「もう怖くない! 心房細動の抗凝固療法」Amazonで予約開始いたしました。

すでに宣伝したところで恐縮ですが、拙著

もう怖くない! 心房細動の抗凝固療法プライマリ・ケア医のためのシンプルアプローチ」

本日からAmazonで予約開始となりました。

この数年間でブログに書き溜めたものに加筆修正を加え、プライマリ・ケア外来、専門医、研修医、薬剤師、看護師、その他の医療職、介護職全ての方の参考になるように書いたつもりです。

序文を転載いたしますので、お読みいただければ幸いです。
折しも、NOACのリアルワールドデータも大量に出揃い、抗凝固療法については世界的に見ても安定期に入ってきているという印象があります。全体的にはNOAC中心の潮流なのかと思われますが、そんな中で今更ですが。ワルファリンにも熱い目を向け、少し大きな視点からこの分野を眺めたつもりです。
個人的には心房細動抗凝固療法に関するタスクは一応、これを持ってひと段落と考えております。
(ブログはまだ継続します^^)

一人でも多くの方の、日常診療上のお役に立てれば幸いに存じます。

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### はじめに
─ エビデンス,患者世界と現実世界とのギャップを埋めるには?─

2010年の後半からブログ「心房細動な日々」を本格的に書き始めました.心房細動に関する論文をとにかく片っ端から読んで,アブストラクトを日本語に訳し,コメントを入れ,毎日のように更新しました.
 初めは「若いころから慣れ親しんできた心房細動について,読んだ論文をまとめよう」くらいの軽い気持ちでした.最初は,おとなしく日本語訳のみを書き残していましたが,始めて数ヶ月くらいから心房細動について語りたくて仕方がなくなり,いつのまにか語ることが楽しくなっていることに気がつきました.気鋭の哲学者,千葉雅也氏が「勉強の哲学」(文藝春秋)で指摘した「享楽的こだわり」の状態です.
 ところが,さらに論文を読み進め,批判的吟味を加える作業を毎日行っていると,ひとつひとつのエビデンスに対してどんどん懐疑的になり,ひいてはエビデンスと現実世界とのギャップを痛切に感じ続ける日々がやってきました.「この論文のこういう問題点が目の前の患者さんには適応できない」,たくさん論文を読んで心房細動オタクになるほど,そうした論文の限界だけが目について患者さんに適応できず,現実世界から遠ざかっていく,そのギャップを埋めるべくまた論文を読んでいく,という,たちの悪い堂々巡りでした.この悪循環を断ち切るには,千葉雅也氏も言うように,あるところで自分なりに主観的に,エビデンスと現実世界の比較を「中断」する作業が必要となります.中断して自分なりに「まぁこんなところだろう」と決めるのです.
 さて,この中断作業には患者さんの病態や心房細動治療への思いや,その人の文脈を理解することが不可欠と思われますが,患者さんの世界を理解することにも上記の「中断」が必要であることに気がつきます.患者さんを含め他者の内面を完全に理解することは不可能です.「この人はこう思っているのだろう」とある時点で理解の追求を中断しないことには,処方箋の一枚も書けなくなります.
 ブログを開始して約7年,ここに来てようやく,日々の診療とはこのように論文世界や患者世界をとことん追求することではなくて,自分なりの思いに基づいてその追求を中断し,現実的な決断をつける営みであるということに気がついたのです.「世の中も患者さんも,決して100%わかることはできない」ということがわかったわけです.そしてそうした中断の中で,現実的な着地点を見つけ出すことにこそ,医療の楽しみがあるということも…….
 ただ,やはりこうした着地点の発見にはある程度の指標が必要かもしれません.「抗凝固薬のここが知りたい.でも論文にもガイドラインにも書いていない」,診察室でそういう思いを抱く医師は多いのではないでしょうか.抗凝固薬には,まだまだどう対処してよいかわからない問題がたくさんあります.
本書は,あくまで診察室で日々悩む医師の視点から,多くのプライマリ・ケア医が抱く抗凝固療法に関する日常的な細やかな疑問に対して,できるだけ現実的に対応することに主眼を置きました.また専門医の先生が読んでも,読み応えがあるように,最新のエビデンスやガイドラインも網羅したつもりです.そして,今まで述べたようなエビデンスと現実世界,ひいては患者さんと医師のギャップを埋めるために何が必要かという視点を貫くように心がけました.
 そのため,これまで出版されている抗凝固薬に関する書籍に比べると,生物社会心理的なアプローチや,専門医の先生からはお叱りを受けるような見解が記載されているかもしれません.しかし一方で,ワルファリンの細かな調整法から在宅認知症患者さんの抗凝固療法に至るまで,「かゆいところに手が届く」ように項目を設定しています.
 上記のようなアプローチには,家庭医療学のコンセプトが欠かせませんでした.医療福祉生協連家庭医療学開発センターの藤沼康樹先生には,各種セミナーやFacebook等を通じて多くのインスピレーションをいただきました.また文光堂の小柳健さんには,本書の企画から出版に至るまで,多くのアドバイスを頂きました.この場をお借りして厚く御礼申し上げます.
 ブログ「心房細動の日々」はこのような変遷を続けながら,これからも続けていくつもりです.本書が7年にわたるブログの現時点での集大成として,先生方の「中断」と「着地点の発見」の一助になれば幸いです.

2017年7月
小田倉弘典








by dobashinaika | 2017-08-23 18:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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