抗凝固薬処方増加を目的とする,心房細動患者に対する多施設,多面的教育介入が,抗凝固薬の処方割合を明らかに増加させた。こうした介入は,世界中の心房細動患者における脳卒中予防促進の可能性を持っている。

ファンド:Bayer, Boehringer Ingelheim, Bristol-Myers Squibb, Daiichi Sankyo, and Pfizer

### 介入群での介入内容は,患者,家族に対する,教育的パンフ,ウェブまたはビデオによる教育資料。および医師,看護師,ヘルスワーカー,その他のスタッフによる患者,家族への抗凝固薬のリスクベネフィットに関する動機づけ。各ヘルスプロバイダへのガイドラインにおける推奨についてのシステマティックレビューの配布、Eメールやwebセミナー,ポッドキャスト,専用モノグラフ,ソーシャルメデイア,インスタントメッセージ,電話等による抗凝固薬情報の提供
などどのことです。

multifaceted,つまり多面的な教育介入とは,パンフ,ウェブ,ビデオなど駆使して患者さん,ご家族に抗凝固薬についての情報を提供するの当時に,医療従事者にもガイドラインや論文などをポッドキャストなどまで動員してその適応つき啓蒙すると言った内容です。

たしかに,抗凝固薬投与開始時には,そのリスクべネフィトから飲み方に至るまで,非常に多くの情報についての説明が必要になります。診察室での医師からだけの通リ一辺の説明よりも多職種から,各種メディアqを多用しての,多面的なアプローチのほうが印象に残り,抗凝固薬処方へのモチベーションが上がるのは当然と思われます。

同様の,質の高い介入を看護師がすることでのアウトカム改善についての研究もあります。

これからは抗凝固療法(あるいは全ての医療行為)についての情報提供は,医師だけによるモノトーンなものから,ITを駆使しての,多職種による多面的なものが求められるものと思われます。

$$$ ダビンチとミケランジェロのデッサンに会ってきました。デッサンといえども,手を伸ばすと柔らかな肌をすぐにでも感じ取れるような,そして今にも絵からこちら側に飛び出てきそうな生身の”ひと”がそこにいました。全身鳥肌感動が瞬時に味合える幸せ。
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by dobashinaika | 2017-09-21 00:23 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2016年心房細動関連論文ベスト5


今年も恒例の心房細動論文ベスト5です。
年々抗凝固薬関連の論文もエポックメイキングなものが減りつつあり,また個人的にブログ更新が少なかったこともあって,例年に比べ,カバーしている論文は少ないかもしれません,その点ご容赦ください。

視点はあくまで,私個人の現場に行動変容を起こさせるかどうかで決めております。

第5位:CHA2DS2-VAScスコア2点以上ではアブレーション後も抗凝固はやめないほうが良い
2点以上かどうかには論議の余地がありますが,かなり参考にすべき論点と思います。
JAMA Cardiol. Published online November 23, 2016. doi:10.1001/jamacardio.2016.4179


第4位:心房細動の死因は突然死や心不全が多く,脳卒中は少数
その他にも同様の報告が数多く出てきており,すでにポスト抗凝固時代と言ってよいかと思います。
JACC Volume 68, Issue 23, December 2016 DOI: 10.1016/j.jacc.2016.09.944

第3位:抗凝固薬を中止すると血栓塞栓症リスクは20倍に増加
とくにNOACをやめてしまう場合,非常にリスキーになるということを明示してくれた教訓的な論文
PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0156943 June 9, 2016

第2位:抗凝固療法家の血圧は136mmHg未満にすべき
これまでのBAT研究では130/85でちょっと厳しいかと思っていました。ちょっと安心できるデータ。
J Am Heart Assoc.2016; 5: e004075originally published September 12, 2016

第1位:欧州心臓病学会のガイドライン改定
より多職種で,包括的にマネージメントするというコンセプトが明確に打ち出されました。
こうした斜め45度からの視点を提示できるESCには大リスペクトです。
また,PCI後の抗凝固,脳梗塞後の抗凝固など臨床上欲しかった指針も明確してくれていて,大助かりです。
2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS

番外編(次点)
・ポリファーマシーほど抗凝固薬による出血が増える
これも臨床でよくよく考えないといけないポイント
Polypharmacy and effects of apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation: post hoc analysis of the ARISTOTLE trial
BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i2868 (Published 15 June 2016)


・90歳以上の人への抗凝固療法のリスクと効果
意外と出血より塞栓症が多いということを知っておく必要がある
Risk of Bleeding and Thrombosis in Patients 70 Years Or Older Using Vitamin K Antagonists
JAMA Intern Med. Published online July 05, 2016.


