プライマリ・ケア外来でも発作性心房細動への抗凝固薬処方率は非発作性に比べて低い:Heart誌


疑問;英国のプライマリ・ケアでの心房細動管理は,ガイドラインとどの程度合致しているか?

方法:
・英国プライマリ・ケアデータベース(2000−2015年)から発作性心房細動の管理についての情報を得る
・主要エンドポイントは抗凝固薬処方

結果:
1)心房細動患者179,343人

2)発作性心房細動患者数の推移(2000→2015年):心房細動全体の7.4%→14%に増加

3)発作性心房細動患者への抗凝固薬の処方率の推移:16%→50.7%

4)非発作性心房細動患者への抗凝固薬の処方率の推移;33.5%→67.1%

5)発作性心房細動でCHADS2スコア1点以上の人の抗凝固薬の処方率の推移:18.8%→56.2%

6)非発作性心房細動でCHADS2スコア1点以上の人の抗凝固薬の処方率の推移:34.2% →69.4%

結論:心房細動患者への抗凝固薬処方率は過去15年で増加したが,適応患者の多くの層,特に発作性の例で抗凝固療法が施行されていない

### CHADS2スコア1点以上の抗凝固療法適応例でも,実際の処方率は発作性56%,非発作性69%ということで,「発作性は軽症」というバイアスが根強いようです。ただ最近は,抗凝固療法を施行しているひとでは発作性より非発作性のほうが塞栓症リスクが高いという報告も相次いでおり,一口に「発作性」と言ってもその中をさらに低リスク発作性,高リスク発作性くらいに分けて考えたほうが良いかもしれません。

15年前は発作性の抗凝固薬の処方率が16%というのも驚きですが,まあたしかにアスピリンでかなり逃げていましたね。自分自分で振り返っても。たしかにあの頃より心原性脳塞栓は少なくなったという印象はあります。ただし,今この時点を15年後に振り返ったとき,「あの頃は心原性塞栓症が多かった」と思えるかどうか。上記処方率50%が100%になれば当然出血率も増加しますので,現状のガイドラインが真のリスクを表しているのかもまだまだ検証の余地があると思われます。

### 玄関先で
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# by dobashinaika | 2017-06-26 22:22 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

心房細動患者では,ワルファリン単独の方がアスピリン単独や両者併用に比べ心筋梗塞,出血,脳梗塞いずれも少ない


目的:心房細動患者の初回心筋梗塞における抗血栓療法と脳梗塞や出血リスクを評価する

方法:
・冠動脈疾患の既往のない初回心房細動患者
・デンマーク国内登録。1997〜2012年
・抗血栓療法別に評価
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結果:
1)71,959人,中央値年齢75歳,女性47%

2)VKA単独52%,ASA単独(アセチルサルチル酸,主にアスピリン)35%,両者(dual)13%

3)心筋梗塞発症率3%

4)心筋梗塞発症率:VKA群に比べ
ASA群は有意に高率:incidence rate ratio [IRR]: 1.54; 95%CI: 1.40 to 1.68
Dual群は有意に高率:IRR: 1.22; 95% CI: 1.06 to 1.40

5)出血リスク:VKA群に比べ
Dual群は有意に高率:IRR: 1.93; 95% CI: 1.81 to 2.07

6)脳卒中発症率:VKA群に比べ
ASA群は有意に高率:IRR: 2.00; 95% CI: 1.88 to 2.12
Dual群は有意に高率:IRR: 1.30; 95% CI: 1.18 to 1.43

### 心房細動患者にとりあえず,ワルファリンを投与しておけばアスピリン単独や両者併用に比べ,心筋梗塞,出血,脳卒中全てが低リスクという結果でした。ワルファリンにも抗血小板作用があり,虚血性心疾患の予防効果を示すことは知られていますが,多数例でしかもアスピリンよりも一次予防に優れているというのは,以外かもしれません。これがNOACだとどうなるのか興味深いです(またワルファリン推しかと言われそうですが)。

$$$ またもネコシリーズ
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# by dobashinaika | 2017-06-23 22:15 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

米国プライマリケア外来でも過去5年間でDOAC処方率は増加したが,抗凝固薬全体の処方率は変わらず:AJC誌


・米国の18のプライマリーケアネットワークのデータべース
・CHA2DS-VAScスコア2点以上の心房細動
・心房細動患者:3.5%(2010年)→4.0%(2015年)
・抗凝固薬処方率(心房細動患者中):57.0%→57.4%(p=0.41)
・抗凝固薬処方率(高リスク例):61.1%→61.7% (p=0.51)
・DOAC処方率:0.31%(2010年)→18.3%(2015年) (p<0.001)
・DOAC処方例はより若年で低リスク
・結論:DOACは総じて処方が増えているが,抗凝固薬全体の処方率は増加していない。

###先日のPINNACLEレジストリと同様ですね。プライマリ・ケアセッテイングでも同じで,DOACは増えているが抗凝固薬の処方自体は余り増えていないとい言うのが世界の趨勢のようです。

$$$ 
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ひさびさのネコシリーズ。どこにいるでしょうか?ってわかりますね。

