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日本人おける抗凝固薬の効果と安全性の特徴:CJ誌

EDITORIAL
Oral Anticoagulation in Japanese Patients With Atrial Fibrillation
– Insight to the Use of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants –
Miriam Gómez-Molina et al
Circ J 1月14日


日本人対象のNOACとワーファリン比較のメタ解析に対するエディトリアルがでています。
アジア人および日本人における抗凝固療法の総評になっていますのでご参照ください。
要点のみまとめて訳します。

・日本人は、西洋人よりも心血管イベント率が低く、出血合併症が多い
・アジア人は、ワルファリン内服下での脳卒中/全身性塞栓症リスクは、非アジア人より高い
・一方で出血リスクの点から、非アジア地域よりも抗凝固薬が投与されていない
・アジア人は西洋人よりもINRの適切な範囲が狭い
・日本では特に70歳未満のTTRが良くない。出血を避けてINRを低めに保つため
・重要な事は、INR低め管理により血栓塞栓症リスクが高まること

・RE−LYでは脳卒中率は非アジアより高い:3.06%vs. 1.48% 。TTRも55%と低い
・ROCKET-AFでも同じ:3.4%vs.2.4%:CHADS2スコアは低めにもかかわらず(3.2vs.3.5)
・ARISTOTOLEでは脳卒中/全身性塞栓症リスクはやはり高い:3.39%vs.1.38%
・RELYとARISTOTOLEでは、NOACはワルファリンより有効性、安全性共に優る
・アジア人が出血が多かったのはワーファリンでのみ
・両試験は日本人が非アジア人よりも脳卒中/全身性塞栓症リスクが高いことを示した
・ARISTOTOLEでは、日本人の大出血リスクはその他よりも高かった
・RELYでは70歳以上のINR2.0-2.6の場合、大出血が少なかった
・Senooらは、日本人でのNOACの成績として、(ワルファリンよりも)脳卒中/全身性塞栓症55%低下、大出血、頭蓋内出血、消化管出血は低下の方向であることを示した

・残念ながらエドキサバンデータは含まれていない
・ENGAGE AF TIMI48試験のサブ解析では、ITT解析におけるアジア人は有効性のエンドポイントはワルファリン群で年間2.37%、エドキサバン群で1.83%(高用量)、2.43%(低用量)
・大出血は、ワーファリン群4.12%、エドキサバン高用量3.51%、低用量1.87%
・エドキサバンの日本人第II相試験(536人)では、エドキサバンとワーファリンとで大差なし

結論:アジア人においては、NOACは有効性、安全性両者において好ましいことが示されている。しかし全部のアジア人が同じではない。日本人においては、NOACは(全てではないが)ワルファリンより脳卒中/全身性塞栓症予防の点で有効であり、大出血は増やさなかった。試験間は多様性があり更に検討必要。

図1に日本人の心房細動の特徴が書かれていて参考になります。
<リスク因子プロファイル>
・BMI少ない
・CHF少ない
・HT少ない
・DM多い
・脳卒中の既往多い

<心房細動患者>
・低い有病率
・脳卒中/全身性塞栓症リスク多い
・ワーファリンの出血多い:低いTTR、年齢ごとに違うINR目標

<日本人対象のNOACの試験結果>
・アピキサバン、リバーロキサバン、ダビガトランはワルファリンよりも脳卒中/全身性塞栓症予防の点で優る
・出血は増やさず
・エドキサバンはワルファリンと変わりなし

### アジア人はワーファリンの脳梗塞予防効果が非アジア人より良くない。しかしNOACではその差はなくなるという趣旨かと思います。とくにダビガトランとアピキサバンにその傾向が見らていることも指摘していますね。
アジア人と言っても東アジアと西アジアではかなり違うと思われますので、できれば日本人だけ、または東アジアだけの集団で比べたいところです。

$$$ 今朝の大崎八幡神社。祭りのあと@どんと祭
日本人おける抗凝固薬の効果と安全性の特徴:CJ誌_a0119856_23401953.jpg

by dobashinaika | 2015-01-15 23:41 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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