・NOACの大規模リアルワールドデータ
多くのRWD(リアルワールドデータ)が続々でてきました。概ねRCTに準じるような内容です。
Comparative effectiveness and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study
BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i3189 (Published 16 June 2016)


もっと番外編(開業医にはそれほどピンとこないが,世の中的にはインパクトがあるだろう等と思われるもの)
・PCI後のNOACとワルファリンの比較(PIONEER−AF試験)
話題の論文ではありますが,読めば読むほど日本の日常臨床への適応に難しさと疑問が湧いてくる気も致します
http://dobashin.exblog.jp/23369564/

・クライオアブレーションの効果と安全性
http://dobashin.exblog.jp/23369564/

・Xa阻害薬の中和薬
http://dobashin.exblog.jp/23251422/

・アブレーションが心房細動の予後も改善する
http://dobashin.exblog.jp/22772859/

### ということでこう振り返ってみると今年はリアルワールドのデータ,それも臨床に役立つお役立ちな論文が意外と多かったように思います。
来年からも現場役立ち度の高い論文をセレクトして読んでいこうと思います。

$$$ 様々な名言を残した真田丸も来週最終回ですね。黙れ小童とずんだ餅にしびれました。
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by dobashinaika | 2016-12-11 22:28 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

どうすれば心房細動にならないか:欧州の学会からの提言:Europace誌


欧州不整脈協会 (EHRA)/欧州心血管及びリハビリテーション協会(EACPR)による心房細動予防に関するポジションペーパーです。
米国,アジア太平洋の各不整脈学会からも支持を受けています。

European Heart Rhythm Association (EHRA)/European Association of Cardiovascular Prevention and Rehabilitation (EACPR) position paper on how to prevent atrial fibrillation endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia Pacific Heart Rhythm Society (APHRS)
Europace doi:10.1093/europace/euw242


サマリーの表を日本語訳します。

<心房細動予防に関するコンセンサスステートメントI:危険因子とライフスタイルの変容(各危険因子/トリガーと臨床上の推奨)>

肥満
体重過多/肥満患者は,心房細動発症のリスクとそれに続く脳卒中及び死亡のリスクがより大きいことを伝える
BMI超過または肥満の場合は,BMIの評価とライフスタイルプログラムを開始する

ダイエット
心房細動予防のために,健康的な食事とライフスタイルを勧める
オリーブオイルリッチな地中海ダイエットは心房細動とその合併症を減らす

血清脂質,魚類摂取
低HDL(40以下)と高中性脂肪(200以上)は,心房細動とその合併症のリスクであることを伝える
脂質異常症患者には,野菜,果物,全粒穀物(低脂肪食,家禽,魚,豆,非熱帯性野菜油,ナッツ)の摂取,スイーツ,果汁飲料,赤肉の制限を勧める

閉塞性睡眠時無呼吸
閉塞性睡眠時無呼吸の患者は心房細動とその合併症リスクが高いことを知らせる
いびき,日中の疲れなどのOSAの可能性のある問診により評価。必要なら専門施設に紹介

高血圧
管理不良な高血圧は心房細動リスクに関連あり
リスクを適切に評価する
心房細動リスクを減らすために血圧をコントロールする

糖尿病
糖尿病の長期罹患と血糖管理不良じは心房細動リスクを増加させる
心房細動リスクを減らすために糖尿病をコントロールする

喫煙
子供,若者,老人に喫煙しないよう強く指導する
喫煙者には禁煙開始をサポートする
根源的予防:喫煙を開始しないためのの努力をサポート
一次予防:喫煙中止の支援
二次予防:心房細動の頻度,持続時間,症状を軽減するための禁煙

大気汚染
慢性暴露による関連はない;心房細動になりやすい患者はシビアな大気汚染は避けるべきである

カフェイン
リスクは増えない。ヘビー摂取者であってもむしろ減らす

アルコール
中等度〜大量接摂取及び大酒家は心房細動リスクが増加
大量飲酒(1機会で4杯(女性)または5杯(男性)以上
1日2杯以上(男性)または1杯以上(女性)飲まないように指導
アルコール消費の詳細な病歴を聴く

