人気ブログランキング | 話題のタグを見る

心房細動における病診連携の島宇宙:伏見レジストリーを介した病診連携

本日(3日)は、国立病院機構京都医療センターの赤尾昌治先生を仙台にお迎えして、伏見AFレジストリーの登録後1年のアウトカムと、心房細動の病診連携のお話を聞くことが出来ました、

赤尾先生は、日本の最前線の医療現場を最も反映している伏見AFレジストリー<を統括され、結果を精力的に発表されている先生です。拙著「プライマリ・ケア医のための心房細動入門」にも伏見のデータを何回も引用させて頂いており、日本のAF診療の実態を語る上で欠かすことのできない研究です。

まもなく論文化されるとのことで、あまり詳細は書けませんが、全登録症例3985例でそのうち67/77施設が開業医です。
https://edmsweb16.eps.co.jp/edmsweb/002001/FAF/top.html

興味深かった点として

1)抗凝固療法ありの群が55.0%で、1年前の登録時とほぼ同じ
2)脳卒中発症率は抗凝固あり群と無し群で有意差なし
3)大出血も有意差なし

ということです。もちろん無作為割付ではないので抗凝固あり群のほうがCHADS2スコアは高く、年齢も高いという点は考慮しなければなりません。
そう言いう意味では、高リスク群でも出血はふやさず、塞栓症はリスクの分を考えると減らしているということもできるため、ある意味絶妙なところでのINRなどがコントロールされているとも言えます。ただやはり基本的に、日本の医師の抗凝固療法はunderdoseだということは言えるでしょう。

PT-INRの管理状況や血圧の管理状況など知りたいとことです。

また、赤尾先生の施設では、周辺開業医と連携し、まず心房細動患者を診たら、1回は紹介してもらうようにしそこで初期評価と抗凝固薬の導入を行い、3ヶ月後に逆紹介の形をとっているとこのです。

常々思っていることですが、プライマリ・ケア医で循環器に詳しくない先生は、正直なところワーファリン導入は相当荷が重いし、NOACの使い分けも難しいと思います。たとえば、これだけNOACが宣伝されワーファリンと3つのNAOCの特徴は分かったとしても、いざ処方となるとあまりにも副作用のインパクトが強く、経験のない先生には非常に敷居が高いと思われます。

そういう時、赤尾先生のように、全幅の信頼をおいて診て頂ける専門医の先生がお近くにいらっしゃづるだけで地域の心房細動診療レベルは相当向上するように思います。

仙台でも、仙台循環器病センターの藤井先生が心房細動外来を開設されております。

とかく開業医は、「心房細動くらいで」と思いがちですし、患者さんも特に無症候性の永続性心房細動のかたなどは、症状もないのに、大病院に紹介されるのは非常に面倒を感じるかもしれません。

しかし、例えば臨床的に胸部写真で異常陰影が見つかれば必ず呼吸器専門施設に紹介するわけで、心房細動も抗凝固しないことのリスクは異常陰影を放置するリスクとは全然違いますが、ものすごくかけ離れてもいない(すみません、しっかりした根拠持ってないですが)と思われます。

患者さんにことの重要性をしっかり認識していただく、そして初期段階で専門医に紹介する。こうしたシステムの構築が各地域でできれば脳塞栓症もかなり減るかもしれません。

それには、開業医と専門医の地域での顔の見える関係が何より大切かと思います。

今後ますます、地域の中核病院を核にしての、周辺の開業医が回りにある島宇宙のような連携集団が日本各地にでき、心房細動のみならず勉強会を含めて医学医療全般の地域活動のCOREになっていくようなシステもが模索していければと思います。問題は、日本の都市部の場合、地域の核となる病院が地域にいくつも病院があり、分野ごとに核となる病院が違うことですが。
by dobashinaika | 2014-06-04 00:45 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類

タグ

(44)
(40)
(35)
(32)
(28)
(28)
(25)
(25)
(24)
(23)
(21)
(21)
(20)
(19)
(18)
(18)
(14)
(14)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法 [PR]


プライマリ・ケア医のための心房細動入門 [PR]

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌] [PR]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味 [PR]


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から [PR]


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) [PR]


健康格差社会への処方箋 [PR]


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書) [PR]

最新の記事

2024年JCS/JHRS不..
at 2024-03-21 22:45
日本独自の新しい心房細動脳梗..
at 2024-03-17 22:31
心房細動診療に残された大きな..
at 2024-01-03 23:00
東日本大震災と熊本地震におけ..
at 2024-01-02 16:11
脳梗塞発症後の心房細動患者に..
at 2024-01-01 18:41
ACC/AHAなどから202..
at 2023-12-10 23:12
ライフスタイルを重視した新し..
at 2023-11-06 21:31
入院中に心房細動が初めて記録..
at 2023-11-05 11:14
フレイル高齢心房細動患者では..
at 2023-08-30 22:39
左心耳閉鎖術に関するコンセン..
at 2023-06-10 07:29

検索

記事ランキング

最新のコメント

血栓の生成過程が理解でき..
by 河田 at 10:08
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 06:41
突然のコメント失礼致しま..
by シマダ at 21:13
小田倉先生、はじめまして..
by 出口 智基 at 17:11
ワーファリンについてのブ..
by さすけ at 23:46
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29

以前の記事

2024年 03月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン