NOACのリアルワールドデータはこう読む:JAMA総説


NOAC観察研究に関する総説。Lip先生一派から

・RCTでは限られた集団対象のため,観察研究が行われている
・しかし観察研究は薬剤の適応基準,用量,薬剤選択,アドヒアランスに問題あり
・RCTでは同定できない潜在的な安全性を明らかにできる可能性あり

<観察研究の種類>
1.職能的,社会的に企画された登録研究(EORP,NCDR PINNACLE),企業ファンド登録(GARFIELD,ORBIT-AF)
・前向き,予めエンドポイント設定,厳密なデータ管理
・患者は限定された分野(循環器プラクティスなど),ICや処方管理がアドヒアランスに影響与える
・ミッシングデータあり

2.ヘルスケアや医療保険ベースの全国的登録研究
・選択,除外基準がなく選択バイアスは最小限
・後ろ向き研究であり,アウトカムの定義が不正確,データミッシング,INRなど測定されない,OCTがまじるなどの欠点
・”健康な”OAC服用者を減らすため,対象はほとんど新規投与患者に限られる
・交絡バイアスを減らすため,多変量解析,プロペンシティースコアマッチなどが施行される
・PSマッチングは好まれるが,Nが小さいと大量の不適合者が出る
・追跡期間は90日から2年に渡る

<観察研究での出血率>
・アピキサバン:2.29−2.38%/年(ARISTOTOLEは2.13%)
・ダビガトラン:2.04-3.60% (RELYは150mgx2;3.11% ,110mgx2:2.17%)
・リバーロキサバン:2.90−6.0%(ROCKET-AFは3.60%)
・全体としてワルファリンより大出血は少ないか同等
ワルファリンの大出血率;対ダビガトランでは3.58−4.46%,対リバーロキサバン3.40−5.09%
・NOAC同士のペアでの出血率では最低がアピキサバン,中位がダビガトラン,高いのがリバーロキサバン
・全NOACで頭蓋内出血はワルファリンより少ない(0.22%-0.49% vs 0.32%-1.06%)
・消化管出血はリバーロキサバンがワルファリンより高い(3.26% vs 2.53%),ダビガトラン,アピキサバンはワルファリンと同じ

<有効性(脳卒中/全身性塞栓症,死亡率)>
・リバーロキサバン,アピキサバンは低下のデータあり(1.33% vs 1.55% for apixaban; 2.89% vs 3.25% for 20 mg of rivaroxaban; and 4.60% vs 3.90% for 15 mg of rivaroxaban)
・死亡率はアピキサバン,ダビガトランで低下。リバーロキサバンで同等または上昇 (7.02% vs 7.41% to 25.7% vs 8.8%)

<処方傾向>
・研究間で概ね同じ
・ワルファリンは高齢で合併症の多い例(Deyo-Charlson Comorbidity Score,CHA2DS-VAScスコア高リスク)に出される
・ダビガトラン150x2は比較的若い人に出される。リバーロキサバンは合併症の多い人,アピキサバンは出血リスクの高い人に出される
・アスピリン併用はNOACよるワルファリンで良く行われる

<低用量処方>
・安全性の観点からよく見られる
・ダビガトランエドキサバンは低用量設定がRCTでなされていて,有効性より安全性の改善に関係していいる
・低用量処方はRCTより頻繁に行われているが,脳卒中も大出血も低用量のほうが多い。
・小レは低用量処方例がより高リスクのためなのと
・不適切に低用量にしているおそれがあるためと思われる

<服薬アドヒアランス>
・おおむねNOACのほうがワルファリンより良い(特にリスク因子2点以上)
・研究によっては,ダビガトラン(67.2%)はリバーロキサバン(72,2%),アピキサバン(69.5%)より落ちる
・後ろ向き研究はアドヒアランスを過剰に多く評価しやすい
追跡期間が12ヶ月以下だから
リフィルからのデータなので一時的な中断か永続的なのかわからなくなる

<まとめ>
・観察研究は因果関係を特定することができない
・NOAC間の直接比較はすべきでない
・コホート(の内容),追跡期間,用量,試験の種類,エンドポイントの定義,補正方法などを考えて解釈すること

・様々な制約はあるにしても,観察研究のデータはPCTの結果の証左となっており,NOACが日常臨床でワルファリンに変わりえるものであることが示されている
・NOACかワルファリンかの選択の際は,RCT,観察研究両者でのリスクベネフィットをレビューしてのディスカッションがなされるべき

### もっとまとめると
1)観察研究には,公的機関や製薬企業により計画的に行われるものと,保険データベースなどからレトロスペクティブに行われるものがあり
2)大出血はワルファリンと同等か少ない
3)リバーロキサバンは他に比べてやや出血が多い
3)NOACは頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多い
4)脳卒中,死亡もおおむね同等か少なめ(出血ほどはっきりしない)
5)NOAC はワルファリンより低リスク例に出される
6)RCTより低用量が好んで出される
7)服薬アドヒアランスはワルファリンより良い
こんなかんじですかね。

個人的にはRCT,観察研究で同じ傾向が出ていればどっぷり信用することにしています。
「NOACはワルファリンより出血,とくに頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多いかもしれない」
とだけは言えそうです。

読み方としては
1)企業主導かどうか(医師主導とされていてもファンドが製薬会社のことが多い)→その場合バイアスやや大きいと考える。またリクルート医療機関をよく見る
2)保険などベースの登録研究かどうか→その場合,アウトカムの定義,補正法,ミッシングデータなどを見る
3)その次に患者プロファイル,薬の用量,追跡期間を見る
と言った感じです。

$$$ ネコちゃん探しのポスターの脇にどばし健康カフェの案内。町内の掲示板です。
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by dobashinaika | 2017-02-19 18:19 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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