薬剤
多くの薬剤が心房細動を増加させる
20%以上:ドブタミン,シスプラチン,
5〜20%;アントラサイクリン,メルファラン,インターロイキン,NSAIDS,ビスフォスフォネート,
5%未満:アデノシン,鉱質ステロイド,アミノフィリン,向精神薬,イバブラジン,オンダンセトロン
心房細動新規発症患者の薬歴を調べ,影響がないか見極める

レクレーショナル ドラッグ
大麻,ecstasy and anabolic–androgenic steroidsは心房細動リスクを増やす
新規発症では,それらの服薬歴を調査する
やめるように説得する

精神的ストレス
明らかなストレス,特にうつ,不安を明らかにし,適切に治療することが,不適切な生活スタイル選択 (喫煙,アルコール多飲,過食,運動不足)やアドヒアランス低下を避けることになる。それらの放置は心房細動周辺の他のリスクや慢性疾患へと進展する

身体活動
毎日の中等度の運動を勧める

<心房細動予防に関するコンセンサスステートメントII:合併疾患の管理>

甲状腺機能亢進症
顕性及び不顕性甲状腺機能亢進症は心房細動リスクを増やす
甲状腺機能をコントロールする
合併心疾患と危険因子を治療する

上室性頻拍 (SVT)
SVTと発作性心房細動合併例ではSVTをアブレーションし,必要なら心房細動に対し薬剤投与またはアブレーションを施行する
孤立性心房細動ではSVTが下地に無いかをチェックする

術後心房細動
β遮断薬とアミオダロンを用いる

アップストリーム治療
なし

<心房細動予防のためのライフスタイルアプローチ>
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適度な運動
健康的な体重
タバコ,レクレーションドラッグの中止
アルコール減量
その他:ライフスタイルの積極的変容,血圧管理,糖尿病管理,肥満治療,閉塞性睡眠時無呼吸の治療

### 心房細動のみならず全ての動脈硬化性疾患に当てはまる内容です。

アルコールは中等量でも良くない。大気汚染は今のところ関連はない,NSAIDs,ビスホスホネートなどにも注意,などが目につきました。

$$$ポーラ美術館展。印象派以降の美術史のおさらいでした。
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by dobashinaika | 2016-11-07 22:30 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その5:知っておいきたい心房細動の基礎知識


新ESCガイドラインのピックアップ5回め
心房細動基礎知識編です。

【心房細動に伴う死亡率,合併症とその頻度】
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「認知機能低下」が新たに加わっています。
心房細動の人の死亡原因は1位心不全(30%)で脳卒中は2位(8%)というのも押さえておきたいところです。
http://dobashin.exblog.jp/23110956/

【心房細動のスクリーニング】
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これまでどおり65歳以上の人全員の診察ごとの脈拍測定のほかに,脳卒中の既往ある人,75歳以上,高リスク者で頻回に心電図を取ることが推奨されいます。

【心電図の分類】

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以前と同じ。「長時間持続性」があるのがESCの特徴

【臨床上のタイプ】
・器質的心疾患に合併した心房細動
・限局性心房細動 (Focal AF)
・複数の遺伝子バリアンスによる心房細動
・術後心房細動
・僧帽弁狭窄症/人工弁合併心房細動
・アスリートに合併した心房細動
・単一遺伝子による心房細動

【Modified EHRA 症状スコア】

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あらたに「2b=moderate:中等度」すなわち「生活制限はないものの苦痛ではある」という概念が導入されています。「2a=mild:軽症。生活制限なし」と違いが微妙です。動悸はうざいけどまあ作業をやめるほどではない」という程度でしょうか。

【心房細動の発生に関連する因子】
・遺伝的素因(HR 0.4-3.2)
・高齢(HR4 4.98-9.33)
・高血圧 (HR 1.32)
・心不全 (HR1.43)
・弁膜症(RR 2.42)
・心筋梗塞 (HR 1.46)
・甲状腺機能不全 (HR1.42)
・肥満 (HR1.37)
・糖尿病 (HR 1.25)
・COPD (RR 1.28-2.53)
・閉塞性睡眠時無呼吸 (HR1.28-2.53)
・慢性腎臓病 (RR 2.67-3.52)
・喫煙 (1.32-2.05)
・アルコール (1.01-1.39)
・習慣的,強力なエクササイズ (0.09-1.20)

### ESCの新GLシリーズもだんだん飽きてきましたね(笑)。最後に最も大切な「基本コンセプト」が残っています。全体を眺めてみてふと思うのは,将来AIが普及し,各種スコアがもっと細分化され,NOACがより席巻し,多職種共同作業が日常化したら、心房細動診療にもはや医師の出る幕はなくなるかもしれない、ということ。

