2017〜2018年心房細動のトピックスまとめ(2):心房細動の診断,予防:ESC The year in cardiology 2017より

ESCのまとめその2です。



<心房細動の診断とその影響ー隠された事実>

・何を心房細動と呼ぶのか,心房頻拍がどのくらい続いてどのデバイスで検出されれば心房細動と呼んでいいのか。こうした問に対するエビデンスは驚くほど少ない
・各種デバイスでは心房細動が数秒から数日記録されるが,それが脳卒中にどの程度関与するのだろうか?
ASSERT試験では24時間を超えるエピソードが,脳卒中リスクに関係していた1)
REVEAL試験ではループレコーダーによる385例,22.5ヶ月のモニターで30日間では6.2%,24ヶ月では33.6%の心房細動を記録できた2)
・原因不明脳卒中対象のCRYSTAL-AF試験でも同様の結果だった3)
・ただし,脳卒中の既往があってもなくても短時間のAFエピソードの頻度は同じなので,こうした短いエピソードが脳卒中の予測因子となるか,あるいは抗凝固薬の必要性を示唆するのかと言った疑問が湧いてくる
・現時点でこの疑問に対する試験としてARTESiA試験(アピキサバン)およびNOAH試験(エドキサバン)が走っている4,5)
・これらはデバイスで記録される短時間の潜因性AFを持つ症例において,NOACが標準治療に比べ勝っているかを検証するものである
・CHA2DS2-VAScスコア同様種々のバイオマーカーもイベントの予測因子であり,抗凝固薬開始の指標となりうる6)が,RCTが待たれる
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<どうしたら洞調律でいられるか?ーアップストリーム治療がカギか?>

・生活習慣改善は心房細動治療のコーナーストーンとなるかもしれない
LEGACY試験,CARDIO FIT試験(オーストラリア発)は厳格な運動と体重減少が肥満者(BMI>27.抗不整脈薬ありあるいはアブレーション後)の心房細動再発を抑制することを報告している7,8)
RACE3試験は,このコンセプトを症候性で早期の心不全合併持続性心房細動に絞ってて適応し,この程度の患者に対する早期の強力な介入が,リモデリングや再発を遅らせるかどうかに焦点を当てている9)
・除外基準:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)既服用,左房径>50mm,NYHA IV, LVEF<25%
・アップストリーム群:ACE阻害薬/ARB,MRA,スタチン,心リハ,ダイエット強化療法,運動継続,服薬アドヒアランス維持
・対照群:従来からの治療。心リハ,強化療法なし
・3週間後カルディオバージョン
・結果:1年後の洞調律:アップストリーム群75%vs 対照群63% (P=0.02)
・介入により血圧,NT=proBNP,LDLコレステロールは減少LVEF, 左房径は不変
・複合エンドポイント(心血管合併症,死亡)は低下したが両群で差なし

1)Duration of device-detected subclinical atrial fibrillation and occurrence of stroke in ASSERT.Eur Heart J 2017;38:1339–1344.

2)Cryptogenic stroke and underlying atrial fibrillation.N Engl J Med 2014;370:2478–2486.

3)Cryptogenic stroke and underlying atrial fibrillation.N Engl J Med 2014;370:2478–2486.

4)Rationale and design of the apixaban for the reduction of thrombo-embolism in patients with device-detected sub-clinical atrial fibrillation (ARTESiA) trial.Am Heart J 2017;189:137–145.

5)Probing oral anticoagulation in patients with atrial high rate episodes: rationale and design of the non-vitamin K antagonist oral anticoagulants in patients with atrial high rate episodes (NOAH-AFNET 6) trial.Am Heart J 2017;190:12–18.

6)A biomarker-based risk score to predict death in patients with atrial fibrillation: the ABC (age, biomarkers, clinical history) death risk score.Eur Heart J 2017.

7)Long-term effect of goal-directed weight management in an atrial fibrillation cohort: a long-term follow-up study (LEGACY).J Am Coll Cardiol 2015;65:2159–2169.

8)Impact of cardiorespiratory fitness on arrhythmia recurrence in obese individuals with atrial fibrillation: the CARDIO-FIT study.J Am Coll Cardiol 2015;66:985–996.

9)van Gelder et al. presented at ESC 2017

###  Subclinical AF,いわゆる検出されていないAFをデバイスで見つけ出してそれに抗凝固薬を投与することがよいのか? これは難問ですね。今回の指摘のように,AFの持続時間をどの辺で線引するか,検出期間をのどのくらいに設定するかでだいぶ違ってきます。ASSERT試験では,24時間超えのAFで有意にイベントが多かったということで,ホルターなどで数十分のAFが見つかったからと言って,すぐに抗凝固に行くかは現時点では慎重さが要求されるかもしれませn。

RASE 3試験は学会発表だけですが,アップストリームなんかダメだ,と思っていたところに,早期の強化介入が良さそうであることを示唆してくれています。しかしかなりの努力が必要そうですね。お金も掛かりそうです。しかもここでも,アウトカムにSubclinical AFがどう関わってくるのかが不明。そう考えるとまだまだ私たちはAFの予防とか制圧の日も近い!なんて言える段階ではないのと思わされます。

$$$ どうしても欲しくて買ってしまいました。当院の守り神にしたいと思います(作成にすごい苦労しました(笑))
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by dobashinaika | 2018-01-07 00:28 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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