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「テレビ、新聞、雑誌の健康情報をどう読み取るか?」について患者さん向けパンフレットを作りました。

日々の診療で、「昨日の新聞で○○という薬が脳梗塞を予防すると書いてありました」「テレビの番組で○○が認知症にいいと言っていました」といったいわゆる健康情報について、本当かどうか聞かれることは大変多いです。そこでこうしたお問い合わせの際に、とにかくこの点にだけは注意して読み取ってほしいというポイントを、私なりに書いてみました。

大変大雑把ですので、もしわかりにくい点や、追加したほうが良いと思うものがございましたらご一報ください。初版ですので、批判的吟味を頂いてより良いものにしていきたいと思います。

より詳しいバージョンは後にまたアップしたいと思います。

############################################
       テレビ、新聞、雑誌の健康情報をどう読み取るか?

テレビ番組やCM、新聞や雑誌の広告など、現在たくさんの健康に関する情報は。今、世の中にあふれています。こうした情報の中から、ほんとうに正しい情報を見極めるのは、大変難しいと感じられるのではないでしょうか?
やや大まかではありますが、わたしは、患者さんがいろいろな情報を読む場合は、まず以下の2つのポイントを満たしているかをチェックするようにおすすめしています(坪野吉孝先生の「検証!がんと健康食品^健康情報の見分け方ー(河出書房新社)」をベースに改変しています)。

ポイント①ヒトが対象か
ポイント②飲んだ人と飲まない人を比べた研究か?


以下、具体的な健康情報について考えてみます。

ポイント①:ヒトが対象か
 新聞やテレビのニュースで時に取り上げられる大学などからの研究成果は、動物実験の結果に基づいたものが少なくありません。たしかに動物実験で効果が証明された薬や治療法は、ヒトに応用できる可能性が出てきたと言えます。しかしながら、これまで動物で認められ効果が、ヒトでは証明されなかった治療法は、実は非常に多く、むしろ実用化される治療法のほうが少ないことが指摘されています、
 また動物実験の段階から、ヒトでの効果が証明されるまでには少なくとも数年はかかると言われています。
 もし目にした記事がネズミなどの動物を対象にしたものであったら、その治療法についてはヒトでの効果が証明されるまで待つという姿勢で良いと思われます。

ポイント②:その薬や食品を摂取した人と摂取していない人を比べた研究か?
 ではヒトを対象にした治療法の場合はどうでしょうか?その場合、その薬や食品を摂取した人と、摂取しなかった人または別な薬(食品)を摂取した人との間で効果を比較しているかどうかがポイントになります。
 「(薬を)飲んだ人は、飲まなかった人に比べて〜」といった文章や、比較したグラフ等があるかどうかに注目しましょう。
 ではなぜ比べなければならないのでしょうか?
 薬には「偽薬効果(プラシーボ効果)」といって、ニセの薬を飲んでも何らかの改善が見られることがよくあります。その原因としては、「薬を飲んでいる」と思いこむことによる安心感(暗示効果)や、そもそも薬を飲まなくても自然に治る病気だったことなどが考えられます。
 このため、必ず「その薬を飲まなかった人(または他の薬を飲んだ人)」に比べて、「その薬を飲んだ人」がどのくらい効いたのかを比べる必要があります。
 雑誌などの広告はだいたい次の5つの情報を掲載しています。1)体験談 2)医学博士の推薦談 3)成分紹介 4)その治療をした人のデータ(比較なし)5)その治療をした人としない人の比較データ。
 とくにその薬や食品を摂って効いた人の体験談がよく掲載されています。体験談しか掲載されていない場合は、先に述べたプラシーボ効果の可能性があり、良し悪しを判断できません。
 またたとえば「血糖を下げる」とされる食品などでは、その食品を飲んだ人の血糖の下がり具合だけが書いてある場合がありますが、同じような理由からそれだけでは信頼できません。必ずそれを飲まなかった人(または他の薬を飲んだ人)と比べているかが重要となります。
 このように比べたかどうかがはっきり書いていない場合は、とりあえず判断を保留にするという姿勢で良いと思います。
 
 まとめの図を示します。
「テレビ、新聞、雑誌の健康情報をどう読み取るか?」について患者さん向けパンフレットを作りました。_a0119856_1236867.png

まとめ:テレビニュース、新聞の健康情報、雑誌の広告を見たら、まずこの2つポイント
「ヒトが対象か?」
「比べているか?」

をチェックしてください。2つのポイントとも満たしている情報はおそらくかなり少ないということがわかるかと思います。

もし2つとも満たしている場合はどう判断したら良いでしょうか?
 実は、その先は専門家でないと、なかなか判断が難しいかもしれません。その先は、ポイント②の比較試験を更に詳しく考える必要があります。
 具体的には
・ 医学論文に発表されているか?
・ 複数の研究に支持されているか?
・ その研究は前もって計画されたものか?
・ 結果は何か?
・ 統計学的に検討されているか?

もし詳しくお知りなりたい方は以下等を参考にしてください。

坪野 吉孝「検証!がんと健康食品」河出書房新社
中山 健夫健康「医療の情報を読み解く 第2版 健康情報学への招待 (京大人気講義シリーズ)」丸善出版
by dobashinaika | 2015-01-18 12:47 | 患者さん向けパンフレット | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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