その時こそ,ワルファリンが扱える匠としてw登場したいものです。

$$$ 本日大漁日。ただそろそろ全体に小ぶり化してきています。
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by dobashinaika | 2016-09-02 22:13 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その4:心房細動管理17のポイント


新ESCガイドラインピックアップの4回め
末尾についている,全体のショートサマリーです。
現場にとっては大変ありがたいです。

1.心房細動高リスク者ー特に脳卒中サバイバーと高齢者ーで心電図スクリーニングを行う

2.治療前に心電図を記録する

3.心電図,心エコー(ベースの心血管疾患サーベイ:高血圧,心不全,弁膜症など)を評価する

4.心房細動を自ら管理できるように,個別の情報を伝え,教育する

5.管理をより効果的にするためのライフスタイル変更を提案する

6.基礎心疾患の適切な治療をおこなう:弁形成,弁置換,心不全治療,高血圧治療

7.CHA2DS-VAScスコア低値または禁忌症例以外は抗凝固薬を使う

8.心房粗動も心房細動と同様に扱う。症状があれば峡部アブレーション

9.出血リスクを軽減する:血圧管理。抗血小板薬,NSAIDの使用期間,量の低減化。貧血の治療。出血源の治療。INR安定化,適正なアルコール

10.心拍数のチェックをし,緩徐なレートコントロールをおこなう

11.EHRA症状スコアを使っての症状を評価する。症状ある場合はレートコントロール,抗不整脈薬,除細動,アブレーションなどで症状緩和を図る

12. 安全性に基づいて抗不整脈薬を選択する。効果ない場合のアブレーション

13. 遺伝性疾患を疑わい場合の心房細動に関する遺伝情報検査をしてはならない

14. 心原性脳塞栓予防に抗血小板薬を用いてはならない

15 多職種チームでの意思決定なしに高リスク患者が抗凝固薬をやめてしまってはいけない

16 無症状の患者または永続性心房細動にリズム管理をしてはならない

17. 経食道エコーで心内血栓をルールアウトすることなく,抗凝固薬なしで除細動またはアブレーションをしてはならない

by dobashinaika | 2016-09-01 19:16 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

米国の主要学会による心房細動患者に行うべき医療行為と評価のまとめ:JACC誌

Atrial Fibrillation or Atrial Flutter Clinical Performance and Quality Measures
Heidenreich PA, Solis P, Estes NA III, et al.

ちょっとブログの方お休みを頂いておりました。また今月から再開いたします。
ACC/AHAから心房細動/心房粗動に関する臨床行為と評価に関するまとめが発表されています。
欧米の学会はこうした現場目線の指針を出してくれるのがありがたいです。日本では学会でなく,各分野のオピニオンリーダーと呼ばれる方が商業ベースで解説本を出して,その代わりとなっている感があり,それはそれでわかりやすいのですが,やはり多くの叡智が結集されての現場に即したハンドブックがほしいように思います。

本文は表形式でやや読みにくいのですが,ACCのメルマガが,外来,入院別に行為と評価に分けて4項目でまとめてくれていますので紹介します。
元論文はこちら

2016 ACC/AHA Clinical Performance and Quality Measures for Adults With Atrial Fibrillation or Atrial FlutterA Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Performance Measures
J Am Coll Cardiol. 2016;():. doi:10.1016/j.jacc.2016.03.521

1.行うべき行為:入院患者
・退院前にCHA2DS-VAScスコア評価
・退院前に抗凝固薬処方
・ワルファリン投与患者では退院前にPT-INR測定

2.行うべき行為:外来患者
・CHA2DS-VAScスコア評価
・抗凝固薬処方
・ワルファリン患者では月1回の1PT−INR測定

3.行うべき評価:入院患者
・退院前にβ遮断薬処方(LVEF<40)
・退院前にACE阻害薬/ARB処方(LVEF<40)
・永続性心房細動のリズムコントロールとしての抗不整脈薬の不適切処方がないか
・透析または末期腎不全患者へのドフェチライドまたはソタろールという不適切処方がないか
・人工弁患者への直接トロンビン阻害薬またはXa阻害薬という不適切処方がないか
・冠動脈疾患and/or弁膜症のない症例での抗血小板薬+抗凝固薬の投与がなされていないか
・EF低下心不全に対する非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が出ていないか
・カテーテルアブレーション後に抗凝固療法がなされているか
・抗凝固療法について,患者と医師でShared decision makingがなされているか

