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心房細動研究の今後に関するアメリカ心臓協会の推奨:Circulationより

Circulation7月19日号より

American Heart Association Atrial Fibrillation Research SummitA Conference Report From the American Heart Association
Circulation. 2011; 124: 363-372


昨年6月12-13日にワシントンで行われた「心房細動研究サミット」の会議録です。
患者、看護士、医師、政策決定者、基礎、トランスレーショナル、疫学など様々な立場の人が22のプレゼント6つのパネルディスカッションを行いました。
セッションは1)心房細動のメカニズム:基礎、トランスレーショナル、遺伝学 2)疫学、アウトカム、コスト 3)臨床上の課題 4)治療上のゴールの再定義 の4つに分けられました。

全部は紹介できませんので、表にまとめられた、今後のリサーチの関するリコメンデーションを挙げておきます。

表1:メカニズム研究に関するリコメンデーション
・メカニズムと病因に関するリサーチの運営
・遺伝子データと診療アウトカムの関係
・心房に特異性のあるNaチャネル(動態、結合非結合モデル、脂質親和性、分子量、チャネル構造)の特性
・電気的、構造的リモデリングと遺伝子がどのようにNaチャネルブロッカーの心房特異性や有用性、安全性を修飾するか
・心房特異的Naチャネルブロッカーの短期的、長期的効果
・細胞外コラーゲン結合MRI造影剤を含む心房筋コラーゲンの影響の評価法
・抗線維化療法のための新しい標的同定のため、正常及び心房細動における生物学的、電気生理学的、シグナル伝達的な線維芽細胞、筋線維芽細胞の特性評価
・線維化の早期における抗線維化療法の開発に関与する線維芽細胞特異的遺伝子
・エンドセリン1の心房細動における役割

表2:疫学、アウトカム、コスト、心房細動と脳卒中予防
・国際的、多施設、多領域から成るチームでの心房細動予防に関するコラボレーション
・年齢、性別、人種・民族による疫学、表現型、危険因子、予後のバリエーションの起源
・個別的及び集団的に心房細動をより効果的に同定しモニターする戦略
・より厳格に心房細動を分類するためのより正確なイメージングやバイオマーカー、遺伝子発現型
・心房細動のリスク予測のツールと新しいマーカーの使い勝手の評価
・世界のすべての地域での心房細動の重要性やインパクトの系統的検討
・ゼロ次、一次、二次予防のRCT
・全身性塞栓症、頭蓋内出血、他の大出血のリスク層別化の再評価
・脳卒中ガイドラインの、十分な普及実現への改善策
・臨床評価項目、コスト、QOLへのインパクト、新規抗凝固薬の効用の特徴づけ
・臨床研究におけるデザイン、資金、厳格で比較対象のある効果と安全性の研究の実施
・データベースや登録への参加促進のためのプロバイダ、施設、スポンサーのインセンティブ開拓、再編成
・QOL、患者/プロバイダーのアドヒアランス、臨床アウトカム、ヘルスケア利用といった心房細動管理におけるコストのよりよいモデル
・臨床家が費用対効果モデルを使うことの促進

表3:臨床的挑戦と治療上のゴールの再定義
・抗炎症作用を乃ある薬剤の効果と安全性評価
・発症と再発予防のためのアップストリーム代替療法(スタチン、ACEi/ARB、魚油)
・実験モデルで相乗効果を示す(ranolazineとdronedarone)心房特異的Naチャネルブロッカーの併用療法の効果と安全性
・観察研究、効果比較研究、臨床トライアルの適正なエンドポイント設定
・心房細動の負担と治療の便益が症状、QOL、身体機能の状態、心血管系アウトカムに関係するかどうか
・心房細動に特異的でアウトカムと同様症状についての効果も評価できるQOL測定基準
・プロセスの測定基準でなく、心房細動の負担、アウトカム、コストを効率的に測定する方法
・メカニズム、抗不整脈作用と抗心不全作用の観点からの心房細動と心不全の関係の探索:この2つの状態を合併した集団に注目を集めるための戦略を含む
・頻拍依存性心筋症に至る心拍数と心房細動罹患期間の同定
・アブレーションと抗不整脈薬とでのリズムコントロール比較
・睡眠時無呼吸症候群が心臓の構造、自律神経機能、炎症におよぼすす影響に関する臨床的、基礎的研究
・術後心房細動の予防戦略
・外科的治療戦略の系統的評価
・試験デザイン、データの埋め込み、電子カルテのパフォーマンス向上、エビデンスベースの治療への登録、患者アウトカムの改善といったものへのプロバイダと健康システムのインセンティブ提供
・エビデンズベーストな治療やガイドライン実現のための臨床家の能力向上ツールの開発

結論:メカニズムの理解と要望、治療戦略においてかなりの進歩はあるが、まだわからないことがたくさんあることが分かった。予防と治療は、今後最終的にここの患者の病態生理に応じたものとなるであろう。異なる集団における頻度、危険因子、背景因子といった諸相の把握が治療、予防連略に必要である。表1-3のような努力が今後必要。

###すごいボリュームですね。アメリカってこういうカンファを簡単にやるところが偉いと思います。各論をもっと見てみたいと思いますね。心房特異的Naチャンる遮断薬が、何回か出てきていますね。それから臨床研究のインセンティブ、臨床家へのEBM普及戦略まで討論するところが懐深いです。患者のナラティブからの視点はないんですかね。
by dobashinaika | 2011-07-31 19:48 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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