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弁膜症症例(MS,人工弁以外)でのリバーロキサバンの有効性安全性:EHJ誌

Eur Heart J (2014)doi: 10.1093/eurheartj/ehu305
Clinical characteristics and outcomes with rivaroxaban vs. warfarin in patients with non-valvular atrial fibrillation but underlying native mitral and aortic valve disease participating in the ROCKET AF trial
Günter Breithardt et al


疑問:僧帽弁狭窄症や人工弁以外の弁膜症でのNOACの有効性安全性はどうか?

P:ROCKET AF試験対象患者のうち、僧帽弁狭窄症および人工弁症例以外の明らかな弁膜症患者2003名14.1%

E:リバーロキサバン

C:ワルファリン

O:脳卒中/全身性塞栓症、大出血、、臨床的に有意義な小出血、頭蓋内出血

T:RCTのpost hoc 解析。弁膜症の有無ごとに解析

結果:
1)弁膜症症例は非弁膜症例より高齢かつ合併症多し

2)脳卒中/全身性塞栓症:
弁膜症症例:同等(2.01 vs. 2.43%; ハザード比0.83(0.55–1.27))
非弁膜症:同等 (1.96 vs. 2.22%; ハザード比 0.89, (0.75–1.07))
交互作用なし

3)大出血および臨床的に有意な小出血
弁膜症症例:リバーロ群で多い (19.8% rivaroxaban vs. 16.8% warfarin; HR 1.25 (1.05–1.49))
非弁膜症:同等 (14.2% rivaroxaban vs. 14.1% warfarin; HR 1.01 (0.94–1.10))
交互作用あり:P=0.034

4)頭蓋内出血:弁膜症有る無しに関わらずリバーロ群で低い。交互作用なし。

結論:いわゆる(大規模比較試験上の)”非弁膜症性心房細動”例は、多くの弁膜症を有する。脳卒中リスクは弁膜症の有無に関係なし。有効性については、弁膜症の有無にかかわらず両群とも同等。出血については、弁膜症群でリバーロキサバンの方がワルファリン群より多い。非弁膜症群では同等。心房細動患者は弁膜症の有無にかかわらず、抗凝固療法の恩恵を同様に受ける

### 弁膜症のタイプとしては僧帽弁閉鎖不全症89.6%、大動脈弁閉鎖不全症24.8%、大動脈弁狭窄症11.0%です。また弁輪形成術後が60.4%とのことです。

患者背景は、高齢、持続性、罹患期間、脳卒中既往、心不全、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、事前のワルファリン使用等等、多くの合併症が弁膜症例で多く認められています。

おおむね、本試験と同じ結果ですが、出血については大出血のみも含めて、弁膜症症例のみにおいて、リバーロキサバンで有意に多いと言うのが、本試験と唯一違う点です。論文ではこの理由の考察はなく「後付け解析のなせる業」みたいに言っています。

保険審査のとき「僧帽弁閉鎖不全症」と書くと場合によっては保険者から査定される場合がありますが、(今は日本のガイドラインで定義が出ていますので、少ないと思われますが)、一応こういうスタディがあると言うことで、「第III相試験の中には僧帽弁狭窄症と人工弁以外の弁膜症は入っていますよ」という根拠
にはなるかもしれません。

それにしても保険審査のとき「非弁膜症性心房細動」という添付文書の記載は本当に紛らわしいですね。
by dobashinaika | 2014-08-26 15:06 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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