# by dobashinaika | 2017-06-20 19:26 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

低リスク症例では,NOACは虚血性脳卒中/全身性塞栓症でワルファリンと同等。出血はダビガトラン,アピキサバンで低率


重要性:NOACのRCTの対象はリスク2つ以上の患者が多く,ダビガトラン,アピキサバンの場合も(組入基準はCHADS2スコア1点以上だが)1点の患者は少ない。しかるに保険適応は1点以上を基本にしている。

目的:リスクが1つのみの患者におけるNOACのアウトカムをワルファリンと比較

デザイン,セッティング,対象:
・デンマークの全国登録研究
・ダビガトラン150mg,リバーロキサバン20mg,アピキサバン5mg標準量とワルファリンの有効性,安全性比較
・CHA2DS2-VAScスコア1点(性別無関係)の心房細動患者14020例

主要評価項目:虚血性脳卒中/全身性塞栓症,死亡,出血

結果:
1)全14,020例,女性36.7%,66.5歳

2)虚血性脳卒中/全身性塞栓症:NOAC vs ワルファリンで有意差なし

3)あらゆる出血:NOAC(ダビガトラン,アピキサバン)はワルファリンより有意に低率
ダビガトラン:HR,0.35; 95%CI, 0.17-0.72
アピキサバン:HR, 0.48; 95%CI, 0.30-0.77
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4)感度分析において,多くのサブグループで同様の結果,1年と2.5年追跡でも同様

5)残存する交絡因子があるので,虚偽の結果である可能性はある

結論:このコホート研究では,虚血性脳卒中/全身性塞栓症はNOACとワルファリンで同等だった。「あらゆる出血」はダビガトランとアピキサバンでワルファリンより低率だった。未知の交絡因子はあるのでこのデータはNOACの優位性を断定するものではない。

### RCTでも「虚血性脳卒中」に限ると,ワルファリンに勝つのはダビガトラン150mgだけでしたので,全身性塞栓症を抱き合わせでの実臨床データになると,ワルファリンと同等となってしまうようです。その分出血は低率で,ワルファリンが年間1.53%のところ,ダビガトラン0.73%,アピキサバン0,57%と半分以下でしたが,リバーロキサバンでみ1.33%でワルファリンと同等でした。頭蓋内出血/消化管出血という重症出血で見てもアピキサバン0.06%,ダビガトラン0.16%,ワルファリン0.54%とのことです。

この結果からは,(リバーロキサバンを除いて)RCTに準じた結果であり,NOACが良いように思えます。

ところでDiscussionのところでLip先生が興味深い試算をしているのでメモしておきます。
OACを処方する時に脳卒中発症率の閾値(これより高い集団では出血リスクを上回るため処方)はワルファリン1.7%,NOACは0.9%1)。ワルファリンではTTR70%以上であれば年間1.7%をより低率にさせる2)。

となると,日本人は,各登録研究でこの閾値より低いことが示唆されているので,ほんとうのところは同様のコホート研究をしないかぎり,まだNOACの(ワルファリンに比べての)安全性を確定することはできないとの思いを,むしろ強くします。

### 念願のブリューゲル展に行ってきました。
超絶な精緻さが,バベルの塔=人間の欲望をよりクールに際立たせているように思います。
大友克洋版「INSIDE BABEL」も童夢の団地群が想起されて胸熱でした。
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# by dobashinaika | 2017-06-18 23:08 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

低用量適応のない例での低用量使用時,アピキサバンでのみ脳卒中が増加し出血は変わらず:JACCより


目的:NOACの用量とアウトカムの関係

方法:
・米国の大規模データベース
・あらたにアピキサバン,リバーロキサバン,ダビガトランを開始した心房細動14865例
・低用量推奨例での標準量使用(オーバードーズ),低用量適応のない例での低用量使用(アンダードース)のアウトカムを評価

結果:
1)低用量推奨例1473例での標準量使用(オーバードーズ):43%
大出血のハザード比2.19,95%CI1.07-4.46
NOAC間で差はなし

2)標準用量推奨例13392例での低用量使用(アンダドーズ):13.3%
アピキサバンのみ脳卒中増加(ハザード比4.87,95%CI1.30-18.26),大出血は減らさず
ダビガトランとリバーロキサバンでは脳卒中,出血とも(標準用量使用と)有意差なし
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結論:日常臨床のプラクティスでは,ラベリング外の用量がしばしば処方されている。重症腎機能低下患者では効果はなく,より出血リスクが高くなり,正常または軽度腎機能低下患者でのアピキサバン使用は安全性の点で問題があった。

### アピキサバンのみ低用量で成績が落ちる機序として,筆者は1)リバーロは20から15だが,アピは5から2.5と半分になる,2)ダビは75(!)だが,より注意深く医師が使った,3)アピで減少する例が他より多く,目立った。4)アピキサバン群は他より高齢だった,などを挙げていますが,4)以外はやや意味不明な感があります。

用量設定通りに使わないことへの警鐘(特にアピキサバン)と捉えたいところです。

$$$ 今年は遅まきながら始めた家庭菜園。今年もミニトマトとナス
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# by dobashinaika | 2017-06-17 00:01 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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