ワーファリンの用量調節は意外に”簡単”:Circulation誌より

Circulation 11月6日号より

以前ご紹介したRE-LY試験のワーファリン用量調節のアルゴリズムについて、今週号のCirculation誌に論文化され、Editorialとともに全文がフリーで入手可能です。

Variation in Warfarin Dose Adjustment Practice Is Responsible for Differences in the Quality of Anticoagulation Control Between Centers and Countries
An Analysis of Patients Receiving Warfarin in the Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy (RE-LY) Trial
Circulation.2012; 126: 2309-2316


Editorial:
Improving the Management of Warfarin May Be Easier Than We Think
Circulation.2012; 126: 2277-2279



前回のブログはこちらです。
http://dobashin.exblog.jp/16604429/

具体的なワーファリン用量調節アルゴリズムは以下のとおりです。
・ 目標INRは2.0~3.0(日本は2.0〜2.5)
・ モニター間隔最高4週間
・ 週ごとに用量調節
➢30mg/週と規定した場合は、5日間5mg+2日間2,5mg
➢10%増(33mg/週)→6日間5mg+1日2.5mg
・ INR2.0-3.0→変えない
・ 1.5未満→15%増
・ 1.51〜1.99→10%増
・ 3.01〜4.00→10%減
・ 4.00〜4.99→1日休薬後、10%減
・ 5.00〜8.99→治療域になるまで休薬。その後15%減
・ 2〜3を外れたら週ごとにモニタリング

こうしてアルゴリズムにより用量設定を行った結果以下のことが知見として得られたとのことです。
1)このようなアルゴリズムを遵守すればするほど、各施設間のTTRが一致し、ひいてはアウトカム改善につながる可能性がある。

2)標的INR(2.0〜3.0)から少し外れた場合は用量増減させない方策より、アルゴリズム通りに変更したほうがTTRが改善する

Editorialでも「ワーファリン管理の向上は思ったより簡単」として評価しています。

折しも、私が担当させていただいております、日経メディカルオンラインさんの連載第7回のタイトルが「ワルファリンの用量調節は意外に“機械的”」であり、我が意を得たりの感がしないわけでもありません。

そうなんですね。ワーファリン調節は機械的アルゴリズムの世界です。というより、他に方法がないのでそうするしかないと言ったほうがいいかもしれません。

ただしそのアルゴリズムの理論というか流儀が、標準化されていないので、各人各様のやり方があり経験知が乱立しているというのが現状かと思います。

このアルゴリズムと私の流儀(土橋メソドと勝手に名づけます・笑)はしかしながら、やや異なっております。
まず当アルゴリズムは、週単位の調節を要求します。こうすればなるほど、かなりTTRは向上するでしょうが、実臨床では細かすぎます。週のうち何日かだけ、違った用量にするのも煩雑です。
また、土橋メソドでは至適範囲(私の場合は1.6〜2.6)を外れなくても正常上限または加減になった場合から用量変更をかけていますが、当アルゴリズムでは1回外れたら変更するやり方です。
さらに、用量は当アルゴリズムでは前回投与量を元に10〜15%というレンジで増減しています。

こうみると当アルゴリズムは、土橋メソドに比べ、ある部分かなりきめ細かい調節法という印象をうけます。しかし、よく考えると、10〜15%の変更というのは、たとえば処方量として最も多いワーファリン2.5〜3mgにおいては0.25〜0.45mgくらいになります。当院では若干の逸脱の場合は0.25mgを頻用しますので、そういう意味では、投与量においてあまり大きな違いはないのかもしれません。

もちろん大きく逸脱した場合、導入の場合、どうするかの心得はまた別ですが、この「機械性」「アルゴリズム性」を数例で経験すれば、経験の少ない先生にもワーファリン恐れるに足らず、と思っていただけるのではないかと密かに思っています。

新規抗凝固薬の使いこなしには、まずはワーファリンの使いこなしから、そしてそれは、実はあまり難しくない。と言いたいのですが。。。反論を覚悟で^^
by dobashinaika | 2012-11-06 23:47 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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