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欧州の専門医での新規抗凝固薬使用率は約6%:PREFER AF 登録研究より

アテネで開催されておりました欧州心臓病学会のLate Breaking Trialからの報告です。

Thr PREFER AF registry

・2012年1月〜2013年1月までにフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の461施設による心房細動抗凝固療法患者の登録研究

・42%が外来オンリー、53%が病院。89%が循環器内科医

・7243人。発作性30%、持続性24%、長期持続性7.2%、永続性38.8%

・登録時:
  ➢ビタミンK阻害薬 (VKA)66.3%
  ➢VKA+抗血小板剤9.9%
  ➢NOAC6.1%
  ➢抗血小板剤のみ11.2%
  ➢なし6.5%

・適切なレートコントロール(60~100/分):78.6%

・リズムコントロール:66.7%
  ➢電気的除細動後18.1%
  ➢薬理学的除細動19.5%
  ➢アミオダロン24.1%
  ➢フレカイニド10.5%
  ➢ソタロール5.5%
  ➢ドロネダロン4%
  ➢他の薬剤3.1%
  ➢カテーテルアブレーション5%

・80%の人は良好なレートコントロールにも関わらず症状が残っている

### ヨーロッパ版のJ-RHYTHM Registyといったところですが、外来セッテングのみの施設が42%あるのが特徴です。

NOACは6.1%。。。この時点ではなかなか妥当な数字ではないでしょうか?当院ではもう少し多いと思われますが、循環器専門医が9割を占める集団では、まだまだNOACの使用はこんなものでしょう。最初からワーファリンの人が3分の2ですので、わざわざ変えないということが言えるかもしれません。当院でも変えた方は納豆をどうしても食べたいという方ですし、ヨーロッパには納豆はないですし。。。ただ、日本の処方率もっと多いような気がします。

また専門医9割の集団にしてやはり11%くらいにアスピリンを出しています。J-リズムでのアスピリン処方率は重複例を含めて22.3%、FUSHIMI AF Registryではアスピリン単独例が20%弱(グラフから推測)。どこの世界でもまだアスピリンは使われています.実は当院でもこのくらいの方にはCHADS2スコア2点以上の方でさえまだアスピリンの方がおられます。その多くは高齢者です。出血の既往のある方もおられます。こうした方は、たとえCHADS2スコアが4点ても5点でも、いや点数が高いほど何年も出していたアスピリンをワーファリンに変えるのには勇気が入ります。

では、NOACか?私は、この「高齢者で、ずっとアスピリンを出していてワーファリンに切り替える時機を逸した人」こそ、NOACへの切り替えエビデンスが欲しい患者層ではないかと思います。漫然と「75歳未満で低CHADS2スコアでアスピリンを使っていた人」は、おそらく安全に切り替えられるでしょう.問題は腎機能が少し低下した(禁忌の域の方は対象外ですが)、CCr50前後くらいの方にどのようにしたらうまくアスピリンからNOACに切り替えられるか、ということかと思われます。難しいですが、モニタリング、腎機能への理解、腎排泄率の比較的少ないNOACの使用経験などの知見が蓄積されれば、もう少し敷居が低くなるように思います。またなってほしいものです。


レートコントロールについては、RACE IIでも約40%の人は厳格コントロールであれ緩やかコントロールであれ、症状は残ったままです。症状完全消失は心房細動ではかなりの難題なのです.ただ日常生活にかなりの支障を及ぼす症状となるともっとかなり少ないとは思われます.

とはいえ(最近はやり?)、この時期なかなかに興味深い登録研究であることは確かです.今後,追跡後のアウトカムが是非知りたいところです.
by dobashinaika | 2013-07-01 22:58 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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