抗凝固薬は心房細動患者の認知症リスクを低下させる可能性:EHJより


疑問:抗凝固薬は認知症リスクを減らすか?

方法:
・スウェーデンの観察研究
・退院時診断が心房細動,以前からの認知症診断なしの患者対象
・プロペンシティースコアマッチ,TT解析

結果:
1)444,106例

2)ワルファリン42.9%,DOAC2.9%,抗凝固薬なし54.3%

3)認知症リスク:抗凝固薬群1.14vs. 非抗凝固薬群1.79。ハザード比0.71 ,相対危険減少29%

4)ワルファリンとDOACで有意差なし。
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結論:認知症リスクは,抗凝固療法非施行例では,施行例より高い。

### なんと,抗凝固薬が認知症リスクを低下させる可能性があるそうです!
JAHAの総説を読むと,抗凝固薬と認知症との関係は一定しないようでしたが,この論文はnも多く,スコアマッチの手続きも踏んでいます。

メカ二ズムが不明であり,ま他絶対リスクは0.65%しか減っていないので,臨床上のインパクトにはまだ欠けるように思います。
前向き試験が志納中ですので,期待したいです。

$$$ 運慶展。中学の頃,仏像が好きで好きで仕方がない変わった青年だったのですが,亡父が京都奈良に突然連れて行ってくれて,運慶の無著世親像を見ていたく感動したのを思い出しました。非常なる計算と技術を背景に持ちながら,それが全面に出ることなく,またそれがために深い精神性をたたえることになる,それこそがほんまもんの美というものなのかと思わされました。
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# by dobashinaika | 2017-11-06 23:28 | 抗凝固療法:全般 | Comments(1)

新しいビタミンK阻害薬テカルファリンはワルファリン,NOACを超えるか:T/H誌

https://doi.org/10.1160/TH16-10-0815
テカルファリンに関する総説です。

・ワルファリンは60年来使用され効果は高いが治療域の狭い薬である。

・ワルファリンはR-L-光学異性体の混合したラセミ体で、7つのチトクロームP-450アイソザイムにより代謝される。
・このため、多くの食品、薬剤に影響を受ける。
・遺伝子多型(特にCYP2C9)、年齢、併存疾患、腎機能が効果を減弱したり、量の調節を促したりする。特に導入初期は要注意。
・INRの細かな管理の煩雑さが、新規抗凝固薬の開発につながった。

・VKAと違い、DOACは一つの標的のみ(IIaまたはXa)なので、モニタリングなしに一定量処方で良いという点がより使いやすい。
・にも関わらず、緊急手術、急性腎不全時などでは薬物濃度や抗凝固効果の測定は必要となる。

・NOACはNVAFの脳卒中予防においてワルファリンと同等である一方、アビキサバン、ダビガトランは大出血をあきらかにワルファリンよりも減らした。
・アピキサバンに比べ、リバーロキサバンは高出血リスクであった。
・幾つかのNOACでは、消化管出血が多くなったが、半減期が短いため服用中止によりコントロールできる。
・ダビガトランは、人工弁患者ではワルファリンよる効果は劣り出血は増える。

・一般的に、腎機能低下例では減量し、CrCl<15(ダビガトランは<30)では、NOACは禁忌である。

・CKDはそれ自体が抗凝固的な環境と言える。一方ではVTEや心房細動を高頻度に合併する。
・eGFR<60では脳卒中、VTEのリスクが増大する。
・抗凝固薬はCKDでも効果的であり、重症CKDにはVKA使用が勧められるが、安全性に関しては熟慮が必要である。
・他にも塞栓出血リスクを増やす合併症はあり、併用薬、尿毒症はワルファリンの代謝に影響するので、腎機能に応じた用量調節が必要となる。
・これらを考えると、上記にセッティングにおいて、ワルファリンの代替薬が強く求められる。

・テカルファリン(ATI-5923 )はワルファリンと同様の機序と効果時間を持った構造的なアナログである。
・VKOR阻害薬と同様、テカルファリンはビタミンK依存性凝固因子(II,VII,IX,X)をワルファリン同様に阻害し、モニタリングはINRである。
・ワルファリンがCYP450系で代謝されるのとは違い、テカルファリンはヒトカルボキシルエステラーゼ2(hCE-2)により加水分解される。
・単一の不活性化カルボキシル酸代謝物(ATI-5900)を産生し、腎で排泄される。
・hCE-2は腎不全では阻害されず、慢性腎不全はテカルファリンのクリアランスに影響しないと思われるので、特殊な環境下でも安定した抗凝固作用が得られると思われる。
CYP450系で代謝される薬剤との交互作用も排除される

