日本人の今後10年間の心房細動発症リスクがわかる予測スコア


目的:日本で心房細動を予測するリスク因子は何か?

方法:
・吹田市の一般住民コホート6898例,30−79歳。心房細動なし。1989年から登録,追跡
・2年に1回の検診,医療機関受診時心電図で診断された心房細動

結果;
1)311AF(95180人年)

2)以下のリスク因子を同定
男性/女性=0/-5(点)(30.40代)3/0(50台),7/5(60代),9/9(70代)
高血圧,肥満,アルコール過飲,冠動脈疾患:各2点
喫煙中:1点
非HDL中等度;-1点
不整脈:4点
心雑音:8点(30−40代),6点(50代),2点(60代)

3)C統計量0.749;95%CI 0.724-0.774)

4)今後10年の心房細動発症リスク:
スコア2点以下1%以下,スコア10−11点9%,スコア16点以上27%
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結論:我々が開発した従来からのリスク因子を用いた心房細動発症10年リスクスコアは,心電図なしで外来患者や健診でルーチンに簡便に利用できる。

### 心房細動の発症リスク因子はいろいろあります。日本の国立循環器病研究センターからのこの研究では,年齢,血圧,体重,アルコール,冠動脈疾患,喫煙などの従来からよく言われている因子にくわえ,心房細動以外の不整脈と心雑音を重視しています。

私自身に当てはめると,心雑音なし,ライフスタイル&脂質−1点(non-HD),心血管リスク6点(心室期外収縮,高血圧治療中)で50代男性ですと7%と出ました。

心房細動発症リスクに関する総説,ブログはこちら

$$$ ご近所町内会の張り紙。カフェは6月10日です。
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# by dobashinaika | 2017-05-25 15:14 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

米国でも日本でもDOAC発売後の心房細動における抗凝固薬処方率は50%→60%に増えたに過ぎない。


疑問:DOAC発売以来抗凝固薬処方は増えたのか

方法:
・2008年8月〜2014年9月,NVAF,CHA2DS2-VAScスコア1点以上
・PINNACLEレジストリ
・655,000例
・抗凝固薬使用状況の変化を分析

結果:
1)抗凝固薬使用率変化:52.4%→60.7% (p for trend <0.01)
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2)ワーファリン:52.4%→34.8% (p for trend <0.01)

3)DOAC:0%→25.8% (p for trend <0.01)

4)CHA2DS2-VAScスコアとOAC使用は関連あり:OR 1.06; 95% CI 1.05 to 1.07

5)DOACはより低用量使用:OR: 0.97; 95% CI: 0.96 to 0.98

6)医療機関により抗凝固薬使用のばらつき大きい:OR中央値1.52; 95% CI: 1.45 to 1.57

7)特にDOAC使用のばらつきが大きい:OR中央値: 3.58; 95% CI: 3.05 to 4.13

結論:ルーチンでのDOAC導入が抗凝固薬使用増加と関連あり。しかし以前ギャプは残る。施設レベルでのバリエーションも大きい。

### このグラフを見るとNOAC導入後,抗凝固薬処方率が50%から60%になり,それはDOACの増加に依存,と読めます。この数値の変化は,最近出たFUSHIMI AFの変化とほぼ一致することに驚きです(下の図B)。
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そしてやはりグローバルでも低用量使用とのことです。「欧米人はリスクよりリターンを重視する。日本人はリスクに重きを置く。。。」というのは幻想なのでしょうか。やはり抗凝固薬に関しては,世界中どこでもみんな慎重。

$$$ 日本プライマリ・ケア連合学会で高松へ。駅のホームのうどんも非常にレベルが高い。

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# by dobashinaika | 2017-05-19 00:01 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

心房細動スクリーニングに関する6つのキーポイント

しばらくブログをサボっていました。
また少しずつ始めます。


AF-Screenという国際共同コラボレーション作業が,2015年に立ち上げられました。
31の国,100人のメンバーで構成され,2016年8月ローマでミーティングが行われ,脳卒中/死亡を減らすための心房細動スクリーン戦略を討論したとのことです。
Circulationにそのレポートがでていますでの,大まかに紹介します。

語の定義としてunrecognized(認識されない), undiagnosed(診断されない), silent(無症候性), subclinical AF(潜在性),cardiac implanted electronic device (CIED)-detected atrial high-rate episodes(植込み型デバイスで同定された心房ハイレートエピソード)など様々ありますが,このレポートでは,screen-detected AF,(スクリーングで認識されたAF)が使われています。

5つのキーポイントとまとめの図です。

【キーポイント1】
1回のスクリーングポイントあるいは間欠的な30秒間の2ヶ月以上の心電図記録によるスクリーニングは,良好な環境とはいい難い。脳卒中リスク因子を加味することで,十分なスクリ−ニングの妥当性が得られる。

【キーポイント2】
診療所や地域における65歳以上の人の,ワンポイントのスクリーニングは有効性や費用対効果の点から妥当とされている。75歳を超えるひと,あるいは心房細動高リスクの若年者では2週間の1日2回の心電図記録は根拠がある。

【キーポイント3】
外部あるいは植込み型デバイスあるいは患者参加型の間欠的心電図記録は,原因不明の脳塞栓症の診断には重要

【キーポイント4】
大量の機会あるごとのスクリーニングは,脈を取ることで完遂できる。血圧計,スマホ,携帯型心電計なども含まれる。心電図診断は心房細動診断のガイドラインでも確立されており,確たる診断という点で有効であり望ましいツールである。長時間ホルターやループレコーダーは発作性心房細動の診断に有効だがさらなる精査が必要である。費用対効果及び低脳卒中リスク患者の同定という点で限界があるからである。

【キーポイント5】
心房細スクリ−ニングは,地域ごとやヘルスケアシステムに特異的なニーズやリソースによって特徴づけられる。またそれらはスクリーニングの有効性の管理や診断の妥当性とリンクする。地域ベース及びプライマリーケアベース,専門医,一般あるいは専門外来のセッティングは有効である。プライマリ・ケア及び外来診療所は治療や継続的な管理と直接リンクする点で有利である。

【キーポイント6】
ハードエンドポイント(脳卒中/全身性塞栓症,死亡)によるスクリーニング戦略の大規模ランダム化比較試験が必要。RCTはガイドラインや全国規模のスクリーニング戦略のnエビデンス的裏付けとなる。

【まとめの図】
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$$$ 早朝散歩が非常に気持ちいい季節です。
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# by dobashinaika | 2017-05-11 22:57 | 心房細動:診断 | Comments(0)

日本のリアルワールドでは,DOACとワルファリンで脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも発症率に有意差なし:Fushimi AF Registryより


疑問:DOAC発売後5年たった時点での,日本の抗凝固療法のアウトカムはどうなっているのか?

方法:
・Fushimi AF Registry登録患者対象
・80医療施設,3731例,2015年11月まで追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:年間2.3%

2)大出血:年間1.8%

3)DOAC発売後,DOAC使用は緩徐に増加:2015年はワルファリン37%,DOAC26%,抗凝固なし36%

4)脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,DOACとワルファリンで出現率に差はなし
脳卒中/全身性塞栓症HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82),大出血HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45
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結論:リアルワールドの臨床プラクティスでは,DOAC投与下での脳卒中/全身性塞栓症や大出血は,ワルファリンと比べて明らかな違いはなかった。

### 伏見AFの最新データです。日本のイマココがわかる大変貴重な報告です。
追跡率89.6%,各群はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアの全項目でpropensity scoreマッチされています。
患者プロファイルの確認ですが,平均年齢73.6歳,平均CHADS2スコア2.0点です。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,低血圧で高リスク例が多かったとのことです。
ワルファリン1728例,DOAC270例(ダダビガトラン115,リバーロキサバン222,アピキサバン202,エドキサバン6:5年の間に重複あり)

