欧州心臓病学会から抗凝固薬+抗血小板薬併用に関する最新のステートメントが出ました:EHJ誌

いよいよと言うかついにと言うか、欧州心臓病学会 (ESC)のワークンググループから、冠動脈インターベンションおよび弁インターベンション後の抗血栓症法に関するコンセンサスドキュメントが発表されました。

Eur Heart J (2014)doi: 10.1093/eurheartj/ehu298
Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS)
Gregory Y.H. Lip et al

<推奨>のところだけ紹介します。表と図でわかりやすく表示されています(それでも結構複雑)
基本的に4つのステップを考えるよう勧めています。

・STEP 1:脳卒中リスク(CHA2DS2-VAScスコア)
・STEP 2:出血リスク (HAS-BLEDスコア)
・STEP 3:セッティング(急性冠症候群か待機的かなど)
・STEP 4:どの薬を選ぶか、どのくらいの期間飲むか


<前文>
・トリプルテラピー(TT)はできるだけ短くし、抗凝固薬+抗血小板薬1剤(クロピドグレル75が望ましい。代替としてアスピリン75-100)に切り替える
・TTの期間は以下の条件に依存する
・ACSか待機的か
・出血リスク
・ステントの種類(新世代DESかBMSが好ましい)
・非弁膜症性心房細動の場合の抗凝固薬はTTR70%以上のワルファリンまたはNOAC

<一般>
i)
・リスク評価はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアで行う
・リスク層別化はダイナミックな行為であり、一定期間(例えば1年間単位)に行うべき(推奨度I、エビデンスレベルC)

i-a) HAS-BLEDスコアは警告および危険因子の是正(特に高血圧、INR、アスピリンやNSAIDS投与、アルコール過飲)に用いる
i-b) ACSのリスク層別化にはGRACEスケールを用いる
筆者注)GRACEスケールはこちらhttp://att.ebm-library.jp/content/term.html#grace

ii) ビタミンK阻害薬 (VKA)を用いる場合、TTRは70%以上が勧められる(I, A)

iii) VKAとクロピドグレル and/orアスピリンを用いる倍、INRは2.0〜2.5にすべき(IIa, C)

iV) 心房細動と安定冠動脈疾患(1年以上ACSや血行再建なし)の合併例であれば、抗凝固療法OAC(VKAまたはNOAC)のみにすべき(IIa, B)

v) 冠動脈への初期アクセスは、術者の技術や好みによる出血を最小限にするために橈骨動脈にすべき(IIa,C)

vii) 低出血リスク例(HAS-BLED1~2点)では、BMSより新世代DESが好ましい (IIb, C)

viii) 新しいP2Y12受容体拮抗薬(プラスグレル、チカグレル)はTTに用いるべきでない (III, C)

<安定冠動脈疾患>
i)低出血リスク (HAS-BLED0~2):TT(VKA+アスピリン75-100+クロピドグレル75)最低4ヶ月(6ヶ月を超えない)→Dual Therapy(NOAC or VKA+クロピドグレル75、代替案としてアスピリン)12ヶ月まで(IIa, C)

i-a) CHA2DS2-VAScスコア1点(血管疾患のみ)で低HAS-BLEDスコア(0−2点):抗血小板薬2剤のみ、またはOAC+クロピドグレル75 (IIa, C)
i-b) CHA2DS2-VAScスコア2点以上;初期治療の代替案としてDual Therapyも考慮 (IIb, C)

ii) 高出血リスク(HAS-BLED3点超):TTまたはDual Therapyを4週間→Dual Therapy12ヶ月 (IIb, C)

iii) 12ヶ月後以降:全患者にOAC (I,B)

iii-a) ごく限られた症例=左主幹部、LAD近位部、近位分岐部、繰り返すMIなど):Dual Therapy (IIb, C)

iv) PPI:OAC+抗血小板薬期間は全例 (IIa, C)

v)CHA2DS2-VAScスコア2点以上でOAC施行例:PCI時のボーラスへパリンは追加しない。橈骨動脈アプローチ。INR2~3 (IIa, C)

vi) CHA2DS2-VAScスコア2点以上でNOAC投与例:PCI時はNOACの48時間の中止と抗凝固薬静注が望ましい (Iib, C)

vii) 他の手術時 (TAVIやPCI以外の出血高リスク施術)のため48時間以上OACを止める場合:エノキサパリンの皮下注を考慮。未分画ヘパリンよりも血行動態データがよいことが示唆されている。
こうした”bridging”の際はオーバーラップ期間に出血が懸念される。NOACの場合は腎機能やNOAC特有の薬物代謝を考慮する (IIb, C)

### ACSの際については、後日紹介します。
基本的にESCのガイドラインに沿っていますが、細かいところがいろいろ加わっているようです。
・出血低リスク→TT4ヶ月+Dualを計12ヶ月
・出血高リスク→TTまたはDual4週間+Dual計12ヶ月
・12ヶ月以降は OACのみ、左主幹部など危険例のみDual
・PPI, 橈骨動脈アプローチ、新世代DESを勧める


と言うのが概略かと思います。

これがどの程度日本の現場に影響するのか、興味深いです。

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by dobashinaika | 2014-08-27 16:24 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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