・さらに、テカルファリンはCYP2C9の遺伝子多型に左右されない
・初期用量を減らすことで、出血リスクを減らし合併症を予防できるかもしれない
・CYP2C9ジェノタイプ間での用量調節には差がないけれども、VKORC1ジェノタイプによっては変化する。
・テカルファリンの血中濃度は、VKORC1ジェノタイプと相関する。(AAジェノタイプよりGGの方が2倍の血中濃度)
・INRとテカルファリンの血中濃度とは相関関係がないことは重要。
・ゆえに、テカルファリンはVKORC1が多様性を持つ状況ではワルファリンを凌駕することはなく、ジェノタイプガイドによる初期投与量が有効となる。

・ワルファリンを上回るテカルファリンの効果(を検討した試験)としては以下がある。
・EmbraceAC試験では,テカルファリンはワルファリンを上回るTTRRが得られなかった。
・緊急治療が必要な有害事象は,ワルファリンで88%,テカルファリンで90%
・どちらも同様のTTRを示し,アウトカムはTTRに相関した。
・本試験では,CYP2C9-バリアントの対立遺伝子を持つひとや,CYP2C9が関与する薬剤服用者はテカルファリンのベネフィットがあるかもしれない,と結論している。

・健常人を対象としたテカルファリンの薬物動態に関する試験がある。
・40mgまでの単一用量までは,血中濃度と半減期は用量に相関する。
・INR1.7-2.0を保つ用量が10〜20mg。
INRはテカルファリン中止1〜3日で低下する。
・CKDや人工弁患者での複数用量の試験が必要である。
・不活性化体(ATI-5900)は,腎で排泄され健常者ではもとの薬剤の10%の濃度を示し,CKD患者では2倍の血中濃度を示す。
・より詳しいプロフィールや代謝物の毒性についての解析が必要

・さらに,テカルファリンは少なくともtransfected cellではCYP2C9代謝を阻害することが知られており,CYP450への抑制効果を持つかどうかが問題となる。
潜在的な薬剤相互作用について,テカルファリンも例外ではないことは忘れるべきでない。

・こうした問題への追加試験が検討されれば,テカルファリンは旧き良きワルファリンで満足に治療できなかった患者に,安定した抗凝固作用を達成させる興味深い代替薬となるかもしれない。
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### クドカンドラマを見ながら論文読んでいたら,知らないうちに全訳してしまっていました(笑)。まとめると

テカルファリンの特徴は,構造,機序,作用時間などはワルファリンと同様で,モニタリングはINR。hCE-2加水分解され腎機能に影響されない。薬物相互作用もなさそう。中止1〜3日でINRが低下する。

というところだそうです。腎不全に使えそうなところが最大のポイントでしょうか。が,もう一つの関心事はもちろんコストですね。
まだとにかくフェーズ I?のようで臨床試験はまだ無し。結論を出すのは早計過ぎます。

もし上梓されたら第2のNOAC,N2OACとでもよばれるのでしょうか?

$$$ これはうっすらじゃじゃ麺味でした。
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# by dobashinaika | 2017-10-24 23:11 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

アジアの大規模リアルワールドデータにおけるNOACの有効性と安全性は?:Stroke誌


疑問:アジア人のリアルワールドデータでは,NOAC (対ワルファリン)の有効性安全性はどうなのか?

方法:
・韓国の国民健康保険データベース
・アウトカム:虚血性脳卒中,頭蓋内出血,全死亡
・NOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン)11611例,ワルファリン23222例(プロペンシティースコアマッチ),NVAF,CHA2DS2-VAScスコア2点以上

結果:
1)虚血性脳卒中:NOAC=ワルファリン,頭蓋内出血:NOAC<ワルファリン,全死亡:NOAC<ワルファリン

2)虚血性脳卒中,頭蓋内出血の対ワルファリン相対危険:3つのNOACで同じ

3)全死亡及びネットクリニカルベネフィット(上記3アウトカム合計):ダビガトランとアピキサバンでワルファリンより良い。リバーロキサバンとワルファリンは同等

結論:アジアにおける高リスクの心房細動患者において,3つのNOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中じは同等で,頭蓋内出血は少なかった。全死亡は,ダビガトラン,アピキサバンがワルファリンとより少なかった。

### アジア人のRWDでは,かなり大規模なデータです。概ねこれまでのRWDやNOACと同様の結果かと思われます。高齢者などではどうだったのかも知りたいところです。

$$$ 前回のブログで見えていた黒猫チャン
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# by dobashinaika | 2017-10-23 22:01 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

高齢者の抗血栓薬による血尿関連合併症は多い。


疑問:抗血栓薬投与による血尿関連合併症の頻度はどのくらいか?