4.行うべき評価:外来患者
・β遮断薬処方(LVEF<40)
・永続性心房細動のリズムコントロールとしての抗不整脈薬の不適切処方がないか
・透析または末期腎不全患者へのドフェチライドまたはソタトールという不適切処方がないか
・人工弁患者への直接トロンビン阻害薬またはXa阻害薬という不適切処方がないか
・人透析または末期腎不全患者への直接トロンビン阻害薬またはXa阻害薬(リバーロキサバン,エドキサバン)という不適切処方がないか
・冠動脈疾患and/or弁膜症のない症例での抗血小板薬+抗凝固薬の投与がなされていないか
・EF低下心不全に対する非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が出ていないか
・抗凝固療法について,患者と医師でShared decision makingがなされているか

###極めてまっとうなことを言っていると思われます。β遮断薬や入院中のACE,ARBはそうなのかとも思いますが,あとはどれもおさえておくべき内容です。
それにしてもACC/AHAもCHADS2でなくてCHA2DS-VASc重視になったのですね。

$$$今週日曜の猫祭りで仕入れた猫スイーツ。壮観です^^
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by dobashinaika | 2016-07-01 17:40 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

ケアネット連載「心房細動診療の4本目の柱:包括的リスク因子管理」更新いたしました

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「第56回 Xa因子阻害薬の中和薬:Andexanet Alfaの臨床試験」
「第57回 心房細動診療の4本目の柱:包括的リスク因子管理」の2つです。

NOACの中和薬が出る日も近いかもしれません。

また心房細動の診療の4本柱とは
1)抗凝固療法 
2)リズム管理
3)レーチ管理
4)包括的リスク因子の修飾
です。その4つめについての論文です。

ご笑覧ください。

$$$ 毎朝の散歩。この季節,緑と花々に会えるのが楽しいですね。
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by dobashinaika | 2016-05-20 21:23 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2015年,心房細動関連論文ベスト5

こちらはケアネットにも公開したオフィシャルな?ベスト5です。

例年通り,世の中へのインパクトではなく,私およびプライマリ・ケア医の「現場に直接影響がある」という視点で選んでいます。

第5位;薬剤師の介入によるダビガトランのアドヒアランスの改善
Supriya Shore et al: Site-Level Variation in and Practices Associated With Dabigatran Adherence. JAMA. 2015;313(14):1443-1450
http://dobashin.exblog.jp/21124661/
その後の当院での抗凝固薬管理に大きな影響を与えた論文です。診療所の外来においても,医師だけでなく多職種で構造的,包括的に疾病を管理する視点を再確認しました。

第4位:日本の医療施設における新規経口抗凝固薬服用中の頭蓋内出血の特徴
Naoki Saji et al: Intracranial Hemorrhage Caused by Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants (NOACs) – Multicenter Retrospective Cohort Study in Japan –. Curculation Journal 2月20日
http://dobashin.exblog.jp/20931826/
日本の脳血管疾患専門施設のリアル・ワールドデータで大変貴重です。日本のNOAC内服下での頭蓋内出血は従来の報告や諸外国の登録研究と比べても軽症であることが示されています。

第3位:多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり
Bjørn Strøier Larsen et al: Excessive Atrial Ectopy and Short Atrial Runs Increase the Risk of Stroke Beyond Incident Atrial FibrillationJ Am Coll Cardiol. 2015;66(3):232-241
http://dobashin.exblog.jp/21672961/
時々出会う心房期外収縮多発例。やはり注意が必要。

第2位:NOACのリアル・ワールドにおける消化管出血リスク
Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study
BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1857
http://dobashin.exblog.jp/21195302/
とくに高齢者では先行発売されているNOACの消化管出血に要注意ということをしっかりと押さえておくべきということだと思われます。

第1位:心房細動患者の手術時ヘパリンブリッジの血栓塞栓率は非施行群と同じ。出血は多い
James D. Douketis et al:Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation. NEJM June 22, 2015
http://dobashin.exblog.jp/21378213/
この論文のインパクトは大きかったと思われます。これまで当たり前のように,疑いもせずに行ってきた治療の中,いかにエビデンスに乏しく検証されていないものが混じっているか,改めて考えさせられます。

次点(順不同)
心房細動脳卒中の生存期間は1.8年(中央値):Neurology誌
http://dobashin.exblog.jp/21346427/

日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:chest誌
http://dobashin.exblog.jp/21477250/

ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効:J-RHYTHMレジストリーサブ解析:CJ誌
http://dobashin.exblog.jp/21610935/

心房細動関連脳卒中の5年生存率は39%:Stroke誌
http://dobashin.exblog.jp/21764539/

日本の大規模コホートでは心房細動のイベント予測因子はCHADS2スコアとやや違う:PLOS one誌
http://dobashin.exblog.jp/21820445/

NOAC導入時の出血、血栓塞栓イベントはワルファリンと有意差なし:Circ誌
http://dobashin.exblog.jp/21480675/

心房細動患者の脳卒中リスク予測はATRIAスコアが最適:JACC誌
http://dobashin.exblog.jp/21893263/


次点が多くてすみません^^

NOAC(DOAC)のリアルワールドデータが出てきて,どのようなときに注意したら良いかの全貌が明らかになってきた感があります。

そんな中で,今後はますます認知症,フレイル,多職種共同,multimobidityと言ったキーワードが軸になっていくように思います。

日々論文を追っていくと,それまで日常的に行ってきた医療行為への信頼性が大きく揺らぐ瞬間出会ったりします。こうした出会いがエビデンスを読み解く楽しみでもあります。

今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。
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by dobashinaika | 2015-12-28 21:22 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2015年,心房細動関連私的お気に入り論文ベスト7

引き続き2015年心房細動関連論ベストです。
今回は「私的ベスト7」です。
医学全体への寄与度というよりも,個人的な好みで選んでいます。番号は便宜上のもので順位ではありません。

1.薬(心血管系薬剤)を飲みたくない理由:NEJM誌
http://dobashin.exblog.jp/20693106/
薬を拒否する患者心理についての考察です。だいたい薬が嫌な理由として以下のような点が挙げられています。どれもなるほどと思いますね。
・リスク(可能性)は大きく、ベネフット(確率)は小さく見積もられやすい
・「薬=化学物質はとりたくない。自然のものは良い」という感情
・手術やカテーテルでもう治ってしまったという錯覚
・薬を飲んで一時症状(や検査結果)が良くなったのでやめられる
・医者に行きたくないのでやめる
・「病人」というレッテルをはられたくない
・飲むと依存症になってしまう
・薬はコントロール出来ないものである→薬でなくてダイエットや運動のみで治したいという願望

2.不適切なポリファーマシーを減らす:Deprescribing=減処方のプロトコール:JAMAIM誌
http://dobashin.exblog.jp/21082119/
すっかりトピックになったポリファーマシー。わかりやすく5ステップで論じています。
1.全薬剤のリストアップと処方理由の確認
2.各薬剤の有害事象がどのくらい起きやすいかを考える
3.中断が妥当かどうかを考える
4.中断の優先順位付けをする:利益と害、中断しやすさ(リバウンドのなさ)、患者の希望
5.実際のプラン作成とモニタリング

3.コーヒーは少なくとも心房細動リスクを上げることはない:BMC Medicine 誌
http://dobashin.exblog.jp/21721111/
これもすっかりトピックになたカフェインですが,最近は心房細動予防に良いとの報告もあります。「○○が体に良い」かどうかの判断は必ず,用量がどのくらいかを抑えるのがポイントと思われます。

4.日本の患者は、抗凝固薬による出血を米国の患者ほど怖がらず,医師が考えるよりも寛容
http://dobashin.exblog.jp/21322421/
そうかなという気もしますが,医師の指示に従順であるということかもしれません。

5.心房粗動でも心房内血栓は少なくない:Europace誌
http://dobashin.exblog.jp/21302208/
これは実臨床にもかなり役立ちます。粗動はどうするか,は勉強会などで常に出る質問ですね。

6.心房細動に対する代替療法ーヨーガ、鍼、バイオフィードバックなどの総説:JTD誌
http://dobashin.exblog.jp/20897810/
代替療法も様々ですが,自律神経活動への関与度がキーかと思われます。

7.老人ホーム入居中の超高齢者への抗凝固療法:J Am Geriatr Soc誌
http://dobashin.exblog.jp/20790498/
老人ホーム入居中の超高齢者コホートでの心房細動有病率は高く,抗凝固薬処方率は高リスクにもかかわらず50%未満とのこと。ADL/IADLの低い人の脳塞栓予防をどう考えるか,これ医療というより倫理の問題です。

$$$一足早く年越しぞば。ここは有名なお店ですね。
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by dobashinaika | 2015-12-28 21:05 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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