New England Journal of Medicine 8月28日オンライン版より
Apixaban versus Warfarin in Patients with Atrial FibrillationEDITORIAL:
A New Era for Anticoagulation in Atrial Fibrillation
新規Xa阻害薬アピキサバンに関する大規模試験ARISTOTOLEの全文です。現在フランスで開催中の欧州心臓病学会で発表と同時に論文掲載です。
P:登録時心房細動または過去1年間に2回以上の心房細動が記録されたもの。かつ次の危険因子を1つ以上持つもの:75歳以上、脳卒中/TIA/全身性塞栓の既往、心不全、糖尿病、高血圧
E:アピキサバン5mgx2/日、9120例:ただし80歳以上、体重60kg未満、クレアチニン1.5以上は2.5mgx2
C:ワーファリン2.0mg、9081例:目標INR2~3
O:有効性一次エンドポイント;脳梗塞/脳出血、全身性塞栓症。安全性一次エンドポイント:国際血栓止血学会基準の大出血
T:無作為割り付け、二重盲検、ダブルダミー、多施設(日本含む)、ITT解析、追跡中央値1.8年
結果:1)有効性一次エンドポイント:アピ群1.27%/年vs. ワーファリン群1.60%/年:ハザード比0.79(95%CI 0.66-0.95, p<0.001 for noninferiority,p=0.01 for superiority)
2)安全性一次エンドポイント:アピ群2.13%/年vs. ワーファリン群3.09%/年:ハザード比0.69(95%CI 060−0.80, p<0.001)
3)全死亡:アピ群3.52%/年vs. ワーファリン群3.94%/年:ハザード比0.89(95%CI 0.80-0.998, p=0.047)
4)脳出血:アピ群0.24%/年vs. ワーファリン群0.47%/年:ハザード比0.51(95%CI 0.35−0.75, p<0.001)
5)脳梗塞;アピ群0.97%/年vs. ワーファリン群1.51%/年:ハザード比0.79(95%CI 0.65-0.95, p<0.01 )
6)消化管出血:アピ群0.76%/年vs. ワーファリン群0.86%/年:ハザード比0.89(95%CI 0.70-1.15, p=0.37)
7)投与中止例はアピ群25.3%/年vs. ワーファリン群27.5%/年
8)TTR(ワーファリンが至適INRであった時間割合);62.2%
9)患者の年齢70歳(中央値)、心房細動(発作性15%、持続性または永続性85%)、平均CHADS2スコア2.1、CHADS2スコア1点が34%、ワーファリンナイーブ43%
結論:アピキサバンはワーファリンよりも脳卒中、全身性塞栓の予防に優れ、出血は少なく、その結果より低い死亡率をもたらした。
###第3の男ならぬ第3の新規抗凝固薬アピキサバンの親試験結果報告です。対象はCHADS2スコア2.1点でRE-LYに近い中リスク群です。ほぼRE-LY, ROCKET-AFと同傾向ですが、
全死亡率が有意にワーファリンよりよい、消化管出血がワーファリンより少ない傾向、TTRが至適であったワーファリン群と比較しても有意によい、など、これだけ見ると先行2薬を凌駕する内容のようにも見えます。
だたし、以下のように試験方法が3試験ともに違いますので安易な比較は、それぞれの直接対決試験が出るまでは慎むべきかもしれません。
・
盲検:RE-LYはオープンラベル。ROCKET-AF,ARISTOTLEは二重盲検
・
投与方法;ダビガトラン、アピキサバンは1日2回、リバロキサバンは1日1回
・
対象患者危険因子;RE-LY,ARISTOTLEは1つ以上、ROCKET-AFは高リスク
・
TTR割合:RE-LY64%, ROCKET-AF55%, ARISTOTLE62%
実際は代謝経路の違い、服薬回数の違いなどを考慮して、患者さんごとに使い分けて行くようになるだろうと思います。
最後に私のスタンスを述べます。ネットで情報検索すると、「新時代到来」「さらなる高みに」といった言葉が踊っていますが、こういうときこそぐっと腰を落ち着け、新薬にいたすらに振り回されず、じっくり使って行きたいと思います。なぜなら、上記3つの試験は非常に大規模でかつ洗練された試験ですが、抗血小板薬併用、弁膜症、超高齢者等が除外され、また逸脱率20%以上と、
所詮バーチャルワールドのデータであるからです(いわゆる外的妥当性のことで今更の話なんですが。でもダビガトランのアスピリン併用例での死亡例などを見るにつけやはりこの点はいつでも肝に銘じるべきと思います)。そしてそれゆえ
リアルワールドの経験知が蓄積されていないからです。
特に新薬使用は、長期処方可能になるまでは、開業医は大勢を見てから行動すればよいように思われます。
上記3薬すべてが長期処方可能になり、経験知が蓄積されるようになれば、おそらくその使い勝手や効果安全性から考えて、今までワーファリン適応者の半数と言われる抗凝固療法フリーの心房細動患者さんがかなり減る日がやってくると思います。
しかしその後、残っているのは、
発作性心房細動ながら抗凝固薬フリー、および
心房細動ながら医療機関に受診していない人たち、が問題となります。これらの問題は新規抗凝固薬の登場では解くことができず、前者はどれだけ主治医がその重要性を認識するか、後者は社会で心房細動をいかにをスクリーニングし二次医療機関を受診してもらうかという地域医療の視点が必要となります。
そこまで視野に入れることが
ARISTOTLE(アリストテレス)の最高善につながるのではないかと考えます。
###参考資料循環器トライアルデータベース(もうここまでまとまっている。早い!)
製薬会社プレスリリースRE-LY試験ROCKET-AF試験ARISTOTLE-J試験(既に先行発表された日本のサブ解析データ)
AVERROES試験(アピキサバンvs.アスピリン)
アピキサバンの薬理学的特性は
こちら