方法:
・一般住民ベースの後ろむきコホート、カナダ、オンタリオ州
・66歳以上、抗凝固薬、抗血小板薬服薬中の患者
・アウトカム:救急外来受診、入院、泌尿器科的処置を必要とした血尿患者

結果;
1)808897人、平均年齢72.1歳、女性53%

2)平均追跡期間7.3年

3)血尿関連合併症
抗血栓薬あり123.95/1000人年 vs.抗血栓薬無し80.17(p<0.001)
抗凝固薬+抗血小板薬:191.61
抗凝固薬のみ:140.92
抗血小板薬のみ;110.72

論:高齢者においては、抗血栓薬による血尿関連合併症が多い。

### すごい規模の検討ですね。カナダ、オンタリオ州の一般住民250万人のデータベースのうち、抗血栓薬を飲んでいる人80万人を平均7年追跡という恐ろし恐ろしいほどの規模のスタディです。こんなことされたら何も反論できないという気もするし、もう日本のコホート研究どうなってんの?と言いたくもなってきます。

確認情報としては、基礎疾患は狭心症15%、心筋梗塞3.9%、TIA3.9%、末梢血管疾患3,4%、心房細動3.3%。
抗血栓薬は、80万人中アスピリン31500例、他の抗血小板薬27500例、アピキサバン15000例、ダビガトラン43500例、リバーロキサバン88000例、ワルファリン32万例でした。
血尿関連合併症は、1000人年あたり、アスピリン94.3、他の抗血小板薬130.03、アピキサバン164.09、ダビガトラン144.24、リバーロキサバン188.65、ワルファリン138.67でした。
また、抗血栓薬服用者は非服用者に比べ、膀胱癌と診断される確率が1.85倍、前立腺肥大のある人はない人よりも血尿合併症が多いという結果も出ています。

抗血栓薬服用者は正直、血尿かなり多いです。いわゆる顕微的血尿だけなら相当数に上ります。その割に血尿に関するしっかりしたエビデンスはなかったように思いますので、非常に貴重な研究です。
今回平均72歳という高齢者で、処置が必要な血尿だけでも年間10人に1人強、抗凝固薬抗血小板薬併用に至っては5人に1人が何らかの処置まで必要な血尿があったというのは、一見やや多い気がしましたが、よく考えるとそのくらいはあるようにも思います。
肉眼的血尿が出ても大抵、経過観察で大丈夫ですが、中には悪性腫瘍が見つかることがあり、何より真っ赤な液体が尿から出るとそれ以後のアドヒアランスや患者さんの薬に対する信頼度が大きく揺らぎます。

さらに血尿関連合併症が、ワルファリンよりNOACに多いのも気になります。例えば66−69歳だけで見ても、補正後のイベント率はワルファリン1.19に対し、ダビガトラン1.04、リバーロキサバン1.46、アピキサバン1.15で、NOAC間でも差があるように見えます。やはりNOACは脳には優しいが、その他はそうでもない、かもしれません。

$$$今日のニャンコ
2匹います。
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# by dobashinaika | 2017-10-16 18:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

NOACとの併用で特に注意すべき薬剤は?JAMA誌


疑問;併用薬によるNOACの出血リスクは?

方法
・コホート研究
・91330例,心房細動でダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン使用中の患者
・台湾の保険データベース
・NOACの代謝に栄養ある薬の併用につき調査
・大出血の定義:出血の初期診断による入院
・2012−2016年

結果:
1)大出血;4770例

2)以下の薬剤は併用による出血増加が明らか(薬剤ありvsなし)
アミオダロン(52vs38),フルコナゾール(242vs103),リファンピシン(103vs66),フェニトイン(108vs56)

3)以下の薬剤は併用による出血が減少:
アトルバスタチン,ジゴキシン,エリスロマイシン,クラリスロマイシン

4)以下の薬剤は大出血リスクとは無関係
ベラパミル,ジルチアゼム,ドロネダロン,サイクロスポリン,ケトコナゾール,イトラコナゾール,バリコナゾール

結論:NOAC使用中の患者では,アミオダロン,フルコナゾール,リファンピシン,フェニトイン併用は大出血リスクを明らかに増加させる。

### 有益な情報です。NOACはP糖蛋白とCYP3A4の代謝を受けるため,それらを阻害する薬品の併用は,NOACの作用を増強させ出血が増えることが知られており,事実添付文書等では,減量または禁忌となっているものが多いです。

ただしそれらが本当に臨床上問題となる出血に関与するのか,そのRWDはこれまで大きなものはなかったと思われます。各薬剤の添付文書を比較すると,減量や禁忌薬剤も薬によりまちまちで,困るわけですが,少なくとも上記4薬剤華かなり慎重に考えたいと思います。
特にアミオダロンは,特に専門医では併用する患者さんも多いと思われます。

$$$ 仙台でルオー展(9日まで)。宗教を超えた温かみ,深みに包まれました。
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# by dobashinaika | 2017-10-13 21:20 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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