アウトカムの確認
1)抗凝固療法施行率:53%(2011年)→64%(2015年)
2)ワルファリン:DOAC:抗凝固なし:51%:2%:47%(2011年)→38%:26%:36%(2015年)
3)CHADS2スコア別処方率変化:3点以上の処方率は60数%で過去5年で不変。0点(35→49%),1点(45→62%)の人が増えている
4)DOACの低用量処方:ダビガトラン90%,リバーロキサバン44%,アピキサバン44%
5)非推奨例:ダビガトラン36%,保険適応外例:リバーロキサバン,アピキサバン59%
6)脳卒中/全身性塞栓症発症率への寄与因子:年齢(10歳ごと),脳卒中の既往のみ,(高血圧,糖尿病などは入らず)
7)ワルファリン vs. DOACのアウトカムはPSマッチ後も同じ
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Limitationは多くありますが,それでもワルファリンとDOACでアウトカムが変わらなかったのは相当インパクトがあります。
理由として著者らはDOACのアンダードースを挙げています。たしかにダビガトランでさえ36%,他に至っては59%もの症例で添付文書からはずれた低用量使用だったのにはやや驚きました。通常腎機能や年齢がギリギリのひとでは低用量にシフトするのもやむを得ませんが,6割近くが低用量というのはギリギリでないひともかなり含まれるのではないでしょうか。ただそれだと出血は少ないように思いますが,出血も同じだったとのことです。

筆者が述べているようにDOACのアドヒアランスの問題,nが少ないことなども関係しているかもしれません。

それにしても,試験の限界も多々あるにしても,日本の実臨床での実態をかなり反映した集団のアウトカムと思いますので,日本の臨床家の今の薬の出し方と,患者さんの飲み方では,DOACはワルファリンに勝てていないということです。あれだけ宣伝攻勢,あれだけの薬価でこうなんですね〜〜。やっぱり抗凝固薬を「誰に」「どう」使うかは,「何を」使うかより100倍重要。「何を」を考えるならコストとアドヒアランスがアウトカムより大事。なんとこんなところに落ち着くのでしょうか。NOAC礼賛の立場を取ってこなくてよかった(?)。


# by dobashinaika | 2017-04-19 22:34 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

脳梗塞既往のある心房細動例でも脳梗塞急性期の84%に抗凝固薬が処方されていない


疑問:脳梗塞既往歴があり抗凝固薬服用中の患者の脳梗塞の頻度は?重症度は?

方法:・観察研究・94474例・心房細動が認められている急性脳梗塞・米国,2012年ー2015年まで

結果:
1)平均79.9歳

2)ワルファリン7.6%(INR≧2),NOAC8.8%

3)83.6%で抗凝固薬処方されず

4)13,5%でイベント時ワルファリンINR低値(2未満)

5)39,9%で抗血小板薬

6)30.3%で全く抗血栓薬無し

7)CHA2DS2-VAScスコア2点以上の83,5%で抗凝固薬なし

8)非補正時中〜高度脳梗塞発症率:抗凝固薬あり(ワルファリン15.8%,INR≧2,NOAC17.5%)のほうが,その他より低い

9)入院率も同様

10)補正後も抗凝固薬ありのオッズ比は低い

結論:脳梗塞の既往歴のある心房細動例の急性虚血性脳卒中患者では,不適切な抗凝固療法が目立った。適切な抗凝固療法は中〜高度脳梗塞と院内死亡率のリスクを低下させた。

### 日本のSAMURAI-AF+BAT研究では,全脳卒中例対象の場合(CHADS2スコア),心房細動と診断されていない例が3割,されているが処方なしが3割,抗凝固療法ありが3割ときれいに分かれていました。日本だと心房細動と診断された例の半分に抗凝固療法されていなかったわけです。

それに比べても相当高率に処方されていないことがわかります。米国では長らく抗血小板薬が推奨されていた時期があることも原因かもしれません。また,心房細動のdocumentといっても,1回だけの発作例もあれば,持続性もあり,かなりバリエーションはあると思われます。対象もかなり高齢者が含まれているようです。

とは言え,洋の東西を問わず抗凝固や過小投与(であり過大投与でもある)といえると思います。

$$$ 当地の桜はまだこんな感じ
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# by dobashinaika | 2017-04-11 18:56 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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