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上室性期外収縮が多すぎると、脳梗塞や心房細動が増加する

時々検診などで期外収縮の多い患者さんがおられます期外収縮とは1発~数発脈が呼ぶ不整脈で心室性と上室性とがあります。心房細動は上室期外収縮が何発か続いてからおこることが知られていますが、まったく健康な人でこのような期外収縮が多い場合、将来どうなるかについてはわかっていませんでした。今回、期外収縮が多く、かつ健康な人を5年以上追跡した結果がデンマークのグループから発表されました(Circulation 2010: published online before print April 19, 2010, 10.1161/CIRCULATIONAHA.109.874982)。

論文の背景)健康な人に脳梗塞や心房細動が起こるかどうかの予測は、解決すべき課題である。過剰な上室期外収縮(心房から出る期外収縮)と脳梗塞、心房細動との関係を脳梗塞、心疾患の既往のない例で調べた。

方法)デンマークのコペンハーゲンで登録されている55歳から75歳までの健康な(心血管疾患や心房細動のない)住民の一集団678人を対象にした。全員48時間心電図を施行し、1時間に30発以上の上室期外収縮または20連発以上の連発性上室性期外収縮を「過剰な上室期外収縮」と定義した。一次評価項目は脳梗塞と死亡、二次評価項目は全死亡、脳梗塞、心房細動による入院とした。平均6.3年追跡した。

結果)1時間30回以上の期外収縮を持つ人は70例、20連発以上のある人は42例で両者のうちいずれかまたは両方持つ人は99例14.6%だった。死亡または脳梗塞(一次評価項目)のリスクは過剰な期外収縮を持つ例のほうが1.64倍多かった(95%信頼区間1.03-2.60、p=0.036)。過剰な上室期外収縮を持つ例では心房細動の入院も2.78倍、脳梗塞のみでも2.79倍多かった。

結論)過剰な上室期外収縮は心房細動への進展や引いては脳梗塞、死亡といった不幸な転帰と関係がある。

###上室期外収縮が1時間に30発というのは2分に1発以上出ていることになり、数としてはかなり多い部類に入ると思われます。このくらい期外収縮が多い場合、健康な例といっても、心臓特に心房筋には何らかの異常が起きているものと思われます。上室期外収縮の多くは左心房の肺静脈の付け根のところからおこることが知られていますが、高血圧や高齢者ほどその部分の心房の筋肉が入り組んでおり、期外収縮が多く出ることがわかっています。ここで期外収縮が多かった人は、実は心房の筋肉の変化がすでに進んでいる方々だったのではないかと推測されます。脈が頻繁に飛ぶ、検診の心電図で期外収縮を言われた人などは、やはり早めに調べたほうがいいと言えるでしょう。
by dobashinaika | 2010-04-26 23:42 | 心房細動:リアルワールドデータ


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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